2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23791459
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
吉岡 宗徳 広島国際大学, 保健医療学部, 助手 (80435057)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ポリマーゲル線量計 / 3次元 / 線量分解能 |
Research Abstract |
本研究の目的は、放射線治療領域で使用が試みられている3次元線量分布測定器であるポリマーゲル線量計の線量分解能を向上させることである。ここで、線量分解能とは線量応答特性と測定誤差に依存し、異なる線量差を見分けられる最小の線量であり、線量分解能の値が小さいほど、より高精度に線量測定をすることができる。また、ポリマーゲル線量計は、放射線照射による有機モノマーのラジカル重合反応に起因するゲルマトリックス内の環境変化を定量的に測定し、3次元線量分布の取得を可能とする水等価性の測定器である。 平成23年度は、既存のポリマーゲル線量計に様々な試薬を添加することや、反応に直接関わる複数の有機モノマーの配合比を調整することにより、線量応答特性の調査を行った。サンプルを試験管に封入し、医療用リニアック装置を使用し放射線照射を行った。また線量率依存性を調査するために、線量率を変えた照射も行った。医療用MRI装置により、スピンエコー法で撮像された複数の画像からR2画像を算出し、その値を線量応答値とした。 組成の変化により、線量応答特性が改良するものの、ゲル化剤としてのゼラチンの融点が下がることがあり線量分布の経時安定性の低下や線量率依存性が生じることを確認した。また、組成の変化に伴う、ポリマーゲル線量計の水等価性の変化を抑えるために、溶媒を水のみでなく、アルコール-水の共溶媒にすることで密度調整を行う工夫をした。融点の低下や線量率依存性の結果は、線量計の特性としては欠点にあたり、改善が今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポリマーゲル線量計は放射線治療分野での3次元の測定器として、大きな可能性を秘めているものの、その測定再現性や経時的な測定値の変動、測定精度の不足があげられる。これらの欠点を改善することが、本研究においてポリマーゲル線量計の開発を行う目的である。 本研究の添加物を使った線量応答特性の改良やそれに起因して生じる欠点を明らかにしてきたことは、高線量分解能かつ安定したポリマーゲル線量計の開発のために基盤となる有用なデータになると考えられる。また、これらを達成するために最適なポリマーゲル線量計の組成の候補が絞られた。 現在調査中ではあるが、組成によってはポリマーゲル線量計のゲル化剤のゼラチンの融点が下がることがあった。しかし、ホルムアルデヒドによりMAGICタイプのポリマーゲル線量計の融点が上昇すると以前に報告されている方法を、試作しているポリマーゲル線量計においても、その組成によっては適用可能であることは確認できている。また、線量率依存性についても、有機モノマーの配合比によって大きく変化することが本研究でわかったため、適切な添加物を決定後、これらの配合比を調整することで、線量率依存性を抑えることができると考えられる。実験を通して、欠点や改善点が生じることはあるが、現在のところ、その対処法は交付申請書に記載した「研究の目的」にそって行っている。また、紫外可視分光光度計を設置し、ポリマーゲル線量計の線量―光学応答特性も測定できる準備を行った。 以上に示すように、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、平成23年度に行ってきたデータをもとに絞られてきた最適な試薬・組成を決定していく。方法は、昨年度と同様ポリマーゲル線量計の試作、放射線照射、MRI撮像を行い、特性の把握を行う。 本研究において重要な特性とは、主に線量分解能、線量率依存性、融点、経時的安定性である。線量分解能は、線量応答特性と測定誤差に依存するため、線量応答特性の改良とともに、最適なMRI撮像パラメータを選定する。ポリマーゲル線量計の組成の変更により、線量率依存性が生じることが今までの研究の中で明らかになってきたので、その組成を微調整し、可能な限り小さくする。融点、経時的安定性については、試験管などに封入したポリマーゲル線量計をハーフフィールドで照射し、撮像までの保管温度をかえ、照射・未照射部位に生じるエッジを経時的に撮像し、線量分布の経時的安定性を評価する。 また、ポリマーゲル線量計学が照射により白濁することを利用して、線量測定に応用するため、紫外可視分光光度計を用いて、試作した線量―光学応答特性の調査も行う。より安定したポリマーゲル線量計を開発するために、基礎データを取得していく。また、線量分布を測定するため人体の大きさを想定したポリマーゲル線量計を作製し、まずは直交2門照射など単純な照射を行い、3次元線量分布の測定を行う。問題点を明らかにし、改善し、複雑な3次元線量分布測定に必要なデータの取得を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
より安定なポリマーゲル線量計を開発するために、材料となるacrylamide、N,N'-methylenebisacrylamide、N-isopropylacrylamide、gelatin、tetrakis (hydroxymethyl) phosphonium chlorideなどポリマーゲル線量計のベースになる試薬や、線量応答特性を向上させるために添加する試薬を購入する。作製したポリマーゲル線量計を封入するための試験管や、経時安定性を調査するために温度を一定に保つクールインキュベータなどを購入する。また、3次元線量分布を測定するため、人体の大きさを想定した容器にポリマーゲル線量計を封入して実験を行う必要があるため、それに適した容器を設計し、必要な資材を購入する。 また、本学では強度変調放射線照射の照射は行えるが、必要性が生じた場合、定位放射線照射、強度変調回転照射などの高精度放射線照射が可能な施設での実験を行うことが想定される。また、本学では0.3テスラのMRI装置での実験になるため、より信号雑音比の良い1.5テスラや3.0テスラなどの高磁場MRIで撮像を行うことも想定される。これらの外部施設で実験を行うために必要な交通費を計上する。 情報収集や研究成果発表のために、日本医学物理学会などの学会参加をするために旅費や学会参加費などを計上する。論文投稿などに必要になる英文校正などの経費を計上する。
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