2011 Fiscal Year Research-status Report
肝発癌を抑制する標的分子探索へ向けた肝幹細胞特異的なヒストン修飾制御因子の解析
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23791491
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
中田 晋 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍病理学部, 主任研究員 (80590695)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 肝細胞癌 / 肝幹細胞 / ヒストン修飾 / 遺伝子発現 / エピジェネティクス |
Research Abstract |
平成23年度は、肝幹細胞と成熟肝細胞との特徴的ヒストン修飾の核内局在と定量的解析の比較対比をさらに進めた。その結果、アセチル化ヒストンK9、ジメチル化ヒストンK9に加え、トリメチル化ヒストンK27の局在がジメチル化ヒストンK9同様に核辺縁部から核内部ドット状に劇的に変化し、かつ発現量はアセチル化ヒストンK9と同等の顕著さで増加することを新規知見としてみいだした。したがって、当初計画したジメチル化ヒストンK9よりも、局在的量的双方で顕著な相違がみられたため、今後の解析をトリメチル化ヒストンK27について行うこととした。さらに、これらの特徴のうち、未分化細胞にみられた特徴が、iPS細胞においても極めて類似したパターンが観察されることを新規知見としてみいだした。また、網羅的解析に使用しうる品質を確保するためのChIP産物の精製を行った。特に、近年のいわゆる次世代シーケンサー技術の高度化に伴う国内外の研究進展状況を鑑み、当初予定していたChIP on chip技術を用いた網羅的解析よりも、むしろChIP seqの優位性が年々明らかになってきており、この可能性につき検討を行った。その結果、十分にChIP seqの網羅的解析に耐えうる品質を確保出来た。また、肝細胞癌臨床検体の蓄積を一部既に開始し、順調に推移している。さらに、幹細胞癌組織を用いたヒストン修飾パターン解析と、より幼弱な癌細胞を同定のための未分化マーカーの主に抗体を用いた発現解析を既に初年度に進めた。これらのデータの蓄積は今後のマウス胎仔肝幹細胞と成体肝細胞との比較対比から抽出する幼弱な細胞に特異的なヒストン修飾に制御される遺伝子群の検証実験に必要不可欠な基礎データである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ChIP産物の集積部位解析の予備的検討で、コントロール遺伝子群検出不良が予想外の問題となり対策を要した。ChIP産物の基となる試料がマウス胎仔肝幹細胞であるために細胞数が十分な確保が困難であり、ChIP産物の精製純度の問題が最も疑われたため、増幅手法の条件について再度検討を行った。しかしながら、実際の問題点としては、解析側のハンドリングに大きく存在することが判明した。結果的には、次世代シーケンサーを用いた小規模な予備的検討でも十分なデータ蓄積量が得られることが明らかとなった。従って今後順調な研究の進展が期待出来る。解析を進めるヒストン修飾に関しても、さらに予備的検討を行い、前述の通り、より興味深いターゲットをみいだした。この点も当初の予定よりも時間がかかった原因となったが、結果的には次年度に研究を進める準備を進めたといえる。また、採択決定と同一時期の代表者の研究室異動に伴い、まず研究推進のための環境整備と、解析を行う肝細胞癌の試料の安定的供給経路の確立を行う必要があった。幸い、自施設の臨床部門である愛知県がんセンター中央病院からの新鮮切除サンプルの供与が可能となる共同研究体制の確立に成功した。当然、新たに、研究倫理指針に則っとった、本研究に必要な愛知県がんセンターにおける倫理審査委員会の審査を受け、承認を得た。この点も当初の予定よりも時間がかかった原因となったが、結果的にはむしろ当初の予定した研究環境と比較してもより恵まれた研究体制を構築することが出来たといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の理由により、大型の網羅的解析の施行時期がずれ込み、計画上必要な臨床検体の蓄積と予備的検討を開始出来る状況を整えたが、研究の推進方策としては全く不変である。マウス胎仔肝幹細胞と成体における終末分化した幹細胞との間にみられた大きなパターンの相違のみられた初年度の成果を基に、アセチル化ヒストンK9およびトリメチル化ヒストンK27につき集積部位の網羅的解析を行う。次いで初年度に蓄積を開始した肝細胞癌臨床検体を用いた解析を行い、肝細胞の癌化に伴い顕在化するヒストン修飾のうち、特に肝幹細胞でみられる特徴的なヒストン修飾との共通点を集中的に明らかにする。次いで発現アレイを用いて組織幹細胞関連遺伝子や成熟肝臓細胞機能遺伝子の発現と照らし合わせ、肝幹細胞特異的ヒストン修飾パターンと相関、合致するものを抽出する。それらの遺伝子のプロモーター上のヒストン修飾が集積していることをChIP assayにて確認する。最終的にヒストン修飾を制御する因子のうち、積極的な人為的発癌抑制のための新規ターゲット因子を抽出する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前述の通り、当初計画における初年度に使用予定であったヒストン修飾集積遺伝子群網羅的解析および網羅的発現解析を次年度に行う。この変更は実際の試料の調製に予想外の時間を要したための計画の修正であるが、研究の目的、推進方策、到達目標には全く変更はない。そのため、当初予定の通りの研究費使用計画である。
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