2011 Fiscal Year Research-status Report
肝虚血再灌流障害における新しいメカニズムの解明―T細胞の役割について―
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23791527
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
内田 洋一朗 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (30597745)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 虚血再灌流障害 / 肝臓 / T細胞 / TIM / ガレクチン / 国際情報交流 / アメリカ |
Research Abstract |
本研究は、肝虚血再灌流障害におけるT細胞による制御機構をTIM(T cell Immunoglobulin Mucin)分子(具体的にはTIM-1およびTIM-3)の観点から解明しようとするものである。実験モデルとして、マウス70%肝部分虚血再灌流障害モデルを使用している。全身麻酔下に開腹し、肝70%領域を支配する門脈・胆管・肝動脈を一括してクランプし閉腹。90 分後に再開腹しデクランプにより再還流し閉腹。その後6 時間・24時間後に血液サンプルおよび肝組織を採取して解析するという方法である。初年度の研究成果としては、上記のマウス実験モデルの作成が安定したことである。その理由として、本モデルは環境因子特に温度管理が重要であり、環境が異なると肝障害の程度に差が生じてしまうためである。具体的には血清AST/ALT値のデータが安定し、HE染色による組織検査で血清データに相関した肝組織障害を確認できたことによる。更にはそれらのサンプルを用いて、次年度に予定している免疫染色・PCR・ウェスタンブロット法などの手技につき確認を行った。一方で、T細胞上に発現するTIM-1/TIM-3分子によるシグナル伝達のバランスを検討する予定にしており、TIM分子の優位性に関する検討を行うために再灌流後の経時的組織採取を行った。採取サンプルを用いて、ウェスタンブロット法・フローサイトメトリー・免疫染色を行いTIM-1/TIM-3分子の発現頻度の検討を開始した所である。また、肝虚血再灌流障害におけるTIM-3分子の機能解明の一助として、そのリガンドであるガレクチン9に着目している。しかしながら、ガレクチン9の購入(入手)が困難であることがわかり、当研究室でのガレクチン9の作成を試み、その精製が完了し、最終調整を行っている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウス70%部分肝虚血再灌流モデルの安定した作成にやや時間を要した。もう一つのラット肝移植モデルについては、手技の再確認ならびに生存率が20-30%となる至適冷保存時間の検討中である。また、TIM-1分子とTIM-3分子の優位性に関する検討がまだ着手段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に引き続き、安定したマウス肝温虚血再潅流モデルを作成する。得られたサンプルをもとに、好中球浸潤につき免疫染色(Ly-6G染色、Naphthol AS-D Chloroacetate Esterase 染色)・myeloperoxidase(MPO)活性測定、 マクロファージ浸潤につき免疫染色(CD11b, CD68)、T 細胞浸潤につき免疫染色(CD4, CD3)、血管内皮細胞につき免疫染色(CD31)、サイトカイン(TNF-α, IL-6, IL-1β, IFN- γ, CXCL-1, CXCL-2 など)産生につきPCR もしくはELISA、 アポトーシスにつきtunel 染色・Caspase-3 活性測定を行い、これら主要因子との結果に基づき、肝虚血再灌流障害におけるTIM family の相互作用について評価する。得られた知見が冷虚血再灌流障害において整合性が見られるかどうか、ラット肝移植モデルを作成し、検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品においては、本学の動物実験施設ならびに当科の研究室の充実により、特に申請する必要はないと考えているが、マウス・ラットの購入維持や、atraumatic clip・針・糸などの手術器具・消耗品は不可欠と思われる。得られるサンプル量に比例して、血液検査や病理学的検査が必要となり、TIM分子に対する抗体の購入も必須となる。またベンチワークにおいては、試薬・キットの購入は必要不可欠である。特にTIM分子に対する抗体は高価であること、初年度にモデル作成に予想以上に時間を費やしてしまったことより、抗体購入のために初年度の予定研究費の一部を繰越している。本研究代表者の実績を基として行う本研究は、米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校やハーバード大学との協力支援を得ており情報交流は必須であり、また国内・国際学会での報告は責務であると考えている。
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