2011 Fiscal Year Research-status Report
末梢組織における異物排出トランスポータ機能のイメージング
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23791468
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
岡村 敏充 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 研究員 (80443068)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 放射性医薬品 / PET薬剤 / トランスポータ |
Research Abstract |
研究代表者は、最近、異物排出トランスポータ(MRP1)の機能評価のため、PETプローブの6-bromo-7-[11C]methylpurine ([11C]1)およびmetabolite extrusion methodと呼ばれる測定法を開発し、脳内のMRP1のイメージングに成功した。本研究では、[11C]1について末梢組織(特に肺組織)でのMRP1機能のイメージングの可能性を検討した。本測定法により肺のMRP1をイメージングするには、[11C]1は1)肺組織への高い取り込み、2)水溶性基質であるグルタチオン(GSH)抱合体への速やかな変換という条件を満たすことが必要である。まず、マウスの肺ホモジネート中において[11C]1とGSHとの反応速度を調べた。その結果、1.6/min/g/mLと非常に速く、インビボでの肺においても[11C]1は速やかにGSH抱合体に変換されることが示唆された。次に、[11C]1および[35S]GSH抱合体の肺への移行性と滞留性を検討した。[11C]1をマウスに静脈内投与したところ、投与後1分で肺に高い取り込みが認められ、その後、肺の放射能は急速に減少した。一方、GSH抱合体の1分における肺/血液比は[11C]1に比べ低値を示し、抱合体の単純拡散による透過性は低いと考えられた。また、Mrp1欠損マウスでは[11C]1は肺に取り込まれた後、緩やかに減少し、投与60分後の肺/血液比は野生型マウスに比べ、有意に高かった。さらに、Mrp1欠損マウスにおける肺の化学形を分析したところ、未変化体の[11C]1は消失し、放射能の大分部がGSH抱合体であることが確認された。以上、本年度の研究により、[11C]1は肺への高い取り込みおよび基質への速やかな変換という条件を満たし、肺組織におけるMRP1機能のイメージングの可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PETプローブ6-bromo-7-[11C]methylpurine ([11C]1)について肺組織における異物排出トランスポータMRP1機能のイメージングの可能性を検討した。本年度の研究では、マウス肺ホモジネート中において[11C]1はグルタチオン(GSH)と速やかにかつ特異的に反応することが判明し、反応性の改善といった候補プローブの最適化を行うことなく、インビボでの検討に移ることができた。また、[11C]1は静脈内投与後、肺に移行し、インビボでも速やかにGSH抱合反応を受けることが確認され、水溶性のGSH抱合体を効率よく肺組織内に送達することに成功した。さらに、Mrp1欠損マウスを用いた検討より、生成したGSH抱合体の肺組織から血液中への排出にはMrp1が関与していることが確認された。このように、[11C]1はプローブの基本的条件(高い肺への取り込みと基質への速やかな変換)を満たし、MRP1機能のイメージングの可能性が示唆されたことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在まで、本研究はおおむね計画通りに進み、6-bromo-7-[11C]methylpurine ([11C]1)は肺のMRP1イメージングプローブとしての基本的な条件を満たした。よって、今後は、[11C]1の動態に対するMK571あるいはプロベネシドといったMRP1阻害剤の影響を検討し、[11C]1の応答性を確認する。また、他の排出トランスポータ遺伝子欠損マウスを用い、その選択性を調べる。これらの結果が良好な場合は、肺のMRP1の発現が変化した病態モデル動物を用いて、[11C]1の応答性を調べることを予定している。最近の研究から、慢性閉塞性肺疾患患者の気管支生検におけるMRP1の発現が健常者と比べ低いことや、インビトロにおいてタバコ煙抽出物がMRP1の活性に影響を及ぼすことが示唆されており、喫煙曝露やリポポリサッカライド投与により作製した慢性閉塞性肺疾患モデル動物を用いて、その評価を行う。さらに、肺組織に加えて、腫瘍におけるMRP1機能イメージングの可能性を検討することも予定している。具体的には、MRP1高発現の薬剤耐性およびMRP1低発現の非薬剤耐性のマウス腫瘍モデルを作製し、このモデルマウスにおいて[11C]1の動態や排出速度の変化を比較検証し、MRP1イメージングプローブとしての可能性を探る。本プローブが不適切な性質を有する場合にはその原因を検討し、候補プローブを再設計・合成し最適化を行い、研究を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究で用いる非標識/標識化合物を合成するための試薬や溶媒、分離・精製のための分取用高速液体クロマトグラフ(HPLC)カラム、また化学形の同定のための薄層シリカゲルクロマトグラフおよび分析用HPLCカラム、放射能測定のためのプラスチックチューブを購入する(350,000円)。インビボ実験に関しては、実験動物、遺伝子組み換え動物、さらに腫瘍モデル作製のための細胞培養用試薬・器具を購入する(450,000円)。また、研究成果を学会にて報告するための旅費(400,000円)および参加費(100,000円)、誌上発表するための経費として外国語論文校閲費等に使用する(100,000円)。合計:1,400,000円(物品費:800,000円、学会旅費:400,000円、学会参加費:100,000円、論文校閲費:100,000円)
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