2011 Fiscal Year Research-status Report
血管内皮前駆細胞の機能強化と磁気誘導による次世代型血管新生療法の開発
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23791509
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
仲吉 孝晴 久留米大学, 医学部, 助教 (90511824)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 血管内皮前駆細胞 / 重症虚血肢 / 酸化ストレス / アポトーシス |
Research Abstract |
重症虚血肢における血管内皮前駆細胞(EPC)投与による血管新生療法は投与EPCが虚血部位からアポトーシスにより喪失することにより奏効しないことも指摘されている。そこで本研究では磁気粒子によるsiRNA導入でアポトーシス促進因子であるFOXOをノックダウンしアポトーシス耐性EPCを作製、さらに磁気化EPCを磁場により虚血部位に集積させることで血管新生効率の飛躍的な向上を図ることを目的としている。 平成23年度は動脈硬化危険因子を有した患者単核球由来のEPCに対して磁気粒子によるFOXO-siRNA導入(マグネトフェクション)を行い、EPC内のFOXOのノックダウンに成功している。同時に我々のグループは磁気粒子を取り込ませた磁気化EPCを体外からの磁場により効率的に虚血部位に集積させることで血管新生を増強させることを報告した(Koiwaya, J Mol Cell Cardiol,2011)。すなわちマグネトフェクションによりFOXOをノックダウンしアポトーシス耐性EPCを作製、さらにそのEPCを体外磁場により虚血部位に集積させることが可能となった。 次にFOXO1、3a、4それぞれに対するsiRNAをEPCに導入し、ウエスタンブロット法でその効率と特異性を検討した結果、EPCではFOXO4の発現量が最も多く、そのノックダウン効率もFOXO4において最も顕著であることが判明した。さらにH2O2刺激後のアポトーシス耐性をTUNEL染色およびフローサイトメトリー法で評価し、FOXO4ノックダウンEPCが最もアポトーシス耐性能力が高いことを発見し、さらにウエスタンブロット法にて各種タンパクを評価したところ、そのアポトーシス抑制にはCaspase-3、Bimを介した経路が重要であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、アポトーシス耐性を付与したEPCを虚血部位に集積させ、血管新生効率を飛躍的に向上させることである。この目的を達成するために、以下の3点を実施することとし、計画1,2を平成23年度の目標とした。 計画1.虚血組織における酸化ストレスとEPC機能の評価:ラット下肢虚血組織の酸化ストレス評価をおこない、同部において酸化ストレスが増加し、実際に投与したEPCのアポトーシスも亢進していることが判明した。さらに動脈硬化危険因子を有した患者EPCのFOXO発現とアポトーシス感受性評価をウエスタンブロット法にて評価した。ただし患者本人の骨髄液および切断肢における酸化ストレスおよびEPC機能評価については血管新生療法の際に研究サンプルを本人の同意を得て採取しているが、血管新生療法に適合しない症例や同意が得られないことも多く、まだ十分なサンプルが得られていない。 計画2.アポトーシス耐性EPCの作製:マグネトフェクション法によるEPCへのFOXOファミリーsiRNA導入に成功し、フローサイトメトリー法およびウエスタンブロット法によるH2O2刺激によるアポトーシス感受性の定量評価を行い、FOXO-siRNA導入EPCではアポトーシスが抑制されることが判明した。またそれに関与するアポトーシス促進タンパクをウエスタンブロット法にて確認し、Bim,cleaved caspase-3を介した経路が重要であることが判明した。 以上のごとく患者末梢血単核球由来EPCにおけるFOXO-siRNA導入の成功およぶ同EPCのin vitroにおけるアポトーシス耐性評価については当初の実験計画どおり順調に経過している。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のごとく引き続き計画1.計画2を実施するが、in vitroのアポトーシス耐性評価については計画通り進行しているため、平成24年度in vivoの計画に移行し、計画3.アポトーシス耐性EPCの磁気集積による血管新生能の評価を行う。具体的には免疫不全ラット(ヌードラット)の大腿動脈焼灼により下肢虚血を作製し、対側をコントロールとし、虚血作製24時間後にFOXO-siRNAを導入したアポトーシス耐性・磁気化 EPCを筋肉的に投与する。虚血下肢上に強力磁石を固定し、磁気化EPCを集積させ、以下の項目を検討する。1、磁気化EPCの集積:磁場形成群と非形成群で磁気化EPCの組織集積率を鉄染色で検出する。さらにEPC投与前に蛍光Dilでラベリングし、筋肉内投与したEPCのアポトーシス率をTUNEL染色により定量評価する。2、血流評価:EPC投与14日後にレーザードップラー血流測定器で虚血改善効果を定量評価する。3、組織解析:CD34染色により毛細血管密度を評価する。以上の研究により動物下肢虚血モデルにおいて、虚血誘発性酸化ストレスとEPCアポトーシスの関連を検証でき、FOXO-siRNA導入EPCの虚血筋肉内におけるアポトーシスが抑制され、血管新生能力の増強効果が認められることが証明されれば、臨床における単核球を用いた血管新生療法の更なる発展に寄与する知見が得られると期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度において次年度使用額が生じた理由としては計画1.虚血組織における酸化ストレスとEPC機能の評価目的にて、実際の骨髄単核球移植の際に得られる動脈硬化危険因子を有した患者自身の骨髄液および切断肢のサンプルを使用するのだが、そのサンプル収集がまだ十分量得られていないことがあげられる。そのため当初の予定の骨髄液中・虚血組織内の酸化ストレスマーカー評価、骨髄単核球内のFOXO発現や核内局在の評価で使用予定のELISA試薬、蛍光染色抗体などを平成24年度に繰り越し請求する。なおサンプル収集が十分でない状況は患者の同意が得られない場合はもちろん、高度先進医療である血管新生療法には厳格な適応基準がありそれに適合しない症例が少なくないこと、また対照群としてのバージャー病患者が特に減少していることなどが理由として考えられる。しかし、当機関では昨年より血管外科、内科(循環器・糖尿病・腎臓)、形成外科、皮膚科などで形成されるフットケアチームを立ち上げており、難知性虚血性潰瘍を有する重症虚血肢患者も九州全域より紹介されるようになってきており、その数も増加している。またその重症度も増悪しており、no optionの症例とともに今後血管新生療法はまずます重要視され増加すると予想されサンプル数を増やすことが可能と考える。さらに本研究では、患者検体による臨床研究と、アポトーシス耐性・磁気化EPCの基礎研究を並行して実施するが、両者は実際の実験上では独立しているため現段階でin vitroの基礎研究進展になんら影響は及んでない。平成24年度の基礎研究では下肢虚血ラットモデルでの細胞効果およびメカニズムの検証を行うため、前年までの細胞培養関連試薬、siRNA導入試薬に加え、免疫不全ラットおよび健常ラットの購入飼育費や手術器具購入費、細胞染色のための試薬や各種抗体の購入費を計上する。
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