2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23791442
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
井上 勉 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (30406475)
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Keywords | 慢性腎臓病 / 虚血 / MRI / BOLD / 低酸素 / 線維化 |
Research Abstract |
平成25年度中の主な研究実績 ・一昨年に設置された3テスラの高磁場MRIを用いた腎functional MRIの撮像に関して、平成25年1月には院内IRBで承認を得て、通常の臨床検査として電子カルテからオーダー、正式なレポートを受け取れるように成った。 ・前年度から検討中であったDTI(diffusion tensor imaging)、ASL(arterial spin labeling)も加え、BOLD(blood oxygenation level-dependent)MRI、DWI(diffusion-weighted image)と従来のT2WI、T1WIの5軸で、腎の内部構造、酸素分圧、線維化、尿細管・細血管微細構造、血流・灌流評価が可能となっている。 ・既に実際の臨床検査として撮像が日常的に行われ、原因が不明なクレアチニン上昇症例における臨床経過の推定、慢性腎臓病なのか、急性腎障害なのかの判定材料として有用に機能している。新規シークエンス(DTI、ASL)に関してもこれまで30症例以上の撮像が完了した。画像解析、シークエンス・撮像条件の詳細な調整を行っている最中である。 ・動物実験の為の組織染色、RT-qPCR(Reverse transcription-quantitative polymerase chain reaction)を用いた遺伝子発現量の評価に関しては条件設定は終了した。更に、従来の動物モデルよりもヒトの慢性腎臓病の進行過程を正確に反映する5/6腎摘マウスモデルの作成にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・1.5T MRIを用いたBOLD MRIのT2*値、DWIのADC値と腎機能等臨床検査値、原疾患との関連に関しては既に論文として報告済み。つまり計画の前半部分は予定通り終了した。 ・次に、当初はT2*値、ADC値と腎生検の免疫染色、各種遺伝子発現量、尿中TGF-beta、typeIII collagen量の相関を評価して、MRI計測値の意味付けを深める予定であった。従来の指標であるクレアチニンや蛋白尿よりも、腎機能予後を「早期」に「正確」にMRIで診断できると予測していた為である。しかし一昨年の調査では、MRI測定値と臨床経過の相関は有意ではなかった。昨年度、更に観察期間が伸びたため再検討したが、MRI計測値より先んじて、ついに蛋白尿と腎機能経過に有意な相関が認められるように成ってしまった(MRI計測値も相関する「傾向」はあったが、蛋白尿に劣った)。多額の研究費を費やして上記実験を行なう意義が低くなったと考えて、当該研究計画は中止とした。 ・代替の研究計画として対象の条件が均一化できる動物実験(ヒトでは各種降圧薬や貧血等はMRIの結果に影響する為)を計画した。多種の組織染色、線維化関連遺伝子群のRT-qPCR、western blotを用いた検討はルーチンに実施できる様になった。更に、ヒト慢性腎臓病に類似する進行過程が観察可能な5/6腎摘マウスモデルの作成にも成功した。しかし、動物用MRIを使用するための共同研究機関の選定が極めて難航している。 ・上記の様な状況の為、当初は本研究計画に含まれていなかった高磁場(3.0T)MRIの臨床研究計画を大幅に前倒しして本資金を用いて推進する事にした。約2年の経過を経て、基本的なシークエンスが決定し、従来の指標に関しては既に臨床診断の一助となっている。3.0Tからの新規パラメータに関しては、現在試行錯誤の最中である。
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Strategy for Future Research Activity |
・3.0T MRIを用いてヒトでの撮像データの収集を推進し、平行して新規計測値となるDTIのfractional anisotropy、およびASLによる還流量の測定技術を確立する事を再優先とする。本来であれば、それらの測定値と腎機能経過との相関を評価したいが、その為には少なくとも2年以上の期間が必要となる(当施設規模で腎機能予後と蛋白尿の有意な相関を評価するのに約5年を必要とした経験から、3.0T MRIでの測定値が蛋白尿よりも臨床指標として勝ったと仮定しても2-3年の期間は必要と考える)。また、腎生検症例に絞ると症例数が限られてしまい、且つ、軽症例が中心になるので腎機能悪化速度が遅く、これも評価には不利である。そこで尿中typeIII collagen定量とTGF-beta定量を行なう事を計画している。 ・一定期間で2回の撮像を行いMRI計測値の差異で検討することを昨年計画したが、短い間隔での撮像は純粋に研究目的の撮像とみなすべきであり、研究費での負担が必要になるとの判断になった。当研究費にはそのための予算が含まれないため実行は困難との結論に成った。そこで、提出した当初の研究計画に含まれるヒトで撮像・評価という部分を更に推し進めて、関連施設である埼玉医科大学国際医療センターとの共同研究を計画中である。本研究の当初からの共同研究者である放射線科と現在協議中であるが、慢性腎臓病症例に加えて、腎移植後の症例を対象にするべく、関係部署との調整を行っている。 ・動物実験ではMRIの撮像条件がヒトと大きく異なるとはいえ、対象の条件を均一にできることは新規撮像法の開発には有利である。且つ、5/6腎摘マウスモデルはヒト慢性腎臓病と同様に尿細管間質の線維化が顕著で、これまでの動物実験モデルより遥かにヒトの病態に近い。同モデルを用いた実験系を進行させるべく、諦めずに他施設との交渉を進めていきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の通り、当初計画・進行していた機器・測定法では、慢性腎臓病の評価法として、従来の臨床指標との比較に於いて、MRIを使用する優位性が明確には証明されなかった。また、動物実験としては、ヒト慢性腎臓病を従来よりも正確に反映するマウスモデルの作成、評価法は確立しつつあるが、評価の為のMRI使用の目処が立っていない。 代替の研究計画は既に進行しており、今後はそちらを鋭意進めていく予定となっているが、当初予定していた結果を異なる部分が生じた為に、研究計画はやや遅延している。 尿中ELISAの為の消耗品、試薬。動物実験を進行させる為の組織染色、RT-PCRの為の消耗品、試薬が研究費使用目的の主な目的となる予定。加えて、成果発表の為の、旅費、学会参加費、英文校正料を計上の予定。
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