2012 Fiscal Year Annual Research Report
脳白質線維画像統合による安全な定位放射線治療の確立
Project/Area Number |
23791586
|
Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
甲賀 智之 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (40456124)
|
Keywords | 定位放射線治療 / 脳白質繊維 / トラクトグラフィ |
Research Abstract |
脳の定位放射線治療はさまざまな頭蓋内病変に対してガンマ線などの放射線を正確に大量一括照射するものである。その有効性は広く知られているが、病変の存在する部位によって常に一定の確率で治療に伴う合併症が発生する。大脳白質内の線維はこれまではその存在部位が同定できなかったため重篤な合併症を伴うことがあるのが現状である。画像診断技術の進歩によりMRIの拡散テンソル画像から大脳の白質線維を描出するトラクトグラフィという技術が可能となり、我々はこれまでガンマナイフによる治療に統合することを試みてきた。 治療計画に軸索路を統合することを汎用化するため、種々の計算処理環境を整え、短時間で簡便に行えるようにするシステムを開発した。ガンマナイフ治療の対象症例のうち、病変と錐体路、視放線、弓状束が近接すると考えられる症例において、これらの白質線維を治療計画に統合、白質線維に照射される線量を計算した。その際、軸索画像を合成しなかった場合の白質路への照射線量と、軸索画像を合成し、白質路への照射線量を低減すべく修正を行った後の白質路への照射線量を比較した。 実際に治療に応用しうる時間の範囲内で、脳白質線維画像を定位放射線治療の治療計画に統合することが可能となった。実際に、144例の治療のうち、必要と判断した71例で白質線維画像を統合して治療を行った。ケースコントロール研究では錐体路に近接する病変で治療を行った24例の結果につき、白質線維画像の統合を開始する前の同様の病変の治療例28例と比較したところ、運動麻痺は統合開始後は1例、開始前は5例(p = 0.021)で、白質線維画像統合開始後に有意に合併症率が低下していた。病変の治癒率(p = 0.68)は両者に有意な差がなかった。白質線維画像を定位放射線治療に統合することにより、治療効果を減ずることなく神経学的な有害事象を減ずることができると考えられた。
|
Research Products
(9 results)