2011 Fiscal Year Research-status Report
乳癌細胞株に対するヒト絨毛性ゴナドトロピンを用いた革新的な乳癌治療法の開発
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23791506
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
圦 貴司 関西医科大学, 医学部, 講師 (50330212)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 乳癌 / ヒト絨毛性ゴナドトロピン / エストロゲン / プロゲステロン |
Research Abstract |
本研究課題を開始するにあたり、乳癌増殖に及ぼす効果を解明するとともに、生体への影響を検証する目的で、MNU誘発ラット乳癌モデルを用いたhCGの抗腫瘍効果の検討を行った。3週齢雌Lewisラット60匹に対し、60mg/kg MNUを単回腹腔内投与し、乳癌発生を促した。発生した乳癌が触知可能な大きさとなった時点で、対照群、100IU hCG投与群、300IU hCG投与群にわけ、hCG投与群には生理食塩水に溶解したhCGを連日腹腔内投与し、hCGを18回投与した時点で実験終了とし、ラット血清を採取するとともに乳癌を摘出、病理組織学的検討を行った。全実験期間を通じラットの体重は各群差をみなかった。実験終了時の乳癌湿重量は、対照群6011.3±1042.2mg、100IU hCG投与群で5613.5±1142mgに対し、300IU hCG投与群では3482.4±817.3mgと有意な低下をみた。腫瘍のホルモン受容体(ER, PgR, LHCGR)の発現およびTUNEL陽性細胞数は各群差をみなかったが、PCNA陽性細胞数は対照群と比較し、300IU hCG投与群で有意な低下をみた。血清エストロゲンおよびプロゲステロン値は対照群と比較し、300IU hCG投与群で有意な増加をみた(対照群E2: 45.58±9.6pg/ml, P: 16.02±5.19ng/ml, 300IU hCG投与群 E2: 98.3±25.37pg/ml, P: 103.6±44.67ng/ml)。300 IU hCG投与群の卵巣は対照群と比較して卵胞形成が乏しく、子宮は対照群と比較して体重あたりの湿重量が増加したとともに、嚢胞状に拡張した内膜腺が組織学的に観察された。したがって、hCGの乳癌増殖抑制効果は、妊娠期を模倣した卵巣からのエストロゲン・プロゲステロンの分泌亢進が作用機序として推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
hCGの乳癌増殖抑制効果をMNU誘発ラット乳癌モデルにおいて実証し、またhCGの頻回投与が生体に強い毒性をあらわさないことを証明した。これらの結果を論文としてまとめ、公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に行ったMNU誘発ラット乳癌モデルを用いたhCGの抗腫瘍効果に関する検討では、300IU hCGの投与はラットに強い毒性をあらわすことなく、乳癌増殖を有意に抑制する結果を得た。平成24年4月よりヒト乳癌細胞株KPL-1を用いたin vitroにおけるhCGの有効濃度を検証している。まず、cell viability assay (MTT assay)を行い、KPL-1細胞株に対するhCGの有効濃度が決定後、雌BALB/cヌードマウスにKPL-1細胞を移植し、hCGの増殖抑制効果を検証する。hCGによる移植KPL-1細胞の増殖抑制効果を確認し、発育した移植腫瘍における分子変動を解明する実験を開始する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
BALB/cヌードマウスの購入および飼育に関わる費用、病理標本作製に関わる費用、免疫組織学的検討に用いる各種抗体の購入に用いる予定である。
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