2011 Fiscal Year Research-status Report
外科侵襲下における褐色脂肪細胞分化機構の解明と代謝亢進状態改善の試み
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23791500
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
葉 季久雄 慶應義塾大学, 医学部, 共同研究員 (00327644)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 褐色脂肪 |
Research Abstract |
平成23年度は3か年計画の初年度として、従来行ってきた外科侵襲モデルすなわち熱傷負荷ラットの実験系から熱傷負荷マウスの実験系の確立をまず行った。熱傷負荷マウスを作成し、7日後に肩甲骨間褐色脂肪組織を摘出し、同脂肪組織の病理学的評価を光学顕微鏡ならびに電子顕微鏡を用いて行った。電子顕微鏡による検討では、マウス褐色脂肪組織は組織内に含まれる各褐色脂肪細胞内のミトコンドリア数が、ラット褐色脂肪細胞と比較して増加していること、それに伴い脂肪滴含有量が減少していることが見出された。本事象は、マウスの基礎エネルギー代謝量がラットと比較して高いことを示しており、褐色脂肪組織がエネルギー代謝における中心臓器であることを示唆しているものと考えられた。他施設から、外科侵襲下における褐色脂肪細胞分化にかかわる分子が報告された。同施設から遺伝子改変動物の提供を受ける予定であり、分化機構の解明に大きな役割を果たすものと考えている。当初計画していた、褐色脂肪組織から白色脂肪細胞ならびに褐色脂肪細胞の単離方法の検討、細胞培養法の確立ならびに各脂肪細胞特異的、非特異的タンパク質の発現量の解析、既知の分化誘導に関わるタンパク質の発現の解析については、遺伝子改変動物も用いて翌年度以降に遂行する。未使用額の発生は、効率的な実験計画の推進ならびに物品調達を行った結果である。翌年度以降にエネルギー代謝測定装置の導入を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
従来ラット熱傷負荷モデルで研究を行ってきたが、今後の展開を検討した結果、遺伝子改変動物を使用した研究が望ましいと考えられた。それ故、マウス熱傷負荷モデルを確立する必要があった。
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Strategy for Future Research Activity |
エネルギー代謝測定システムの導入を検討している。同システムの導入により、様々な背景の動物のエネルギー代謝を測定することが可能となる。具体的には、コントロール動物、外科侵襲(熱傷負荷)動物、さらには遺伝子改変動物、遺伝子改変動物への外科侵襲(熱傷負荷)負荷、など、外科侵襲による代謝亢進メカニズムの分子メカニズムの解明を目指す。上記 in vivo 実験と並行して、褐色脂肪組織の単離など in vitro 実験にも取り組んで行く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の未使用額分を含めて、研究者が米国留学中に使用していた代謝エネルギー測定装置の導入を検討している。本装置の導入により、リアルタイムに研究室でエネルギー測定が可能となる。本装置は本邦への導入実績は少ないが、海外(特に米国および欧州)での使用実績は十分なものがある。当初は研究者が留学をしていた研究機関を利用しての研究を考えていたが、遺伝子改変動物の調達などを検討すると所属施設での研究が望ましかった。マウスを使用した外科侵襲(熱傷負荷)モデルの確立(実験設備の改変および組織学的検討)に時間を要したことから、研究費を次年度に繰り越し、代謝エネルギー測定装置の購入を視野に入れることとした。
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