2011 Fiscal Year Research-status Report
クッパー細胞の鉄分解機能に着目したSPIO‐MRIによる肝癌の放射線治療の最適化
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23791476
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
古田 寿宏 独立行政法人国立がん研究センター, 臨床開発センター, リサーチレジデント (20597885)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 核磁気共鳴画像(MRI) |
Research Abstract |
本研究の目的は、従来は困難であった、肝における放射線照射域を早期にかつ累積線量が少ない場合でも画像的に確認する手法の確立である。その手法には超常磁性酸化鉄製剤(SPIO)による造影MRIを用いた。一般的には放射線照射後にSPIOを投与するが、本研究では放射線照射前にSPIOを投与した。実験の方法を示す。MRIは動物用9.4Tesla装置(既存の装置)を用いて撮影した。まず、SPIO投与10分後にT2*強調MRIを撮影し、肝の信号低下を確認した。続いて、4時間後にX線照射を行った。線量は0、50、70Gyの3群とした。照射野は肝右葉とし、同部以外は3mm厚の鉛板にてシールドした。照射2、4、7日後にT2*強調MRIを撮影し、放射線照射域と非照射域の信号変化を測定した。実験中は吸入麻酔薬を用いてラットに全身麻酔を施した。照射7日後、肝を摘出し、クッパー細胞(KC)マーカーの免疫染色を含め、組織学的検索を加えた。結果を示す。50Gyと70Gyを照射した群では、照射域と非照射域に信号回復の差が生じた。0Gyの群では、信号回復に差は生じなかった。組織学的には、照射7日後の肝において、類洞の鬱血や肝細胞の委縮など、放射線肝障害を示唆する所見はなく、照射域と非照射域におけるKCの数に一定の傾向は認めなかったが、KCへの鉄沈着の数は、照射域の方が非照射域よりも多かった。SPIOはKCに貪食され、ライソゾームに集積し、T2*強調MRIでの肝信号を低下させることが知られている。正常ラットでは1週間後に肝信号がほぼ回復し、信号回復速度がSPIOの分解過程を反映すると考えられる。本研究では、照射域の肝右葉が非照射域の左葉よりも信号回復が遅れたため、照射によりKCが障害されSPIOを分解する機能が低下し信号回復に差が生じたことが推測でき、KCへの鉄沈着の数の差が、その推測を裏付ける結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度の研究実施計画における<結果の判定基準>のうち、「2.検出可能な最低線量と検出までの最短期間の同定、本提案法の優位性の評価。」は未施行であるからである。また、「3.検出された領域に、放射線肝障害が生じるかどうかの確認。」も、現時点では照射7日後の肝組織について調べたのみで、計画したように60日後の肝組織については検索が不十分と考えている。 平成23年度の研究実施計画における<結果の判定基準>のうち、「1.SPIOを放射線照射よりも先に投与する方法により、照射域と非照射域に信号回復の差が生じるかどうか。」は結果を出せたと考える。ただし、研究実施計画よりも照射線量の多い50Gy、70Gyの群を用いており、SPIO投与前のMRIを省略したり、Gd-EOB-DTPAによる造影MRIを行う群の実験を省いたり、MRIによるフォローアップ期間を短縮したりし、実験方法を多少変更している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、平成23年度の研究実施計画における、<結果の判定基準>のうち、「2.検出可能な最低線量と検出までの最短期間の同定、本提案法の優位性の評価。」に関連する実験を行うことが妥当であると考える。研究実施計画通りの照射線量とするかは未定だが、本提案法において、照射域と非照射域の区別が可能となる最低線量と最短期間を同定することは、研究の継続可能性において重要である。従来の方法として、放射線照射の後にSPIOを投与した場合は、線量が10Gy程度で照射3日後に照射域が検出できたとの報告があるので、それよりも低線量かつ短期間で検出できれば、本提案法が優位であると判定できる。 次に行う実験の候補として、Gd-EOB-DTPAによる造影MRIとの比較が挙げられる。Gd-EOB-DTPAについては、投与後の肝細胞相のMRIで、照射域が肝機能低下により非照射域よりも低信号を示すことが予想される。この所見が現れる線量および期間よりも低線量かつ短期間で、SPIOを用いた本提案法により照射域が検出できれば、Gd-EOB-DTPAを用いた方法よりも有用と判定できる。 これらの実験から得られる結果を基にして、平成24年度の予定である、ボランティア患者を対象とした、実行可能性の研究を実施すべきかどうかを判断する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の目的の達成度はやや遅れており、そのため物品費などの実支出額が少なく、次年度に使用する予定の研究費が生じている。遅れている分の動物実験に必要な物品・造影剤・試薬の他は、臨床研究に必要な物品・造影剤、学会での成果発表のための旅費、謝金など、当初の予定通りに研究費を使用することを計画している。
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Research Products
(2 results)