2012 Fiscal Year Research-status Report
放射光微小血管撮影法による肺細動脈シアーストレスの計測と肺高血圧症研究への応用
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23791560
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
徳永 千穂 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30451701)
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Keywords | 高感度放射光微小血管撮影 / 高肺血流肺高血圧症 / シアーストレス |
Research Abstract |
肺動脈性肺高血圧症は、原発性ないし種々の疾患に伴って肺動脈圧が上昇する肺血管疾患である。増加した肺血流とshear stressが肺血管抵抗の増加を引き起こすことによって肺最小動脈のび慢性狭窄・閉塞を認めるが、そのメカニズムとしてshear stressによる血管内皮細胞障害の関与が考えられている。本研究は放射光微小血管撮影法を用いた肺動脈造影法を確立し、肺動脈におけるshear stressの評価と血管内皮細胞障害の機序を解明すること目的としている。 2011年度に高エネルギー加速器研究機構放射光研究施設における放射光由来X線源と高感度HARP受像管、ハイビジョンシステム(NHK放送技術研究所提供)を用いた高感度放射光微小血管撮影を肺動脈造影法に応用する技術を確立した。2012年度はこの技術を利用し、より詳細な肺動脈血流速度とshear stressの関連を調べるため Gray-val (Library Inc. Japan) 濃度変位測定ソフトを用いて新たな流量解析の手法を確立する事を主眼として研究を進めた。高感度放射光微小血管撮影法により約100 µmまでのラットの肺細動脈の造影が可能となり、動脈―静脈シャント増設により作成したラット肺高血流肺高血圧モデルを利用し右主肺動脈から胸膜下肺細動脈までの肺細動脈血流動画を得た。この動画を元に、造影剤の濃度変化と通過時間からGray-val濃度変位測定ソフトを用いて右下肺動脈の血流速度を算出した。その結果、高肺血流性肺高血圧症において右下肺動脈での血流速度は有意に増加しており、よりshear stressのかかる状態である事が推察された。 高感度放射光微小血管撮影法による肺動脈流量解析は、高肺血流性肺高血圧症におけるshear stressと内皮細胞ストレスの相互関係の解明の一助になりうる有用な技術であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高エネルギー加速器研究機構放射光研究施設における放射光由来X線源と高感度HARP受像管、ハイビジョンシステム(NHK放送技術研究所提供)を用いた高感度放射光微小血管撮影が可能となった。肺動脈血流速度とshear stressの関連を調べるため Gray-val (Library Inc. Japan) 濃度変位測定ソフトを用いて新たな流量解析の手法を確立した。 この結果は2012年度アメリカ心臓病学会総会にて発表した。 画像の空間的解像度は高感度HARP受像管により改善を認めたが、時間的解像能の改善がより微小な血管の撮影と造影剤濃度の変化の解析に必要であると考えられ、今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はGray-val濃度変位測定ソフトを用いた流量解析の手法を用いて、高肺血流肺高血圧モデルに加えてモノクロタリンによる低肺血流肺高血圧モデルを用いて、異なる発生機序の肺高血圧症におけるshear stressの解析を行う予定である。加えて、肺高血圧症における末梢肺動脈血流速度及びshear stress上昇と肺動脈内膜肥厚との関連の解明のため、今後摘出したラット肺の凍結及びホルマリン包埋標本を用いて肺細動脈組織の構造変化とshear stressとの相互関係および血管内皮細胞シグナリングを調べる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
流量解析のためにはある定点の微小血管の濃度変化の追跡機能が必要であり画像解析技術の新たな開発を試みる予定である。また血管内皮細胞シグナリングを調べるためのウェスタンブロッティングや免疫染色のための抗体および必要機器にも使用する予定である。
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