2011 Fiscal Year Research-status Report
チミジル酸合成酵素抑制を標的としたHER2陽性乳癌薬物療法の開発
Project/Area Number |
23791485
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
重松 英朗 広島大学, 病院, 病院助教 (40543707)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | HER2 / 乳がん / TS |
Research Abstract |
Fluoropyrimidine(5-FU)は乳癌薬物療法におけるkey drugであり、その標的酵素であるチミジル酸合成酵素(TS)の過剰発現は5-FU耐性機序の一つとして考えられている。HER2陽性乳がんでは膜貫通型受容体であるHER2が核内移動することによりTS mRNAの転写促進およびTS過剰発現がもたらされ、HER2陽性乳がんの5-FU耐性機序の一つとして報告されている。我々はこれまでに主としてTS発現の重要な調節因子であるHER2の核内移動について検討してきたのでこれについて報告する(In vitro)。HER2陽性乳がんにおいてHER2に対するthyrosine kinase inhibitorであるlapatinib投与によりHER2の膜安定化が生じHER2の核内移動が阻害されることが確認された。HER2に対するIgG抗体であるtrastuzumab投与によりHER2の核内移動が軽度促進され、またtrastuzumab長期暴露により樹立したtrastuzumab耐性HER2陽性乳がんではHER2の核内移動が促進されることが確認された。HER3 ligandであるheregulin添加においてHER2HER3 dimer形成が促進され核内移動が促進されることが確認されたが、HER2HER3 dimer形成阻害剤であるpertuzumabの投与により阻害されることが確認された。以上からHER2標的治療薬の種類によりHER2の核内移動が異なることが示され、TS発現の相違により5-FUとの併用効果が異なる可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度はHER2陽性乳癌細胞に対するHER2/mTOR標的治療によるTS抑制効果および5-FU抗腫瘍効果増強の証明を目的に、in vitroの研究を施行した。HER2標的治療薬によりHER2の核内移動が異なりTS発現と5-FU併用効果の差が発現する機序が示唆されたが、平成23年度の目的はHER2標的治療薬の5-FU抗腫瘍効果の増強効果およびTS抑制効果の評価(遺伝子翻訳、蛋白発現、酵素活性について検討)であり、これらについての検討が十分になされていないため、やや遅れていると評価した。これまでに、HER2のdimer形成および核内移動の評価方法に時間を要したため、TS抑制効果についての直接的検討が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
HER2標的治療薬による5-FU効果増強の直接の証明として、HER2標的治療薬の5-FU抗腫瘍効果の増強効果を増殖能評価、アポトーシスアッセイにて評価し、TS抑制効果の直接的評価としてRT-PCRによるTS mRNA、western blotting(またはflow cytometry)による蛋白発現評価、および酵素活性法によるTS酵素活性を測定する。これらに並行して、HER2陽性乳癌細胞を用いた、マウス乳癌モデルにおける、HER2/mTOR標的治療によるTS抑制効果および5-FU抗腫瘍効果増強の証明(in vivo)を目的に、nude mouseを用いた乳癌モデルを確立し、HER2標的治療薬によるTS 発現の検討および5-FU薬剤との併用効果を明らかとする。またHER2標的薬物療法施行症例におけるTSの発現状況、予後等との相関関係についての検討を行い、臨床応用可能性についての検討を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究の推進方策に必要な消耗品を中心に研究費を使用する。具体的には研究に必要な抗体、試薬代、また外注検査に用いる。最新知見を得るために国内外の学会に出張する旅費を使用する予定である。
|