2011 Fiscal Year Research-status Report
小児癌生存者における認知機能障害と放射線後幼若脳での白質障害に関する基礎的研究
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23791600
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 福子 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (30533799)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 小児悪性脳腫瘍 / 晩期障害 / 認知機能 / Diffusion Tensor Imaging / Quality of Life |
Research Abstract |
当院治療後の小児髄芽腫患者25例の中で、生存中の長期follow up中の10例に対して、経時的に高次脳機能検査を行った。16歳以上の患者には、ウェクスラー成人知能検査(Wechsler Adult Intelligence Scale-revised : WAIS-R)を使用し、16歳以下に関しては、Wechsler Intelligence Scale for Children (WISC-R, 7-16歳)を行った。治療後から測定までの期間は3~7年(平均4.75年)であった。再発例は腫瘍が寛解してもIQ低下が著しかった。再発例を除く症例ではtotal IQ:83.6±10.6、verbal IQ(VIQ):94.4±8.6、performance IQ(PIQ):74.8±12.8であった。PIQはVIQに比して低下しやすい傾向があり、特に知覚統合、処理速度の低下が認められた。小脳症状、脳神経症状の訴えが強い患児はPIQが低い傾向があった。治療時年齢とIQとの有意な相関は認めなかった。内分泌機能障害に関しては、甲状腺機能異常5例(ホルモン補充療法:4例)、成長ホルモン分泌低下3例(GH治療例なし)、原発性性腺機能低下症2例、中枢性性腺機能低下症1例、中枢性尿崩症1例を認めた。現時点で、血管障害の発生は明らかではなく、二次癌の発生も認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長期追跡中患者の高次脳機能検査に関しては、Tapping SpanやWCST-慶応版、Rey-複雑図形、TMT-AB&語列挙、AVLT、CPT&WMTなど、より詳細な検査を行っていく予定であるが、外来follow日と臨床心理士との日程を調整中である。さらに、小児がん治療後患者および患者家族のQOL調査を、幾つかの評価法(PediQL、EORTC-QLQ-C30、FACT-Br、SF-36version2)を用いて、その妥当性を評価し、validationを行っていく予定である。また、当院では、3T高磁場MRI装置を用いて定期的に撮影した画像を経時的に評価し、拡散テンソル画像 (diffusion tensor image; DTI)・潅流画像 (perfusion image; PWI) ・磁化移動比画像 (magnetization transfer image) ・磁化率強調画像 (susceptibility-weighted image; SWI) ・MRS(spectroscopy)・MR angiography (MRA)などを用いて、放射線治療後の白質および脳血管・血流に関する検討を行う予定であるが、いくつかの項目で検査未実行のものがあり、統計学的解析には症例数の蓄積が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
長期追跡中患者の高次脳機能検査に関しては、Tapping SpanやWCST-慶応版、Rey-複雑図形、TMT-AB&語列挙、AVLT、CPT&WMTなど、より詳細な検査を行っていく予定である。さらに、小児がん治療後患者および患者家族のQOL調査を、幾つかの評価法(PediQL、EORTC-QLQ-C30、FACT-Br、SF-36version2)を用いて、その妥当性を評価し、validationを行っていく予定である。また、当院では、3T高磁場MRI装置を用いて定期的に撮影した画像を経時的に評価し、拡散テンソル画像 (diffusion tensor image; DTI)・潅流画像 (perfusion image; PWI) ・磁化移動比画像 (magnetization transfer image) ・磁化率強調画像 (susceptibility-weighted image; SWI) ・MRS(spectroscopy)・MR angiography (MRA)などを用いて、放射線治療後の白質および脳血管・血流に関する検討を行う。また、当院で行っている治療は、世界的に見ても予防的な全脳全脊髄に対する放射線照射量が、18Gyにまで減量された方法であり、現在標準とされる24Gyとの比較をすることに大きな意味があると考えられる。その手法について検討を要するものと思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き、症例数の蓄積を図る。さらに発展的な研究を行う。高磁場MRIを使用した放射線障害幼若ラットモデルにおけるFA値変化と組織学的考察:ラットを使用し,放射線障害の進行に起因するFA 値の変化と病理学的変化の関係を解析する。放射線照射前後に11.7T-MRIで経時的に測定したFA値と病理組織を比較検討する。(1)Hematoxylin-Eosin染色や免疫組織染色にて白質障害の程度を確認する。(2)部位により障害度合いに変化が認められるか比較する。(3)小脳部髄芽腫injectionモデルと水頭症モデルを作成し、腫瘍細胞の影響、腫瘍発生母地、水頭症への影響も観察する。放射線障害マウスおよびラットモデルにおける遺伝子解析:上記方法にて作成したモデル動物より大脳皮質、視放線、脳梁、脳幹、小脳歯状核を通る神経線維などを同定し放射線照射前後での遺伝子発現の変化をmicroarray(Affimetrix、GeneChip®Rat Exon 1.0 ST array and GeneChip®Mouse Exon 1.0ST Array)にて検討する。また、候補因子に関しては、RT-PCR法、Western Blottingなどを用いて検証を行う。多光子励起顕微鏡による放射線障害幼若脳モデルにおけるシナプス形成障害の解析:幼若マウスに放射線照射を行い、生体のまま脳内で起こっている神経細胞活動や血流、シナプス形成過程を観察し放射線による影響を検討する。統計学的解析:集計後は統計学的ソフト(JMP、SPSS stastistics)を用いて解析を行う。QOL調査の信頼性を調べ、データの信頼性を評価する。その後、多変量解析を用いて、画像解析から得たデータと認知機能とのデータ、QOLとの項目について関連がある因子を検出する。複数の因子との関係性を明らかにし、その有意性を検討する。
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