2012 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄損傷に対する神経・血管特異的マイクロRNAを用いた新たな治療アプローチの開発
Project/Area Number |
23791646
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
亀井 直輔 広島大学, 病院(医), 病院助教 (70444685)
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Keywords | 再生医療 / 再生医学 / 神経科学 |
Research Abstract |
【目的】マイクロRNAの投与による脊髄再生治療開発を目指して本研究を行った。 【方法】マウスに胸髄損傷を作製した。まず予備実験として、損傷24時間後にmiR-124a、miR-126、miR-210をそれぞれ損傷部に注入し、経時的な運動機能評価を行い、miR-210の投与で運動機能が有意に改善することを確かめた。引き続いて、miR-210投与実験へと移行し、対照群には軟骨特異的なmiR-140や無機能siRNAを投与した。投与後に運動機能評価、電気生理学的評価、組織学的評価、遺伝子発現評価、タンパク発現評価を行った。 【結果】miR-140や無機能siRNAを投与した群と比べて、miR-210投与群では有意に運動機能が改善し、電気生理学的評価でも同様の結果であった。miR-210投与群では脊髄損傷部におけるmiR-210の発現が対照群に比べて投与直後から6日後まで有意に増加しており、in situ hybridizationで、miR-210投与群の脊髄組織のみにmiR-210が損傷部とその周囲に高発現していた。組織学的評価で、miR-210群ではCD31陽性血管を多く認め、損傷3日目にNestin陽性細胞数が多く、7,14日目にGFAP陰性かつF4/80陽性の領域が小さかった。遺伝子発現評価では、miR-210投与群で脊髄損傷部におけるSFRP4やPTP1Bが有意に抑制されており、ウエスタンブロッティングによるタンパク発現評価では、SFRP4やPTP1Bに加えてEphrin A3の発現も抑制されており、Wntシグナルの下流因子であるβカテニンの発現が増加していた。 【考察】miR210の投与は損傷脊髄における血管新生と脊髄の組織学的・機能的修復を促進し、その機序の一部としてWntシグナルの関与が示唆された。
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