2012 Fiscal Year Research-status Report
外科侵襲下における褐色脂肪細胞分化機構の解明と代謝亢進状態改善の試み
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23791500
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
葉 季久雄 慶應義塾大学, 医学部, 研究員 (00327644)
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Keywords | 褐色脂肪 |
Research Abstract |
研究者が留学していた施設から、外科代謝研究、とくに感染症、外傷、熱傷研究におけるモデル動物としてマウスは病態を反映しないとの報告がもたらされた。平成24年度は、まず前年に施行したマウスモデルの検証を行った。熱傷負荷前と熱傷負荷後3日目および熱傷負荷後7日目のマウス褐色脂肪細胞の病理組織を比較検討から開始した。結果、熱傷負荷前の病理組織では、ラットおよびヒトの褐色脂肪細胞内と比較して、油滴量は減少しかつ細胞成分は増量していていることを見出した。熱傷負荷後3日目および7日目の褐色脂肪細胞においても同様の構造をしていた。電子顕微鏡による検討では、熱傷負荷前のマウス褐色脂肪細胞において、ラットおよびヒトと比較してミトコンドリアは多量に存在していた。これは、熱傷負荷前のマウスのエネルギー基礎代謝量が亢進していることを示唆しており、ヒトで起こりうる事象を反映していないと推察された。褐色脂肪細胞の分化機構解明、代謝亢進状態の改善をめざすにあたり、ヒトで起こっている事象と解離している可能性が示唆され、最終的にマウスをモデル動物とすることが適切ではないと判断した。 この結果を踏まえて、モデル動物を従前からのラット熱傷モデルに戻し研究を再開した。ラットの背部に30%3度熱傷を作製し、熱傷負荷前、熱傷負荷3日目、熱傷負荷7日目に肩甲骨間褐色脂肪組織を摘出し、病理学的評価を行った。熱傷負荷前はヒト褐色脂肪組織と同様の形態、すなわち複数の油滴を含有する脂肪細胞を認め、熱傷負荷によりミトコンドリア含有量が増大していた。ラット熱傷モデルはヒトの熱傷の経過と比較的類似していることが確認された。次年度にむけ、現在遺伝子解析の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度に発表された他施設(研究者が在籍していた施設)から、本研究におけるモデル動物を選択する上で極めて需要な報告がなされた。それに伴い、モデル動物の検証を行ったため、当初の計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度はラット熱傷モデルにおける褐色脂肪細胞分化に関わる標的分子の特定を目指した遺伝子解析から行う予定である。 ミトコンドリア機能改善物質としては、アスタキサンチンに注目している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度から代謝エネルギー装置の導入を目指し、研究費の運用を行っていた。しかしながら、海外の製品であり導入コストならびにメンテナンスコストの点で研究費の適切な運用が出来ないと判断した。代謝エネルギー実験は研究者が在籍していた米国施設において取り組むことと、最終的に判断した。平成24年度まで効率的に運用していた予算は、遺伝子解析、タンパク質解析に積極的に運用していく予定である。
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Research Products
(1 results)