2012 Fiscal Year Research-status Report
大腸全摘および回腸嚢肛門吻合術後の回腸嚢粘膜変化の解明
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23791513
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡辺 和宏 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (30569588)
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Keywords | 回腸のう炎 / 潰瘍性大腸炎 |
Research Abstract |
潰瘍性大腸炎および家族性大腸腺腫症では現在は肛門温存手術を目指した大腸全摘・回腸のう肛門吻合術が標準術式とされており、施行されることが多い。患者の愁訴のうち最も大きいものは排便機能に関してのものであり、術後の回腸のう炎あるいは回腸のう腺腫症は排便状況に直結する要因の一つであり、QOLを左右する重要な要素となっている。また、これらの病態の解明は、両疾患そのものの病態の解明につながる「カギ」となる可能性を秘めているとも考えられる。本研究を通して将来的に症例のQOLの改善につながることはもとより、原因不明である潰瘍性大腸炎の病因解明につながることが期待できると考えている。 今年度は、昨年度に引き続き、臨床検体の採取を中心に行った。当科では潰瘍性大腸炎の手術は2回あるいは3回に分けて行っている。すなわち、1回目に大腸亜全摘、2回目に直腸切除・回腸のう肛門吻合、3回目に回腸瘻閉鎖を行う3期分割手術と、1回目に大腸全摘・回腸のう肛門吻合まで行う2期分割手術である。今年度の潰瘍性大腸炎の新規手術症例は5例と昨年に引き続き少なく、家族性大腸腺腫症の手術症例は1例で思うように検体を集められなかった。潰瘍性大腸炎では昨年度の5例と合わせて10例と、家族性大腸腺腫症では2例で経時的変化を見て行くことになる。術後1年間の回腸のう炎発症率は8.1%であるので、この症例数では研究期間内に回腸のう炎を起こす症例は少ないと考えられ、解析に困難が予想されるが、最大限努力していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この研究は臨床検体を用いた研究であり、研究の進行度は当該年度における採取可能な検体数に左右されてしまう。これまでは手術症例数に年度ごとの差はあったものの、例年10~20例の潰瘍性大腸炎の新規手術症例がいたのであるが、ここ数年は手術となる症例数が減少してきている。原因としては様々な要因が挙げられるが、その一つとして他院にも潰瘍性大腸炎の手術をする病院ができたため今までは大学に集まっていた症例が分散してしまっているということ、もうひとつは近年の内科治療の進歩により瘍性大腸炎の寛解状態が維持できることが多くなり、手術となる症例が減少してきたことなどが考えられる。 思うように臨床検体が集める事が出来ない現在の状況ではなかなか研究を先に進めることができず、研究の達成度は“やや遅れている”と自己評価する。今後も厳しい状況が予想されるが、これまでに採取できた検体を大事にし、新規手術症例の追跡をしっかりして解析に努めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は動物モデルを用いた研究(ラットを用いた回腸間置モデルの作成)を中心に行う予定である。具体的には、8~10週齢のSD雄性ラットに全身麻酔下に開腹手術を行い、回腸末端約5cmを結腸後半部に間置する。同じ部位の回腸を一旦切離した後、もとの部分に縫合したモデルを対照群として同時に作成する。このような手術により、「腸内環境が大腸である回腸」モデルを作成する。間置モデルとSham群を各20頭作成する。このような手術により、「腸内環境が大腸である回腸」モデルを作成する。間置モデルとSham群を各20頭ずつ作成し、間置した回腸を術後1, 2, 4, 6か月後に摘出する(各群5頭)。H-E染色による形態変化、マイクロアレイ法による遺伝子発現の変化を、免疫染色法・Western blot法による遺伝子発現の確認を腸内環境の変化が腸管粘膜に与える変化を明らかにする。 その後、作成した回腸間置モデルラットを用いてDSS腸炎発症の検討を行う。DSS腸炎は投与開始後5~7日後に大腸炎を発症するが、小腸には炎症はみられないという特徴を持っている。間置した回腸に炎症が誘発されるか否かを組織学的に検討する。空腸間置モデルラットの結果とあわせて検討することにより、腸内環境が腸炎の発症にどのように関与するかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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