2012 Fiscal Year Annual Research Report
肝発癌を抑制する標的分子探索へ向けた肝幹細胞特異的なヒストン修飾制御因子の解析
Project/Area Number |
23791491
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Research Institution | 愛知県がんセンター(研究所) |
Principal Investigator |
中田 晋 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍病理学部, 主任研究員 (80590695)
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Keywords | ヒストン修飾 / 肝幹細胞 / 肝細胞分化 / 肝細胞癌 |
Research Abstract |
本研究では、先ず胎生期の肝幹/前駆細胞と成体の肝細胞の間で、核内局在パターンと総量が大きく変化するヒストン修飾を明らかにした。成体肝細胞では抑制性修飾H3K27meやH3K9me2は核小体に、H3K9me3は構成的ヘテロクロマチンに優位な局在を示し、肝幹/前駆細胞ではこれらは全て核辺縁に優位な局在を示した。iPS細胞でも同様の核辺縁の局在パターンを示し、核辺縁部は未分化細胞に特徴的な遺伝子発現抑制の場である可能性が示唆された。また、多数の修飾ヒストンの定量解析で、H3K27me3とAcH3K9が肝分化に伴い顕著に増加することを見いだした。 最終年度では、H3K27me3とAcH3K9が実際に集積する遺伝子を、ゲノムワイドなChIP-seq解析で明らかにした。特にH3K27me3が集積する遺伝子は分化成熟に伴い70%以上が相互に入れ替わっていた。成体肝細胞で高発現する代謝に関連するような機能性遺伝子は胎生期特異的にH3K27me3が集積していた。H3K27me3誘導酵素であるEzh2のKOマウスでは、これらの代謝関連遺伝子が脱抑制された。すなわち、成体肝細胞を特徴づける機能性遺伝子群が、肝幹/前駆細胞でH3K27me3を介しエピジェネティックに抑制制御されることが分かった。さらに、成体でH3K27me3のみが集積し、かつ胎生期でH3K27me3が集積せずにAcH3K9の集積を伴う、肝幹/前駆細胞に特異的な転写活性化遺伝子を抽出した。これらの過半数は確かに肝幹/前駆細胞で高発現し、発生や発癌に関与するCyclin-D1, B-Myb, Sox11等を含んでいた。これらの遺伝子群につき肝臓癌の臨床症例で発現解析を行った結果、未分化細胞ニッチと考えられている脈管周囲領域に限定局在するものを見いだしている。現在、これらの陽性細胞の幹細胞特性と薬剤耐性獲得の両面から解析中である。
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