2011 Fiscal Year Research-status Report
陽子線治療における生物学的効果を考慮した線量計算モデルの研究
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23791477
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Research Institution | Shizuoka Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
加瀬 優紀 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (70455385)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 陽子線治療 / 生物学的効果 / RBE / 線量分布 |
Research Abstract |
現在、陽子線治療の生物学的効果比(RBE)は一般的に定数1.1が使われているが、生物実験ではプラトーとピークでRBEが異なることから将来的には陽子線のRBEを考慮した治療計画を行うべきと考える。本研究では、単色陽子線に対して組織等価比例計数管(TEPC)で測定した線エネルギー分布から、Modified Microdosimetric Kinetic Modelを用いてRBEを計算した。陽子線のRBEを計算する際には、放医研の炭素線RBEの定義と同様に、耳下腺がん細胞の生存率10%をエンドポイントとした。単色ビームにおいて、RBEは、入口(水深2.2 cm)を1.00に規格化した場合、ピークから1 cm前深度(12.1 cm)で1.02、ピーク前90%線量深(12.8 cm)で1.05、線量ピーク深(13.1 cm)で1.11、ピーク後90%線量深(13.2 cm)で1.18、50%線量深(13.3 cm)で1.22、10%線量深(13.6 cm)で1.33、さらに5mm奥(14.1cm)で1.09であった。つまり、単色陽子線の深部-RBE分布は、ピーク深から±1 cm付近でRBEが急激に増加することが分かった。また、治療用に線量ピークを広げたSOBPビームのRBEを線質混合式で計算できることを確かめるため、SOBPビームそのものを測定した結果と、単色ビームで得られた測定結果をリッジフィルター形状で混合計算した結果を比較したところ、飛程後方を除いて両者は良く一致した。単色ビームの結果を元にスキャニング照射をした場合の生物線量分布を計算したところ、SOBP内の吸収線量を平坦にしたビームでは、SOBP終端では入口に比べてRBEが約10%高くなることが推定された。将来、陽子線スキャニング照射でRBEを考慮して線量分布の最適化を行えばより良い治療が可能になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の目標は、陽子線治療ビームに対する生物物理モデルの検証、比例計数管による測定システムの構築、陽子線ビームに対する測定であった。TEPCの測定結果から計算したRBE値が他の論文で報告されている細胞実験等のRBE値と近いことから、単色の陽子線ビームによる生物効果をモデルで説明することができたと考えている。様々な陽子線照射条件における生物効果の大きさ、生物線量の飛程等を数値的に明らかにすることと、ワブラー散乱体照射法とスキャニング照射法による生物効果の違いを数値的に示すことについてはまだ十分な解析ができていないが、最終年度内に終了できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、単色ビームの測定結果から、スキャニング照射法による陽子線ビームの生物効果を計算するプログラムを完成させる予定である。これにより、様々な照射条件における細胞生存率、RBE、生物線量を計算すること、ワブラー散乱体法とスキャニング照射法による生物線量分布の違いを比較することができる。必要であればGEANT4によるモンテカルロ計算でより詳細な分布計算を行う。これらの研究成果は、学会や雑誌等で発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
既に測定に必要な機器の購入は終了したので、次年度はシミューション解析を行うためのオフィス用品や。これまでに得られた研究成果を学会や雑誌等で発表するための費用として使用する計画である。
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