2011 Fiscal Year Research-status Report
局所治療と全身治療をつなぐ脳腫瘍免疫遺伝子治療法の開発
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23791583
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
齋藤 竜太 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10400243)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 脳腫瘍 / 免疫治療 / 薬剤送達 / 局所治療 / OX40 |
Research Abstract |
免疫の共刺激因子OX40に注目して研究を進めている。OX40発現Adenovirus(Adeno/OX40)を脳内の広範囲に局所投与可能であるConvection-enhanced delivery(CED)法によりラット脳腫瘍モデルに局所投与したところ、若干の生存延長効果が認められた。一方で抗癌剤であるACNUのCED法による投与において、局所の免疫惹起について検討したところ、ACNUは脳腫瘍細胞に対してFas Lの発現を増強させること、免疫抑制系サイトカインであるTGF-betaの発現を抑制することを確認した。また、ラット脳内にACNUをCED法で投与することにより投与局所において血液脳関門(BBB)の透過性が一過性に亢進することが示された。このBBBの一過性の透過性亢進に注目して、この時期に化学療法剤を全身投与することで治療効果の向上があるのではないかとの仮説をたて、これを検証、ラット脳腫瘍モデルで解析しこれを証明した。ラット脳腫瘍モデルに対してACNUをCED法により投与し、BBBが開く時期にドキソルビシン・リポソームを尾静脈より投与、局所への漏出の増加と脳腫瘍モデルラットの生存延長を確認した。これらの知見は、ACNUのCED法による投与により、局所に免疫反応が起きやすい状況を誘導していることを示していると言える。今後は、OX40シグナルを活性化させることで免疫を誘導した上で、脳腫瘍局所にACNUをCED法により投与し、併用効果による腫瘍の治療法開発を進める。現在、OX40シグナルの強め方を検討中であり、脳腫瘍内への遺伝子発現を誘導するよりもOX40アゴニストによる全身性の投与が良い可能性が示唆され研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は局所治療と全身治療をつなぐことであった。この手段として免疫遺伝子治療を用いることを予定して、免疫の共刺激因子であるOX40を発現するアデノウイルスベクターを局所に広く投与することを可能とする中枢神経系への薬剤送達技術Convection-enhanced delivery法を用いて投与する研究を進めた。しかし、実施してみるとこの腫瘍内にOX40を発現させる方法は期待ほどの効果を示さず、むしろOX40を全身性に刺激する方が効果的であるとの知見を得た。そのため、化学療法剤をConvection-enhanced delivery法で投与する局所治療にOX40を全身性に刺激する免疫治療との併用へと方針を変更した。本年度は化学療法剤の局所投与による局所免疫環境の変化を研究し、論文報告に繋がった。現在はOX40刺激による腫瘍免疫の誘導について研究を進めており、さらに追加の知見を得ている。従って、研究の進行には若干の変更はあるもののおおむね順調と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように全身性にOX40シグナルを刺激することによる抗腫瘍免疫の誘導について現在研究を進めている段階にある。注目している免疫共刺激因子は本学免疫学教室により単離されたものであるが、今後の研究においてこの免疫学教室と協力する方針となっている。OX40のアゴニスト抗体を作製し、現在研究を進めており、どのような投与経路が脳腫瘍免疫の誘導に取って最良なのかを検討中である。現在は主にマウスを用いた動物実験を実施しているが、この結果が判明したのちに、化学療法剤のConvection-enhanced deliveryとの併用を研究し、局所治療と全身療法をつなぐ本来に目的につなげていきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の主体は動物実験になっており、実験動物の購入、飼育、手術関連薬剤等に費用が必要となる。さらに実験により得た免疫誘導後の脳標本にて、免疫細胞の浸潤、サイトカインの産生を検討する必要があり、各種抗体、ELISAキット等を購入する。また研究成果を特にがん、脳腫瘍関連の学術集会にて報告する予定である。また、論文として発表するために英文添削等、必要経費を使用する。
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Research Products
(10 results)