2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23791619
|
Research Institution | Tazuke Kofukai Medical Research Institute |
Principal Investigator |
西田 南海子 公益財団法人田附興風会, 医学研究所 第7研究部, 研究員 (80450237)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 特発性正常圧水頭症 / 睡眠 / 歩行 |
Research Abstract |
高齢者の特発性正常圧水頭症(iNPH)は歩行・排尿・認知機能障害を三徴とし、外科的脳脊髄液短絡術によって症状を緩和できるという点で、症候学的に似たアルツハイマー病やパーキンソン病のような変性疾患との鑑別が重要である。高齢者一般において、睡眠障害は頻度が高く、その質は日常生活動作のレベルに直結する。本研究では、外科治療前後の本疾患における睡眠・歩行に着目、髄液・血清中の神経調節物質、MRI拡散強調画像を用いた関連脳機能野の変化を評価し、その鑑別・病態解明の一助とし、加齢とともに変化するヒトの睡眠・歩行のメカニズムに迫ることを目的としている。23年度は、iNPHの疑いにて手術適応を決めるための評価入院にエントリーした患者(10名程度を目標とする)を対象とし、通常の三徴(歩行障害・排尿障害・認知機能低下)の評価(iNPH Grading Scale/MMSE/TMT/FAB/ up & go test)に加えて睡眠障害の自覚的評価(PSQI/ESS)、MRI撮像、ポリソムノグラフィーを施行する計画であった。実際は、評価入院を行った患者は24名、陽性は16名、内6名が手術を受けた。加えて紹介の2名が外科治療を受けた。PSQIを記入可能な認知機能レベルであった10名では5.6±3.5とカットオフレベルの5を超えていた(何らかの不眠有)。ESSでは5.2±3.5と病的過眠の傾向はなさそうだが、世代的に車を運転する方は少ないこともあり、適した検査かどうかは検討の余地がある。PSGには7名協力を得た。直後から睡眠構築に変化を認めている。今後の外来レベルでの負担のない追跡に向けて、2名に夢眠計(簡易ポリソムノグラフィー)での同時記録を受けていただいた。解析の終わった1名では、検査法による結果に大きな差はないようである。次年度からのDTI解析に向けた治療前後のMRI撮像は4名行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タップテストによるスクリーニングを希望された方は多く、厳選しても24名の評価入院を行えた。認知機能低下が著しい場合・歩行障害が著しい場合など、必ずしも、自覚的睡眠評価、及び歩行評価が行えない例が含まれていたが、予定通り10名の基礎データをそろえることが出来た。術前後のPSGは7名、歩行の評価については、23年度夏に3次元歩行解析装置(2カメラ)を購入し、トータル15セッションの歩行撮影を完了している。従来のビデオ撮影による歩数、スピードの評価に加え、姿勢の評価を計画している段階である。
|
Strategy for Future Research Activity |
FAB/ MMSEを基準の認知機能検査としているが、かなわない場合もある。日立製作所のご好意により、簡便に出来るタスクである指タップ運動を測定する機器をお借りして、運動性の機能・リズム障害などの定量的データベースを追加で構築することを追加で検討している。睡眠の自覚症状評価としては、当面PSQI/ESSを継続する。さらに、夢眠計での同時記録で従来のポリソムノグラフィーとの相関を確認し、外来レベルでの睡眠障害フォローを継続する。歩行の評価については、23年度に3次元歩行解析装置(2カメラ)を購入し、15セッション、6名で治療前後の歩行撮影を完了している。従来のビデオ撮影による歩数、スピードの評価に加え、姿勢の評価を計画している。また、歩行障害、認知機能低下、排尿障害を主訴に髄液排除テストに至った24名の髄液について、大阪バイオサイエンス研究所でLPGDSの測定を計画している。LPGDSは正常圧水頭症で低下するとの報があるが、そのisoformの差が、様々な認知機能低下の鑑別に有用との報告があり(Electrophoresis 2005)、まず基礎データを確認のうえ、isoformの測定を検討する予定である。また、MRI撮像DATA(DTI対応)を蓄積し、歩行・睡眠の観点よりROI(脳室周囲白質、基底核、視床、視床下部、脳幹まで)を決めて、拡散強調画像を用いて脳の微細な構造変化の解析を行う予定であるが、前後の脳室の形態変化の問題があり、FSL/TBSSなどの適した解析方法を検討している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ポリソムノグラフの測定・解析費用、MRI解析用高速処理PC/MATLABの購入費用、髄液検査に伴う諸費用、及び情報収集のための学会出席費用などを予定している。23年度交付額のうち約13万円が24年度に繰越となった理由としては、3次元歩行解析装置(2カメラ)を予定より安価に導入できたこと、夢眠計を安価にレンタルできたことがある。繰越分は、必要検査、或いは備品などの補充に充てる予定である。
|