2012 Fiscal Year Research-status Report
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23791450
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
黒河 千恵 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20399801)
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Keywords | 国際情報交換 / 米国 |
Research Abstract |
本研究の目的は、放射線治療において照射線量分布を測定できるよう開発された組織等価型熱蛍光薄膜体(TLDフィルム)および、組織等価型光刺戟蛍光薄膜体(PSLDフィルム)を用いて、既存の測定装置では定量的な評価が困難であった表面線量を含めた線量の2次元、3次元的評価を高精度、かつ簡便に行うことである。 当該年度は、立教大学 漆山教授との共同研究により、昨年までに開発された試験的なTLD、PSLDフィルムをより精度良く、安定した測定が可能となるよう、フィルム自体の改良を行い、2種類のTLDフィルム(C型、M型)と、1種類のPSLDフィルムを作成した。これらのフィルムは蛍光体の組成が異なるため、それぞれの基礎的性質を調べた。基礎的性質としては、測定精度に大きく関与しうる以下の3点である:1)熱・光フェイディング、 2)繰り返し使用による感度変化(繰り返し使用による耐久性)、3)分割照射による感度変化(線量加成性)。 1)熱・光フェイディング:C型フィルムでは照射後5時間は室温で1時間あたり約5%のフェイディングがあったが、他のフィルムではフェイディングは1%程度であった。 2)耐久性:10回繰り返し使用することにより感度上昇の傾向が見られたが、その変化は5%以内であった。感度上昇の原因については、今後の検討課題である。 3)線量加成性:総線量4Gyに対する分割時の測定線量の変化は最大1.9%であった。 以上の性質から、各フィルムの特性を踏まえた測定プロトコールを作成することで、実際の患者投与線量検証に求められる精度での線量測定を簡便に行えると考えられる。また、当該年度は陽子線線量分布の測定のため、陽子線に対するフィルムの基礎特性の評価を開始した。陽子線線量に対するフィルムの感度関数は、光子線・電子線と同様、市販のガフクロミックフィルムに比べて広い線量領域で直線となることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、より高精度、かつ使用が簡便な2種類のTLDフィルムと1種類のPSLDフィルムの基礎特性を明らかにし、これらを臨床現場で広く使用できるよう測定システムやプロトコールを構築した。これにより、測定者の技術に依存せず、臨床現場で求められる精度で測定を行う基盤ができたと考える。また、改良されたフィルムによる測定の結果、光子線の表面線量は、電離箱やフィルム、ダイオードによる測定で報告されている線量に比べて低い値を示した。この値は、表面線量測定装置として推奨される外挿電離箱の値に近いものであった。この結果をもとに、昨年度達成できなかったフィルムによる測定結果から既存の計算アルゴリズムの精度評価を行う準備が整った。 また、当初、今年度実施予定であったフィルムによる被ばく線量の測定については、低エネルギー・低線量に対するフィルムの感度を明らかにする必要があるため、低い単一エネルギーX線を照射できる施設との協力体制が求められる。これについては、今後実施可能な施設との連携をはかる予定である。 しかしながら、当初は研究計画に含めてはいなかった陽子線に対するフィルムの特性についても、国立がん研究センター東病院 西尾先生の協力により、研究できる環境を整える事が出来た。 以上より、研究全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、1)陽子線を含む粒子線の線量分布測定、2)他施設との連携による被ばく線量測定システムの確立、3)フィルムで測定された表面線量をもとに、既存の治療計画装置での線量計算結果の評価を行うことである。 具体的には、以下のとおりである。 1)フィルムを用いて陽子線、粒子線のブラッグピークの測定を行い、フィルムのLET依存性を明らかにする。これをもとに、陽子線・粒子線での線量検証を行う際のプロトコールを作成する。 2)高精度治療を実現するために、治療直前に治療寝台上でCT(コーンビームCT)を撮影し、照射位置の確認が必要とされている。コーンビームCT撮影時には、低エネルギーX線による患者被ばくが問題となるが、その評価は特定の点に対してなされたものがほとんどであり、3次元での被ばく線量評価はモンテカルロによるシミュレーション計算のみであった。そこで、我々が開発したフィルムの低線量・低エネルギーの感度を明らかにしたのち、円柱状の固体ファントムにフィルムを巻く、もしくは、ファントム中にフィルムを挟み、コーンビームCTによる被ばく線量の測定を行う。これにより、現在の画像取得プロトコールを見直し、画像の質を落とすことなく、より患者にとって被ばくの少ないプロトコールの作成を行う。 3)昨年度までにフィルムで測定された表面線量は、通常測定で用いられる電離箱やフィルム、ダイオードでの測定値に比べて、低い値を示した。この測定結果を市販の治療計画装置(3社)へ入力し、各社の線量計算アルゴリズムの特性と、表面線量評価の限界を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、解析用コンピュータ、フィルムとの測定線量比較のためのガフクロミックフィルムの購入、研究成果の国外発表のための旅費のために使用する予定である。 国外出張旅費については、8月に開催される米国医学物理学会参加と、学会での情報収集・交換のために必要となる費用である。
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Research Products
(4 results)