2011 Fiscal Year Research-status Report
次世代のMRI撮像法に対応した信号対ノイズ比評価法の開発
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23791422
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上口 貴志 大阪大学, 医学部附属病院, 医療技術職員 (80403070)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 放射線医学 / 磁気共鳴 / MRI / ノイズ / 画像解析 / 雑音 / ウェーブレット変換 / 画質 |
Research Abstract |
MRI(磁気共鳴画像法)において,信号対ノイズ比(SNR)は画質を客観的かつ定量的に評価する重要な指標である.SNRは画像上の関心領域(ROI)における信号量とノイズ量の比として算出するが,近年の撮像技術の進歩はノイズの定量をより困難にし,ゆえにSNRの評価ができない事例も増加しつつある.本研究ではこのような新しい撮像法にも対応できる新しいSNR測定理論の構築とそれを具現するソフトウェアの開発を目指している. 測定理論の構築における最も重要な課題は,有意な信号成分とノイズ成分が混在するMRI画像からノイズ量だけを正確に定量することである.そこで信号成分とノイズ成分の周波数特性の違い,すなわち信号成分が比較的低周波成分有意であるのに対してノイズ成分は全周波数帯域に分布することに着目し,原画像に対する2次元多重解像度解析にて高周波成分だけを抽出のうえ画像化した.これにより有意な信号成分をほとんど含まないノイズ有意な画像を得ることができ,以下,ノイズ評価用画像として用いることとした.つぎにノイズ評価用画像から得られたノイズ量測定値と原画像に含まれる真のノイズ量の関係を定式化し,真のノイズ量を推定するアルゴリズムを導出した.このアルゴリズムをプログラミング言語Cにて計算機に実装し,プロトタイプのSNR評価用ソフトウェアを開発した.SNR既知のシミュレーション画像による精度検証を行った結果,構築した理論とそれに基づくソフトウェアは複雑な信号分布を含む画像であっても正確にノイズ量を定量できることを確認した.本理論においては,白色ガウス雑音を仮定しており,実際のMRI画像に含まれるノイズとは統計的性質が異なる可能性もある.ゆえにMRI実測画像を用いた精度検証も行い,精度に問題のないことを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,理論の構築と当該理論に基づくSN比測定ソフトウェアの開発までを平成23年度中に進める予定であったが,平成24年度に計画していた計算機シミュレーションや実測画像での精度検証まで着手できており,良好な結果が得られている.さらに提案理論をより一般的な条件下にも拡張すべく,X線や核医学イメージングのように異なる数学的モデルを当てはめるべき画像に対する評価も開始している.一方,ソフトウェア開発過程で必要と考えていたノイズ特性の評価や多重解像度解析の最適化(いずれも平成23年度に計画)は,研究戦略上,相対的に重要度が低いと判断し,平成24年度に行うこととした.総合すると研究の進展はきわめて順調である.
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Strategy for Future Research Activity |
理論およびアルゴリズムを最適化するため,画像のノイズ特性の評価と多重解像度解析の最適化(いずれも平成23年度より24年度へ移行した内容)を行う.また将来,多彩なMRI撮像法が出現することを予想し,提案理論をさまざまな数学的・統計的性質をもつ画像にも対応させるため,X線や核医学イメージングで得られた画像に対する信号量やノイズ量の定量も継続する. 本理論のアルゴリズムを最適化させたうえでMRI臨床画像を用いた精度検証も行い,本提案理論の臨床的有用性を明らかにする.これらの成果を学会等で積極的に公表し,さらに論文としてまとめて国内外の学術雑誌へ投稿する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に計画していたノイズ特性の評価と多重解像度解析の最適化を今年度へ移行させ,さらに理論・アルゴリズムを拡張(一般化)していくうえで必要となる実験材料(ファントム等の材料や試薬,調整器具等),解析を支援するソフトウェア類,参考文献や書籍を購入する.また学会での成果発表や情報収集に必要な旅費等の経費,さらに論文発表に必要な英文校正費用や投稿料等を支出する.
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