2011 Fiscal Year Research-status Report
磁場環境下凍結装置を用いた新しい臓器保存技術の確立と臓器移植への応用
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23791511
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Research Institution | National Research Institute for Child Health and Development |
Principal Investigator |
渡邉 稔彦 独立行政法人国立成育医療研究センター, その他部局等, その他 (50306734)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 臓器移植 / 臓器保存 / 心移植 / 脳死移植 / 磁場環境下凍結 / 過冷却凍結 / マウス |
Research Abstract |
(平成23年度)~磁場環境下による臓器障害の組織学的検討(単純臓器保存)~1.実験モデル:Balb/cマウスを用い、24 時間の絶食の後にイソフルレン麻酔下で、心臓を、移植臓器摘出の手順に従って摘出し、冷ヘパリン加乳酸リンゲル液にて灌流した後、HTK保存液、通常凍結、磁場環境下凍結の3群に分けて一定時間保存した。2.実験群(1) HTK保存液:各臓器をHTK保存液に単純浸漬して、-4℃で保存する。(2) 通常凍結:冷ヘパリン加乳酸リンゲル液に浸漬して、-80 度の超低温冷蔵庫で保存する。(3) 磁場環境下凍結保存:冷ヘパリン加乳酸リンゲル液に浸漬して、磁場強度を0.1mT、1mT、10mT の3レベルで設定し-30℃で保存する。3.結果(1) 磁場環境下凍結保存の温度変化:1mT、10mTでは3分で-30℃へと速やかに達したが、0.1mTでは-30℃まで30分を要した。(2)組織学的障害の検討:通常凍結群では、心筋組織中に空隙が形成されていた。大動脈・肺動脈には内膜剥離が認められた。磁場環境下保存では心筋の組織構造は保たれており、脈管系にも異常所見を認めなかった。HTK保存液では心筋組織の融解壊死が認められたが、脈管系の組織は保たれていた。(3)保存液中の生化学的マーカーの分析:各群の保存液に含まれる保存臓器より漏出した生化学的マーカー(CK-MB、AST、LDH)は分析中
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、平成23年度は保存法によるグラフト組織障害の評価、平成24年度は保存法による臓器移植後のグラフト機能評価の2部構成となっている。各保存法のグラフト組織障害の評価別に、実際に生体へ移植した場合のグラフト機能評価が重要と考え、心臓のほか、肝臓・小腸・腎臓・肺でも保存後の評価を行うこととしていたが、最も移植手技が簡便であるマウス心臓移植に絞ることとした。臨床業務との兼任であるため、時間的な制限があるが、実際の移植手術以外のvitro分析については、研究員による研究協力を得て、分析を進めていくこととする。
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Strategy for Future Research Activity |
心臓グラフトにおける組織障害の程度をスコアリングし、各保存法間で統計学的解析を行う。保存液の生化学的分析については、研究員の協力を得て、分析を進める。さらに複数回の磁場凍結を施行し、各磁場強度で保存したグラフトに組織学的に差があるが検討する。申請者が術者として、各保存法を経た心臓グラフトを、同種同系のマウスに移植し、各項目を検討する。検討は協力研究員のもとで速やかに施行していく。0.定期的に心電図、CTなどの生体での機能的検査を行う。1. 組織学的検討:HE染色を行い、虚血再灌流障害の程度をスケール分類する。2. Myeloperoxidase(MPO)活性:臓器への好中球浸潤の指標として、MPO活性の定量化を行う。3. サイトカイン産生:RT-PCR 法により、炎症性サイトカイン(IL-1β、TNF-α)、Th1 サイトカイン(IFN-γ、IL-2)、およびTh2 サイトカイン(IL-4、IL-6、IL-13) の定量を行う。4. タンパク発現定量:Western Blot法により、caspase-3、NF-κB、Bcl-2、Bcl-xl、βactin を測定する。5. アポトーシス:Tunnel 染色を行い高倍率像(x400)でのTunnel 陽性細胞のカウントを行う。6. 血清中生化学的マーカー:血清中AST、ALT、LDH、CPKの定量を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、保存臓器移植の実験が中心となり、マウス代、手術消耗品、麻酔薬、各種分析や染色の費用が中心となる。引き続き学会へも積極的に参加し、情報収集に努めるとともに、タブレット端末を購入して実験の進捗状況を常に持参し、関連研究の研究者にも結果などについて議論ができるようにする。
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