2011 Fiscal Year Research-status Report
カオリン水頭症モデルで見られる異所性アクアポリン1の水頭症発症における役割の解明
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23791613
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
藤田 政隆 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (10360637)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | アクアポリン / RNAi / 水頭症 / 水チャンネル / 中枢神経 / ラット |
Research Abstract |
1. 培養細胞株を用いたアクアポリン1(AQP1)のノックダウン効果についての評価法の確立RNA interference (RNAi)法を用いてラットの疾病モデル(水頭症)でのAQP1の発現を特異的に抑制させることを目指すにあたり、まず最適なsiRNA配列を決定する必要がある。このため、AQP1を発現している培養細胞株(C6 グリオーマ細胞) を用いて、AQP1の発現量を定量するシステムが必要であった。AQP1の発現量については、mRNAを定量する方法とタンパク質を定量する方法が想定される。(1)AQP1がin vivoの実験系である水頭症形成に何らかの役割を演じていると仮定した場合、その機能分子としてのAQP1タンパク質を定量評価することが望ましく、タンパク質の定量法についても、in vitroの系である細胞培養系を用いて確立させておくことが望ましい。(2)当研究室において、ウサギにAQP1タンパク質を免疫し、抗AQP1血清をすでに調製している。以上の2点の理由から、AQP1タンパク質をウェスタンブロット法で定量する方法の確立を目指すこととした。現在までに、得られた抗血清2ロットのうち、適切な1ロットがウェスタンブロットに適していることを確認できており、さらにノックダウン実験に向けた予備実験を行っている。2. ラット髄腔内への持続的siRNA投与法の検討in vivoでのRNAiによるAQP1ノックダウンの効果を評価するにあたり、数ヶ月間と比較的長期間に渡り、髄腔内という特殊な環境下にsiRNAを投与し続ける必要がある。このため、溶媒のグレード、手術手技などを検討し、現在その検証準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、培養細胞よりタンパク質を精製しウェスタンブロット法でAQP1タンパク質を定量する実験系について検討している。AQP1を含むタンパク質の精製法について、今後in vivoからの精製を行うことも鑑み、in vitro, in vivo共通で適用できる方法について検討を行っている。概ね、培養細胞からのタンパク質精製を行うための、培養細胞数・培養条件などの確認作業はほぼ終了したが、RNAiを行うことから、今まで行っていた細胞スケールより小さいスケールでの実験となるために条件設定が厳しくなり、新たなプロトコールを作成する必要があったため、この確認に時間を費やした。また、この系で用いる抗AQP1抗体について、既にウサギ抗血清は精製済みで、2つのロットが得られ、ロットチェックは概ね終了していたが、ウサギ抗血清の性能やウェスタンブロットの反応条件について、引き続き検討が必要で慎重に評価を行っており、ここでもさらなる時間が必要となっている。また、ラット髄腔内への持続的siRNA投与法についても、中枢神経系内という特殊な空間に、外部から持続的に薬剤(siRNA調製液)を注入する必要から、検討に時間を要している。siRNA調製液の中枢神経系への安全性、siRNAの導入効率について、既製品を使用できるか検証作業中である。またラットの手術についても、感染やRNase混入のリスクを極力減じた手技を確立する必要があり、現在カテーテルの長さ、刺入長や留置部位あるいは、オスモティックミニポンプの留置部位や手順など諸々の条件について、既にある程度は確立しており既製品の存在するが、一部カスタマイズする必要が生じており、その検討や確認に時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
AQP1タンパク質のノックダウンの評価のためには、ウェスタンブロット法によるAQP1タンパク質の定量が不可欠であったが、その実験条件の設定に時間を要してしまったために、全般的に進行が遅れてしまっている。このため、早急に、AQP1タンパク質を定量するためのウェスタンブロット法について実験条件を確立し、in vitro 実験系でのRNAiを実施する。RNAiで使用するsiRNAの配列については、既にいくつかの候補をピックアップし、既に合成済みである。このため、AQP1タンパク質の定量法が確立したところで、直ちにRNAi実験を行うことが出来る見込みであり、そしてAQP1タンパク質の発現抑制度について評価した上で、この実験系にふさわしい適切なsiRNA配列を決定できる見込みである。そして、この実験結果をもって、in vivo実験系にsiRNA配列を適用する予定となっている。また、動物の手術手技やオスモティックミニポンプによる髄腔内へのsiRNA長期投与についての検討を行う。とりわけ、髄腔内へ挿入するカテーテルの選択が重要と思われる。刺入部位やどれくらいの深さまで刺入し先端をどこに留置するかなど、諸々の条件について検討する必要があるが、類似の実験が既にいくつかなされていることから、若干の修正を行うことで適応できる見込みである。そしてin vivo実験系における RNAiの効果について、脳よりAQP1タンパク質を抽出し、発現抑制が実際にみられるか評価を実施できる見込みである。その結果を踏まえ、ラット水頭症モデルに適応し、AQP1のノックダウンが水頭症形成にどのような影響を与えるか評価し、AQP1の役割について検討する予定となっている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. AQP1タンパク質の定量およびRNAiの評価AQP1タンパク質の精製およびウェスタンブロット法で使用する試薬、また、siRNAの合成や細胞・組織内に導入する試薬など、当初は平成23年度中に終了する予定であったものもあるが、引き続き24年度でも実施する必要があり、適宜購入予定である。また、一部は使用期限の短いものがあり、引き続き実施予定があるものもあるため、使用の都度購入する予定である。2. ラット髄腔内への持続的siRNA投与法の検討およびカオリン誘発性水頭症モデルに対するAQP-1 siRNAの投与実験用ラットの他に、in vivo用のsiRNA導入試薬や、siRNAの中枢神経系への長期間持続注入するためのオスモティックミニポンプ・カテーテル、手術用の麻酔薬などの薬剤、脳よりAQP1タンパク質を精製する試薬、脳標本作成のための試薬や免疫染色のための試薬などを適宜購入する予定である。一部、平成23年度中に終了する予定であったものもあるが、進行の遅れから引き続き24年度でも実施する必要があり、適宜購入予定である。また、中には使用期限の短いものがあり、引き続き実施予定があるものもあるため、使用の都度購入する予定である。また、siRNAについて、in vivoでは特殊な精製や修飾が必要な場合も想定されるため、必要に応じて再度購入する見込みである。3. その他学会発表のための旅費や実験補助のための謝金、論文発表のための費用などを要する見込みである。
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