2011 Fiscal Year Research-status Report
脊髄損傷後の炎症モニタリングおよび骨髄間葉系幹細胞を用いた救済戦略の構築
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23791665
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
佐藤 敦 昭和大学, 医学部, 助教 (10445596)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 / IL-1 / マイクログリア / 炎症応答 |
Research Abstract |
本年度は、脊髄損傷時のマイクログリア(MG)/マクロファージ(MΦ)活性化の変化、また炎症性サイトカインであるインターロイキン1(IL-1)の脊髄損傷やMG/MΦ活性化への干渉を中心に研究を行った。C57/BL6マウスの野生型、IL-1 KOを用いて脊髄切断による脊髄損傷モデルを作成し、経時的にオープンフィールドテストであるBasso Mouse Scale (BMS) を用いて運動機能を調べた。また、脊髄をアストロサイトのマーカーであるGFAPで免疫染色し、GFAP陽性細胞で囲まれる領域を損傷脊髄領域として画像解析ソフトで定量した。MG/MΦの分布はIba-1、F4/80などを用いて免疫組織化学的に評価した。さらに、経時的に損傷脊髄組織を採取、ホモジネートを作成し、MG/MΦの古典的、代替経路型活性化マーカーを測定した。IL-1 KOマウスは、野生型と比較し脊髄損傷面積が有意に減少し、損傷後3日から有意にBMSによる運動機能が回復した。野生型の脊髄内IL-1β、TNFαはともに損傷後1日に大きく上昇し、高値が持続した。しかし、IL-1 KOマウスのTNFαは損傷前と比べほとんど変化せず、野生型と比べ有意に低値だった。免疫組織学的にはIL-1βの多くが損傷脊髄内でIba-1陽性細胞と共染されMG/MΦの古典的活性化が認められた。一方、MG/MΦの代替経路活性化マーカーとされるYm1は、野生型では脊髄損傷後7、14日に上昇するが、IL-1 KOマウスでは上昇せず有意に低値であった。免疫組織学的には、Ym1は脊髄損傷部周囲に染色される、F4/80およびIGF-1陽性MG/MΦと共染された。以上の結果から、IL-1は、脊髄損傷後の炎症惹起および脊髄損傷に関与しているが、一方でIL-1は炎症終期に認められる修復応答に関わるMG/MΦ代替経路型活性にも関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究の目的は脊髄損傷後の新規診断方法の開発および新たな治療戦略の発展につながる基礎研究を行うことである。新規診断方法の開発は、マウス脊髄損傷モデルを用い脊髄の損傷状態と炎症状態の変化を比較することにより損傷から修復・再生治癒にいたる損傷状態の推移をマイクログリア/ マクロファージの活性化タイプの変化を指標にして明らかにする。当該年度の実績報告に示したように、申請者は、脊髄損傷後のマイクログリア/ マクロファージの活性化機構を明らかにしそれらに対する新しいIL-1の関与を示した。これらの結果を得る事ができ、研究は概ね順調に進展していると思われる。 次年度以降、中枢神経系よりマイクログリアの初代培養を確立し本年度認められたIL-1の作用がマイクログリアの応答を反映しているか調べる。さらに骨髄間葉系幹細胞を移植し、骨髄間葉系幹細胞が脊髄損傷抑制および再生促進に寄与するかを調べるとともにそのような修飾がマイクログリア/ マクロファージの活性化タイプに対しどのように連関するか調べる。
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Strategy for Future Research Activity |
当該研究の目的は脊髄損傷後の新規診断方法の開発および新たな治療戦略の発展につながる基礎研究をマイクログリア/ マクロファージの活性化に着目し、行うことである。昨年度の研究により申請者は脊髄損傷モデルの確立およびマイクログリア/ マクロファージの活性化を動物レベルで同定できた。今後は、成体マウス中枢神経系よりマイクログリアの初代培養を作成する。それらを用い動物レベルで認められたIL-1のマイクログリア/ マクロファージの古典的活性化および代替経路型活性化が細胞レベルでも再現されるのかを野生型およびIL-1 KOから得たマイクログリアの初代培養への炎症性および抗炎症性サイトカインの暴露により調べる。さらに近年、抗炎症作用や免疫調節作用が宝庫億されている骨髄由来間葉系幹細胞(hMSCs)を脊髄損傷マウスに移植しhMSCsのマイクログリア/ マクロファージへの修飾作用を調べる。細胞は脊髄損傷後1日目に最大50万個を脊髄損傷部位の一椎体尾側側に組織内投与する。そして運動機能および損傷組織領域の評価を最大2カ月間行う。さらにマイクログリア/ マクロファージの活性化を調べる。組織、運動、マイクログリア/マクロファージ活性化マーカーの評価は昨年度と同様に行う。つぎに、C57/BL6 scidマウスを用いて同様の検討を行う。BrdUを用いてBrdUおよび神経、アストロサイト、神経幹細胞、マイクログリア、オリゴデンドロサイトのマーカーと多重染色を行う。神経BDA-10,000(軸索内トレーサー; Invitrogen)を脳運動野に投与する。脊髄損傷部位付近のラベル蛍光色素を観察し、脊髄内増殖細胞を評価する。albumin-EGFP、CD31(血管内皮マーカー)およびCD13(新生血管マーカー)抗体を用いて損傷部位付近のラベル蛍光色素を観察し、血管新生の評価および脊髄血液関門を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
動物実験を中心に行っていくため実験動物、麻酔等の費用を通年を通して計上した。引き続き行う免疫組織学的解析、細胞培養やFACS分析のための抗体、ELISAキットの購入を行う。PCRアレイは新規代替経路型活性化マーカーの探索のために必須であり計上した。その他、immunoblottingの解析のための試薬、神経トレーサーおよび細胞培養を行うための試薬の購入が必要である。国内学会および国際学会に年1~2 回参加し、研究の成果発表および情報収集を行う。そのために旅費、学会参加費(その他)は必要である。また、論文投稿における論文校正および学会誌投稿料も成果の発信のために必須である。
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Research Products
(1 results)