2011 Fiscal Year Research-status Report
Sox9-CreERT2マウスを用いた脊椎椎間板症の病態解明と新規治療薬の開発
Project/Area Number |
23791637
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宗 和隆 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30514038)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 変形性脊椎症 / 遺伝子改変マウス / 創薬 |
Research Abstract |
椎間板症は我が国の骨軟骨性疾患の中で最も発症頻度の高い疾患の1つであり、椎間板ヘルニアや引き続き発症する変形性脊椎症の前駆状態となるが、変性した椎間板を再生させる有効な治療法は未だ確立されていない。近年の知見から椎間板症の発症にはTGF-βシグナルが重要な役割を果たしていることが示唆されている。当研究室では生後の軟骨および椎間板の生理学的成熟および椎間板症の病態解明のため、タモキシフェンでCreリコンビナーゼが発現誘導されるSox9-CreERT2ノックインマウスを作成し、生後の軟骨細胞および髄核細胞において時間および空間特異的に特定の遺伝子を欠失させることができるin vivo実験系を確立した。このSox9-CreERT2マウスを用いて生後Sox9発現細胞において腫瘍増殖因子ベータII型受容体(TGFBR-II)遺伝子を欠失させTGF-βシグナルを遮断したところ、このマウスは後側彎変形をきたした。平成23年度は、in situハイブリダイゼーション法や免疫染色法を用いてタモキシフェン投与後の椎間板症発症までを経時的に解析したところ、椎体形成過程での終板成長板軟骨細胞の増殖および分化異常が明らかとなった。これら椎体形成異常の表現系がIGF-I全身投与により回復するかどうかを検討したところ、TGF-βシグナル遮断による表現系は全く回復しなかった。よって椎間板変性および椎体形成異常により惹起される脊椎症に対しては、新規の治療薬が必要であることが示唆される。現在、新規薬物療法の開発のために、TGFBR-II flox/floxマウスより軟骨細胞を単離培養し、in vitroにおいてCreリコンビナーゼを用いてTGFBR-II欠失軟骨細胞を作製し、種々の低分子化合物を添加し、硫酸化グリコサミノグリカンの産生誘導を指標に網羅的にスクリーニングを行う予備実験を実施している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、in situハイブリダイゼーション法や免疫染色法を用いてタモキシフェン投与後の椎間板症発症までを経時的に解析したところ、椎体形成過程での終板成長板軟骨細胞の増殖および分化異常が明らかとなった。さらに、このマウスの長管骨成長板も著明な増殖・分化障害を呈していることが明らかとなった。これら椎体形成異常の表現系がIGF-I全身投与により回復するかどうかを検討したところ、TGF-βシグナル遮断による表現系は全く回復しなかった。よって椎間板変性および椎体形成異常により惹起される脊椎症に対しては、新規の治療薬が必要であることが示唆される。現在、新規薬物療法の開発のために、TGFBR-II flox/floxマウスより単離培養した軟骨細胞から、in vitroにおいてCreリコンビナーゼを用いてTGFBR-II欠失軟骨細胞を作製し、種々の低分子化合物を添加後、硫酸化グリコサミノグリカンの産生誘導を指標に網羅的にスクリーニングを行う予備実験を実施している。研究は概ね順調に進展していると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、新規薬物療法の開発のために、TGFBR-II flox/floxマウスより軟骨細胞を単離培養し、in vitroにおいてCreリコンビナーゼを用いてTGFBR-II欠失軟骨細胞を作製し、種々の低分子化合物を添加し、硫酸化グリコサミノグリカンの産生誘導を指標に網羅的にスクリーニングを行う予備実験を実施している。平成24年度は、約5000種類の低分子化合物をスクリーニングし、創薬シードの獲得を目指す。また、二次スクリーニングとして、日本白色家兎の椎間板からコラゲナーゼ処理にて単離した初代髄核細胞に添加し、DMMBによる比色定量で硫酸化グリコサミノグリカン産生量が2倍以上であるものを選択する。以上により選択された合成低分子化合物を、生後2ヶ月のTGFBR-II flox/flox/Sox9-CreERT2マウスの腹腔内にタモキシフェン2mgを3日間連日投与し4週後、脊柱変形を確認したマウスの尾静脈から1週間連日注射投与する。対照群は生理食塩水を注射したタモキシフェン投与TGFBR-II flox/flox/Sox9-CreERT2マウスとする。化合物注射後2週、4週で屠殺、X線にて脊柱のアライメントを解析し、胸腰椎を摘出しパラホルムアルデヒド固定後、脱灰、パラフィン切片を作製する。組織学的解析として、ヘマトキシリン/エオジン染色、アルシャンブルー染色を行う。さらに35SラベルcRNAプローブを用いたin situハイブリダイゼーション法および免疫染色法によって、椎体終板成長板および椎間板を組織学的に検討する。さらに5ヶ月齢日本白色家兎の第4/5椎間板を18ゲージ注射針で損傷させた外傷性椎間板症モデルを作製する。椎間板損傷8週後に、上記の合成低分子化合物を1週間連日静脈投与する。投与開始後4週、8週で屠殺し、X線・組織学的に椎間板変性に対する合成低分子化合物の効果を解析する
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マウス・家兎の飼育管理費用、組織学的実験や創薬シードスクリーニングのための実験試薬や実験機器の購入に研究費を使用予定である。
|