2012 Fiscal Year Research-status Report
Parathyroid hormoneの難治性骨折・骨癒合不全治療への応用
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23791641
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
新倉 隆宏 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40448171)
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Keywords | 骨折治療 / 難治性骨折 / 骨癒合不全 / 骨癒合促進 |
Research Abstract |
「ヒト骨折血腫細胞の骨・軟骨分化誘導に及ぼすPTH (1-34)の作用の生物学的検討」において研究成果を得た。すなわち、ヒト骨折血腫細胞培養系において、PTH (1-34)は細胞増殖に有意な影響を与えなかった。骨分化誘導培養条件下においては、PTH (1-34)の連続投与では骨分化に有意な影響を与えなかったが、間欠的投与においては、骨分化を有意に抑制することが明らかとなった。また、軟骨分化誘導培養条件下においては、PTH (1-34)の投与が軟骨分化を有意に抑制することが明らかとなった。このことから、PTH (1-34)は骨折部局所に形成される血腫中の細胞には、骨折治癒に促進的な作用は及ぼさないと考えられた。つまり、骨折治癒促進作用を期待したPTH (1-34)投与においては、骨折部局所への投与では骨折部周囲の別の細胞群には骨軟骨分化に促進的な作用を及ぼす可能性はあるものの、逆に抑制的な作用を及ぼす可能性が示唆された。ただし、全身投与においては、骨折部局所の細胞にPTH (1-34)が直接的には作用しないので、骨折治癒に促進的な作用が局所投与よりも期待されると考察された。 「ラット難治性骨折モデルの骨癒合をPTH (1-34)が促進するかの検討(全身投与および局所投与)」においては、局所投与の実験を行った。ラット難治性骨折モデルは、大腿骨骨折を髄内釘固定した後、骨折部局所の骨膜を焼灼することで骨癒合が得られないようにした。PTH (1-34)を含ませたハイドロジェルを骨折部に外科的に埋め込み、骨折治癒促進作用があるかを検討した。これを行わない対象群では手術後8週間放置すると、骨癒合しない偽関節となった。PTH (1-34)局所投与においては、X線学的評価、組織学的評価、骨強度測定にて骨癒合は得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト骨折血腫細胞培養系におけるPTH (1-34)投与の効果は、増殖能に関して有意な作用を与えず、骨分化には有意作用なしあるいは抑制的に、軟骨分化に関しては抑制的に作用した。このことより、PTH (1-34)の骨折部への局所投与は、骨折部に存在する細胞群の一部には直接的に促進的な影響を与えないことが示唆され、骨折部の他の細胞・組織に働くことで生物学的作用が生じる可能性も考えられた。また、全身投与によってホルモンとしての作用を期待する方がよいことが示唆され、in vivoにおけるラット難治性骨折モデルへのPTH (1-34)投与の実験において、局所投与だけでなく全身投与も検討すべきであることが確認され、有用な情報となった。ただし偽関節細胞での実験において、骨折血腫細胞における結果と同様の傾向を得ているが、有意差は得られていないことがやや不満の残るところであった。この理由として偽関節は長期間骨折が治癒しない病態であり、その病巣から採取してきた偽関節細胞は、新鮮骨折から採取した骨折血腫細胞ほどの生物活性を有していないことを考察した。ラット難治性骨折モデルへのPTH (1-34)局所投与においては、in vitro実験の結果から考察した仮説の通り、難治性骨折の治癒は得られなかった。しかし、全身投与においては、PTH本来のホルモンとしての作用が期待できるため、骨折治癒促進効果が得られるとの仮説のもと、次年度の研究へと継続していく予定である。したがって、現在のところ、おおむね順調に進展していると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、in vivoでラット難治性骨折・骨癒合不全モデルを用いてPTH (1-34)が骨癒合を促進するかを検討する。ラット難治性骨折モデルにおいてはPTH (1-34)の全身性間欠投与を行い、骨癒合不全モデルにおいては全身性間欠投与および偽関節部局所投与を行い、その骨形成能を評価する。 ラット難治性骨折・骨癒合不全モデルは、大腿骨骨折を作成して髄内釘固定した後、骨折局所を切開・展開し、周囲軟部組織を剥離、骨膜を焼灼することで、骨折が治癒せず放置すると偽関節となるモデルである。このモデルを作成しすぐにPTH (1-34)を投与し、難治性骨折を治癒させることが出来るかを検討する。また、このモデルを手術後8週間放置すると確立された偽関節となる。これを治癒させることが出来るかも検討する。 この際実際の臨床応用を考慮に入れ投与方法による違いについても検討する。すなわち、全身投与と局所投与それぞれでの効果を検討する。PTH (1-34)の投与方法は、①皮下注射による全身性間欠投与、②骨折・偽関節部への局所投与を試す。 経時的に骨癒合を評価する。X線学的評価 (micro CTも含む)、組織学的評価、遺伝子学的評価(Real-time PCRで骨芽細胞関連マーカー)、骨強度測定(剛性、破断強度)による機能的評価を行う。 ラット難治性骨折・骨癒合不全モデルの骨癒合をPTH (1-34)が促進するかという研究課題において、もしある容量のPTH (1-34)が無効であれば、より高容量を投与する、あるいはPTH (1-34)単独のみならず骨形成蛋白 (BMPs)等との同時投与でその有効性を検討することも考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
動物の飼育費用、骨癒合のX線学的・組織学的・遺伝子学的・機能的評価といった様々な過程において消耗品の購入費用、測定委託費用が必要でこれらに供する予定である。具体的には、実験動物に加え、試薬類、X線学的評価必要物品(X線撮影費、microCT撮影費)、組織学的評価必要物品(免疫染色用抗体など)、Real time PCR必要物品などである。骨強度の測定は外部業者に委託して行うため、その費用に充てる。 これら研究の成果を公表するにあたり国内のみならず海外の学会に参加し発表するため、旅費、宿泊費、さらに論文投稿料、ポスター印刷代などにも充てる予定である。
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Research Products
(4 results)