2011 Fiscal Year Research-status Report
各種プロテアーゼ活性による炎症性腸疾患の病態制御機構の解明
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23791501
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
小見山 博光 順天堂大学, 医学部, 助教 (30348982)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 線維素溶解系 / 潰瘍性大腸炎 / TNFα / FASligand / マトリックスメタロプロテイナーゼ / MMP9 / デキストラン硫酸ナトリウム / クローン病 |
Research Abstract |
クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患(IBD)の病態には、白血球あるいは間質細胞が分泌する炎症性サイトカインの重要性が広く認知されている。代表者らは、プラスミン等の線維素溶解系(線溶系)因子の亢進が、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の活性化を促し、末梢組織中への白血球動員と一部の炎症性サイトカインの分泌を促進することを報告した。本研究の目的は、線溶系阻害剤による炎症性サイトカイン抑制効果・IBD病態改善効果を解析することで線溶系によるIBD病態制御の分子機構を解明することにあり、この結果を応用して新規IBD治療法開発の基盤形成を目指すものである。平成23年度は、C57BL/6Jマウスを用いてデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導性マウス腸炎モデルを作製してプラスミン阻害剤の効果について解析をおこなった。DSS飲水投与開始と共にプラスミン阻害剤を連日投与した群とコントロール群を作製し、体重の経時的変化、生存率、血便、下血などについて比較した。その結果、プラスミン阻害剤投与群とコントロール群において体重、生存率、腸管内の炎症の指標となる血便、下血、いずれも有意な差を示した。さらに解剖をおこない、大腸組織および血液を回収して解析に用いた。組織切片を作製し病理組織像について比較したところ、プラスミン阻害剤投与群とコントロール群投与群において粘膜層に有意な相違を認めた。ELISA法により大腸組織ならびに血液中の炎症性サイトカイン量を測定したところ、炎症性サイトカインの値に有意差を認めた。 以上のことから、線溶系因子群が炎症性腸疾患においてプロテアーゼ活性に影響を及ぼしていることが示唆された。この結果を踏まえ、線溶系シグナルによるIBD病態制御の分子メカニズムについて更なる解析を実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導性マウス腸炎モデルの条件検討、MMP9遺伝子欠損マウスを用いたDSS腸炎モデルによる予備実験の実施を経て、プラスミン阻害剤による本実験の実施となった。また、プラスミン阻害剤は、研究協力者であり東京大学医科学研究所 服部浩一准教授に試薬調製のプロトコールを頂いて行っているため、濃度調整などは必要なく、当初の仮説通りの結果を出すことができた。また、研究の遂行にあたって、服部准教授の研究室でのアドバイスを頂いて行うことが可能な体制にあること、及び、研究の施設が整っていたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
プラスミン阻害剤に期待通り腸炎の抑制効果が確認できたので、研究計画の大幅な見直しは無い。実験データの再現性、正確性を維持する上でも、同じ実験を数回繰り返す必然性もあり平成24年度は,平成23年度の実験を繰り返し行う予定である.次に,当初の計画通り以下の実験を行う.(1)各種炎症性サイトカインの産生分泌抑制効果を評価すること、(2)消化管上皮組織に対する白血球の浸潤抑制効果を評価することを主な細目とし、プラスミン阻害剤による潰瘍性大腸炎、クローン病 病態改善効果を総合的に明らかにすることを中心に研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は動物実験を主体としていることから、各種近交系、特殊系マウス等の使用を予定しており、従ってこれらのマウス購入費用(年間30万円)が必要となる。さらに、マウス投与用の薬剤及び試薬類、細胞培養用サイトカイン及び培地やウシ胎児またはウマ血清等の試薬、フローサイトメトリーによる細胞表面抗原解析用及び病理組織免疫染色用の抗体(年間50万円)、サイトカイン(年間30万円)およびプロテアーゼの血中濃度測定用のenzyme linked immunosorbent assay (ELISA)キット等(年間40万円)は、実験データの再現性、正確性を維持する上でも、同じ実験を数回繰り返す必然性もあり、いずれも不可欠な消耗品である。病理組織作成については、本研究室利用、一部の病理組織標本及びELISAでの測定が困難な線維素溶解系因子、サイトカインの血中濃度測定については一部業者委託を行っている。尚、備品は本学に設置された既存の機器が利用可能であるため本年度はまだ購入の予定はない。また,各種データ入力などの補助として謝金を計上している.これに加え、国内の学会の研究発表及び参加費用、研究資料収集のための通信費、これらはいずれも研究継続上の必要経費と考えられ、合計額としては本研究費用として妥当なものと判断し,計上する.平成23年度末に購入する予定であったELISAが欠品であったため,入荷を待った上で平成24年度に購入する予定である.
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