2012 Fiscal Year Research-status Report
肝虚血再灌流障害における新しいメカニズムの解明―T細胞の役割について―
Project/Area Number |
23791527
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
内田 洋一朗 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (30597745)
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Keywords | 虚血再灌流障害 / 肝臓 / 自然免疫 / T細胞 / TIM / 肝移植 / 国際情報交換 / アメリカ |
Research Abstract |
本研究は、肝虚血再灌流障害におけるT細胞による制御機構をTIM(T cell Immunoglobulin Mucin)分子であるTIM-1およびTIM-3に焦点をおいて解明を行っている。それらのpathwayにおいて、TIM-1のリガンドであるTIM-4、TIM-3のリガンドであるGalectin-9(Gal-9)の観点からの解明を現在研究中である。 方法としてはマウス70%肝部分虚血再灌流障害モデルを使用する。全身麻酔に開腹し、肝70%領域を支配する門脈・胆管・肝動脈を一括してクランプし閉腹、90 分後に再開腹しデクランプにより再還流し閉腹、その後6 時間・24時間後に血液および肝組織を採取して解析する。 初年度の成果は、上記マウスモデル作成の安定と当研究室におけるGal-9の精製であった(当初の計画では抗TIM-1/TIM-3抗体を使用する予定)。 昨年度は、上記モデルに対して精製したGal-9を前投与した実験を行うに至った。しかし、この精製したGal-9は不安定型であることが判明し、また安定型Gal-9を入手できたことより、安定型Gal-9の前投与によるモデルを再作成した。結果として、非投与群に比べ投与群で有意に肝障害が軽減された。投与法・投与時間および投与量の検討を行い、肝虚血再灌流障害の鎮静化に対して、TIM-3/Gal-9経路が重要な働きを担うことがin vivo実験で見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
肝虚血再灌流障害においてTIM-3/Gal-9シグナル経路の賦活により、その障害度をコントロールできることが判明した。しかしながら、in vivo実験からの肝機能評価のみのデータであり、まだその作用機序に関しての十分な検討が行われていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた血液・組織サンプルを用いての検討を引き続き行っていく。好中球浸潤につき免疫染色(Ly-6G染色、Naphthol AS-D Chloroacetate Esterase 染色)・myeloperoxidase(MPO)活性測定、マクロファージ浸潤につき免疫染色(CD11b, CD68)、T 細胞浸潤につき免疫染色(CD4, CD3)、血管内皮細胞につき免疫染色(CD31)、サイトカイン(TNF-α, IL-6, IL-1β,IFN-γ, CXCL-1, CXCL-2 など)産生につきPCR/ELISA、アポトーシスにつきtunel 染色・Caspase-3 活性測定などを予定している。 これら主要因子との結果に基づき、Toll-like receptor 4, NF-kB, Programmed death-1, High Mobility Group Box 1, Heme Oxygenase-1などの発現を定量し、肝虚血再灌流障害におけるTIM-3とGal-9を取り巻く免疫支配に関して検討する予定である。 当初は、ラット肝移植モデルでの検討も予定していたが、今年度の方針としては、まずは得られたサンプルでの解析を行い、必要に応じてin vitroでの詳細な検討を行いたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品においては、本学の動物実験施設ならびに当科の研究室の充実により、特に申請する必要はないと考えている。追加のマウスの購入維持や、atraumatic clip・針・糸などの手術器具・消耗品は適時必要である。 得られたサンプルに対しての血液検査や病理学的検査のために、外注検査費や各種抗体などの購入は必要で、今年度中心となるベンチワークにおいては、試薬・キットの購入は必要不可欠である。そのために、予定研究費の一部を今年度に繰越している。 また、本研究では、米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校やハーバード大学との協力支援を得ており、その情報交流は必須である。国内・国際学会での報告は責務であり、さらには得られた結果の論文化も予定している。
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