2011 Fiscal Year Research-status Report
肝細胞移植が障害肝および外科侵襲に与える影響に関する研究
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23791489
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
中村 幸雄 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (50516648)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 肝細胞移植 / 再生医療 / 脂肪性肝炎 / アポトーシス |
Research Abstract |
平成23年度は脂肪性肝炎より肝硬変に至った病態に対して肝細胞移植が有用であること、更には肝細胞移植が生体肝移植もしくは脳死肝移植を代替する可能性を探る研究を行った。研究成果は学会で口頭発表し、更にはこの発表に基づいた英文論文を作成し、現在投稿中である。1.上記の可能性を探るべく、まず肝硬変モデルの検討を行い、ヒトNASH/NAFLDの病態に近いと考えられたコリン欠乏メチオニン低減アミノ酸食(以下CDAA食)投与モデルを作成した。これはF344ラットに5週齢より12週この食餌を投与することにより得られるものであり、68%肝切除を加えることにより7日目の生存率が7.7%と致死的となることを見出した。2.「Hepatocyte transplantation promotes cell proliferation and impedes apoptosis after hepatectomy in non-alcoholic steatohepatitis related cirrhosis. 」という論文をcell transplantation誌に投稿中である。これは、上記肝硬変モデルに対して肝細胞移植を行うことにより、肝切除後の予後の延長を認め、組織解析では、肝細胞移植を行うことにより、細胞増殖関連蛋白であるKi67、PCNAおよびNFκBの発現は移植群で多く、これに対して、アポトーシス関連蛋白であるTUNEL陽性細胞数、Cleaved caspase-3、Annexin Vの発現は非移植群で多くなるという結果を得ることができ、これが予後の延長に寄与したものと考えられた。また、細胞移植後長期生存例の検討では、移植6か月後に肝臓において広範に移植細胞の置換性増殖を認めたという結果をまとめたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝細胞移植を行うことにより、肝硬変ラットモデルにおいて肝切除後の予後を改善するという結果ならびに肝細胞移植がレシピエント肝細胞に対して肝再生の誘導更には抗アポトーシス作用を発現するという結果が得られたことは、当初の目的の一つが達成されたものである。更に細胞移植6か月後という時期においてレシピエント肝組織に移植細胞の置換が広範にみられたことは、このモデルが肝細胞移植に適したものであることを示すものである。過去においてこのような広範な置換を認めたモデルは、遺伝子改変を行い高度の免疫抑制ならびに持続的炎症をきたすNOGマウスもしくは全肝に50Gyという高線量の放射線を照射したモデルへの移植のみであることを考えると、このようにwild typeの動物を用いて食餌を投与するのみでこのようなモデルを作成することができたことは、今後肝細胞移植の研究を進めるにあたり、大変有用なモデルを確立したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
肝前駆細胞と考えられる小型肝細胞の移植については、現状で成熟肝細胞の移植ほどの成績は得られていないが、これは小型肝細胞移植の際に、成熟肝細胞移植と同量の細胞を得ることができていないことが原因として考えられ、今後より多くの小型肝細胞を移植することにより、再生置換効率の更なる向上を図りたいと考えている。また、肝細胞移植と生着にかかわる因子について、生着した細胞周囲にtight junction関連蛋白であるclaudin-3、claudin-14、occludin、tricellulinが発現していることを見出した。これは生着後早期より長期にわたり発現が認められ、移植細胞の生着に強く寄与しているものと考えられる。これらの蛋白が発現するに至ったメカニズムを解析することにより、より高い移植細胞の置換効率を得られる方法を見出し、肝細胞移植とその生着に至るメカニズムについて細胞源と接着因子の双方の観点から解析した結果を論文化することを目標としたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は移植効率の改善のための動物実験を継続して行う予定である。主な研究費としては動物の購入および実験試薬の購入が主であるが、研究結果については国際学会に1回、全国学会に2回、研究会に3回程度の発表を予定しているほか、英文論文の執筆にかかわる校正にも使用したいと考えている。
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Research Products
(3 results)