2011 Fiscal Year Research-status Report
Parathyroid hormoneの難治性骨折・骨癒合不全治療への応用
Project/Area Number |
23791641
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
新倉 隆宏 神戸大学, 医学部附属病院, 特命助教 (40448171)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 骨折治療 / 難治性骨折 / 骨癒合不全 / 骨癒合促進 |
Research Abstract |
平成23年度の研究計画は下記の通りであった。(1)ヒト骨折血腫細胞の骨・軟骨分化誘導に及ぼすPTH (1-34)の作用の生物学的検討(2)ヒト偽関節細胞の骨・軟骨分化誘導に及ぼすPTH (1-34)の作用の生物学的検討【方法】対象は骨折患者7例および偽関節患者5例で、手術中に血腫および偽関節組織を採取した。骨折血腫細胞および偽関節細胞を分離・培養した後、PTH (1-34)非投与群(PTH(-))・ PTH (1-34)連続投与群(PTH-C)の2群に分けて骨分化誘導を行い、骨分化能を比較検討した。また、培養8日目までの細胞増殖能を検討した。さらに上記2群で3次元培養を用い軟骨分化誘導を行い、軟骨分化能を比較検討した。【結果】まず骨折血腫細胞における結果を報告する。骨分化能について、ALP活性,Real-time PCRでのRunx2・ALP・osteopontin の発現量,Alizarin red染色の定量において2群間で有意な差は認められなかった。細胞増殖能も2群間で有意差を認めなかった。軟骨分化能については、Safranin-Oによる染色およびreal-time PCRによるcollagen-II・collagen-Xの発現評価において、PTH-C群はPTH(-)群と比べ著明な低下を示した。偽関節細胞でも、これらと同様の傾向を得ているが、骨折血腫細胞における結果のような有意差は得られていない。【考察】骨折血腫細胞および偽関節細胞に対するPTH (1-34)連続投与の効果は、骨分化と増殖能に関して有意な作用を与えず、軟骨分化に関しては抑制的に作用した。このことより、PTH (1-34)の骨折部への局所投与は、骨折血腫細胞および偽関節細胞には直接的に促進的な影響を与えないことが示唆され、骨折部の他の細胞・組織に働くことで生物学的作用が生じる可能性が考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨折血腫細胞および偽関節細胞に対するPTH (1-34)連続投与の効果は、骨分化と増殖能に関して有意な作用を与えず、軟骨分化に関しては抑制的に作用するという、明確な傾向を示す結果が得られた。このことより、 PTH (1-34)の骨折部への局所投与は、骨折血腫細胞および偽関節細胞には直接的に促進的な影響を与えないことが示唆され、骨折部の他の細胞・組織に働くことで生物学的作用が生じる可能性が考察され、次年度の研究継続において有益な情報を得ることが出来た。次年度のin vivoにおけるラット難治性骨折モデルへのPTH (1-34)投与の実験において、局所投与だけでなく全身投与も検討すべきであることが確認され、有用な情報となった。ただし偽関節細胞での実験において、骨折血腫細胞における結果と同様の傾向を得ているが、有意差は得られていないことがやや不満の残るところであった。この理由として偽関節は長期間骨折が治癒しない病態であり、その病巣から採取してきた偽関節細胞は、新鮮骨折から採取した骨折血腫細胞ほどの生物活性を有していないことを考察した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、in vivoでラット難治性骨折・骨癒合不全モデルを用いてPTH (1-34)が骨癒合を促進するかを検討する。ラット難治性骨折・骨癒合不全モデルにPTH (1-34)の全身性間欠投与または骨折部・偽関節部局所投与を行い、その骨形成能を評価する。ラット難治性骨折・骨癒合不全モデルは、大腿骨骨折を作成して髄内釘固定した後、骨折局所を切開・展開し、周囲軟部組織を剥離、骨膜を焼灼することで、骨折が治癒せず放置すると偽関節となるモデルである。このモデルを作成しすぐにPTH (1-34)を投与し、難治性骨折を治癒させることが出来るかを検討する。また、このモデルを手術後8週間放置すると確立された偽関節となる。これを治癒させることが出来るかも検討する。この際実際の臨床応用を考慮に入れ投与方法による違いについても検討する。すなわち、全身投与と局所投与それぞれでの効果を検討する。PTH (1-34)の投与方法は、(1)皮下注射による全身性間欠投与、(2)骨折・偽関節部への局所投与を試す。経時的に骨癒合を評価する。X線学的評価 (micro CTも含む)、組織学的評価、遺伝子学的評価(Real-time PCRで骨芽細胞関連マーカー)、骨強度測定(剛性、破断強度)による機能的評価を行う。ラット難治性骨折・骨癒合不全モデルの骨癒合をPTH (1-34)が促進するかという研究課題において、もしある容量のPTH (1-34)が無効であれば、より高容量を投与する、あるいはPTH (1-34)単独のみならず骨形成蛋白 (BMPs)等との同時投与でその有効性を検討することも考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
動物の飼育費用、骨癒合のX線学的・組織学的・遺伝子学的・機能的評価といった様々な過程において消耗品の購入費用、測定委託費用が必要でこれらに供する予定である。具体的には、実験動物に加え、試薬類、X線学的評価必要物品(X線撮影費、micro CT撮影費)、組織学的評価必要物品(免疫染色用抗体など)、Real time PCR必要物品などである。骨強度の測定は業者に委託して行うため、その費用に充てる。これら研究の成果を公表するにあたり国内のみならず海外の学会に参加し発表するため、旅費、宿泊費、論文投稿料、ポスター印刷代などにも充てる予定である。なお、次年度への繰越金が発生したが、これは次年度請求額と合わせて消耗品の購入等に充てる予定である。
|
Research Products
(3 results)