2012 Fiscal Year Research-status Report
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23791459
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
吉岡 宗徳 広島国際大学, 保健医療学部, 助手 (80435057)
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Keywords | 線量測定 / 放射線治療 / 三次元 |
Research Abstract |
今年度は、ポリマーゲル線量計の増感作用を持つ添加物を加え、その添加物がポリマーゲル線量計の空間的安定性、線量依存性、線量加算効果(分割照射によるレスポンス)に与える影響などを調べた。ポリマーゲル線量計はゼラチンなどのゲルマトリックス内に放射線照射により発生するラジカルによって反応を起こす有機モノマーを配合している線量計であり、多くのポリマーゲル線量計は水が重量比で80%以上であることから、生体等価な放射線特性を持つ。添加物の影響により、ゼラチンの融点が下がることや、大量の添加物により、実効原子番号が高くなり、深部線量の測定において、水等価性からの乖離が生じた。このため現在、少量の添加剤でポリマーゲル線量計の感度増感作用をもつ添加剤について調査している。 今年度は、この欠点を克服するため、少量の添加剤で増感作用が生じる添加物について調査をしている。再現性は今のところ十分とは言えないが、従来の重量比で数%の添加物を加える方法に比べ、現在調査中の添加物はより少なくてすむ可能性が大いにあり、もともとポリマーゲル線量計のもつ、生体等価な放射線特性を十分に保持できると期待できる。 本研究では線量評価を行うため、MRI撮像から特性曲線の取得、特性曲線から、線量変換を行う必要があるが、MRI画像を線量画像に変換するソフトウェアは今年度開発済みである。 また、実験を簡便に行うために、紫外線ランプを導入し、紫外線によるラジカル重合反応を起こすことにより、ポリマーゲル線量計の基礎データを取得している。これにより、従来に比べ効率的に基礎データの収集ができるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請時の平成24年度研究目的は開発するポリマーゲル線量計の経時的安定性などを調査を行うとしている。また、特性の劣化がみられた場合はさらなるポリマーゲル線量計の開発・改良を行うとしている。今年度は主に上記で挙げた調査を行っており、おおむね計画通りに行えていると考える。 開発したポリマーゲル線量計の基礎特性調査は主に試験管に封入した、小さなサンプルで行っているが、ポリマーゲル線量計の利点である3次元空間線量分布の測定を行うため、次年度の研究目的に挙げている、人体を想定した大きさのポリマーゲル線量計の調査も行い始め、具体的な容器の種類やサイズなどの検討や容器を大きくしたときに空間線量分布を経時的に保持できるかの検討を行っている。ポリマーゲル線量計の容積が大きくなったときの問題点なども調査にしている。また得られたMRIでの測定値から、特性曲線を直線近似や最小二乗法によるカーブフィットするソフトウエアを作成し、その得られた特性曲線から線量変換を行うソフトウェアを開発した。現在、X線照射のパラメータやMRI撮像のパラメータはおおむね決定している。 MRI撮像によるポリマーゲル線量計の評価を中心に行っているが、光学特性調査については、開発するポリマーゲル線量計の組成が完全には定まっていないこともあり、この点については順調に進展しているとは言えない部分がある。測定パラメータの検討などを行っており、組成が完全には定まってから光学的な評価を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
現在行っている少量添加剤によるポリマーゲル線量計の線量応答性の再現性を高めるための調査を行っていく。現在再現性が不十分であるのでその原因を突き止め、最適な作成方法を調査する。これにより組成を決定や作成方法を決定する。人体を想定した大きさのポリマーゲル線量計を作製し、治療計画装置の計算結果と比較する。当初の目的ではX線のみが研究対象ではあったが、研究が順調に進み次第、荷電粒子線に対しても応用可能か調査する予定である。 また、平成23年度に設置した紫外可視分光光度計を使用し、開発したポリマーゲル線量計の基礎的な光学特性を評価し、開発するポリマーゲル線量計が光学CTにも応用可能か検討する。 開発するポリマーゲル線量計を従来のポリマーゲル線量計と比較し、改善点の検討を行い最終的な評価を行う。必要に応じて電離箱線量計や2次元線量計である、フィルムなどを利用して線量分布の比較を行う。その他必要に応じて、放射線治療領域で使用される線量分布解析(DTA:distance-to-agreement,γ-index,DV(A)H:dose-volume(area)-histogram)なども行う。 現在までに作成したソフトウェアに線量分解能の計算機能も実装し、線量分解能をある程度自動で計算できるようにする。これにより線量分解能を評価する。 ポリマーゲル線量計の放射線に対する生体等価性も大きな課題であるので、放射線治療計画装置などを用いてシミュレーションを行い評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究を進める上でポリマーゲル線量計を作製する試薬(acrylamide、N,N'ーmethylenebisacrylamide、N-isopropylacrylamide、gelatin、tetrakis (hydroxymethyl) phosphonium chloride等)、特性曲線取得用にポリマーゲル線量計を封入するための試験管や人体を想定した大きさのポリマーゲル線量計を作成するためのアクリル容器やデータ記録媒体などに消耗品費を計上する。使用後のポリマーゲル線量計は反応性の高い有機モノマーも含まれるため、安全に廃棄するための費用も計上する。情報収集や研究成果発表のために、ワークショップおよび学会参加をするために旅費や学会参加費などを計上する。論文投稿などに必要になる英文校正などの経費を計上する。
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