2011 Fiscal Year Research-status Report
低酸素プレコンディショニングにより骨髄細胞の血管再生機能が増強するか?
Project/Area Number |
23791487
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
久保 正幸 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60420519)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 血管再生 / プレコンディショニング / 低酸素 / 骨髄細胞 / 再生医療 / 加齢 |
Research Abstract |
細胞移植による血管再生治療の効果は限定的であり、治療効果を向上させる有用な方法の開発が急務である。申請者は、健常動物由来の骨髄細胞に対する低酸素プレコンディショニング(Hypoxic preconditioning: HPC)が治療効果を向上させる簡便かつ有用な方法であることを報告してきた。しかし、加齢や様々な病態では細胞障害が生じており、そのような細胞に対するHPCの効果は不明である。そこで、本研究では加齢動物由来の細胞に対するHPC効果を検証することを目的とした。平成23年度は、加齢による骨髄細胞の質や機能へ及ぼす影響を調べると共に、HPCの効果をin vitroで検証した。加齢マウス(Aged; 20-22ヵ月齢)と対照マウス(Young; 3ヵ月齢)から骨髄細胞を単離した。Youngマウスと比較して、Agedマウスの骨髄細胞では幹細胞マーカーCD34やc-kit陽性細胞率が有意に減少していた。また、細胞老化マーカーp53の発現上昇やテロメラーゼの活性低下も認められた。以上から、加齢により、骨髄細胞において幹細胞数の減少と機能低下が生じることが確認された。次に、単離後の骨髄細胞を低酸素(Hypoxia、2%O2;HPC)または正常酸素(Normoxia、20%O2)条件下で24時間培養後、以下の検討を行った。Youngマウスと比較して、Agedマウスの骨髄細胞の接着・生存は有意に低下したが、HPCによって有意な改善効果が得られた。また、機能低下が認められたVEGF産生能や内皮分化能といった血管再生能についても、HPCによる有意な増強効果が認められた。さらに、HPCによる細胞機能の増強効果にYoungマウスとAgedマウスの間で反応性の違いは認められなかった。以上の結果から、機能低下が認められた加齢動物の骨髄細胞に対するHPCによっても細胞機能が増強することが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、加齢動物由来の細胞に対する低酸素プレコンディショニングの効果についてin vitroでの検証が順調に進捗したため。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に引き続いて、加齢動物由来の細胞に対する低酸素プレコンディショニングの効果についてin vivoでの検証を行う。下肢虚血モデルを作製後、虚血筋肉組織内に直接、骨髄細胞を移植して、虚血下肢の血流量の変化と毛細血管の形成を検討することで、血管再生の治療効果を評価する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の研究の推進方策に基づいてin vivoでの生化学・組織学的解析等を行うために、関連試薬、一般試薬・器具、および実験動物等を購入する。これらの試薬等は平成23年度の購入を予定していたが、研究代表者が平成24年度から所属研究機関を異動するために、次年度に購入・使用することとなった。また、情報収集・成果発表のための旅費としても研究費を使用する。
|