2012 Fiscal Year Research-status Report
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23791666
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
小久保 舞美 東海大学, 医学部, 特定研究員 (40535209)
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Keywords | 関節軟骨修復再生 |
Research Abstract |
【目的】培養期間を短縮することを目標とし培養方法の検討を行う。 【方法】本学臨床研究審査委員会承認の下、患者同意のもと肩関節制動術の際時に得られたヒト関節軟骨細胞を単離後、滑膜細胞を1週間培養後採取した培地(20%FBS DMEM F12 1:1+アスコルビン酸(以下:AA)+抗生剤)に10%FBSを加えたコンディションメディウムで培養する群、通常培地(20%FBS DMEM F12 1:1+AA+抗生剤)で培養する群の2群を作製し、培養14日まで経時的に各々の軟骨細胞増殖度をMTT assayで計測した。また、初代培養時のAAの影響が示唆されたため、様々なAA濃度で初代軟骨細胞を培養し、プロテオグリカン量(以下PG量)をDMMB Assayを用いて測定し、real time PCR法を用いてCOL1、COL2等の軟骨形質維持に関する遺伝子発現を検討した。 【結果】コンディションメディウムでは若干増殖能が高い傾向にあったものの、有意な差が認められなかった。よって共培養することによって何らかの因子が軟骨細胞の増殖に寄与することが示唆された。また、AA添加実験では、培養初期からAAを加えているものはデッシュへの付着が少なく、その後細胞死する傾向が観察された。MTT Assayの結果からも有意な結果が得られた。PCRの結果 からは、インテグリンα10の値がAA濃度依存的に減少する傾向がみられた。 【考察】今回の結果から、滑膜細胞と共培養することが軟骨細胞の増殖、適した培養環境であることが推察された。また、初代軟骨細胞を培養する際、AAが何らかの影響を及ぼし、細胞死を引き起こす原因となることが示唆された。よって、初代軟骨細胞を培養する際は少なくとも軟骨細胞がデッシュに接着するまでAAを添加しないほうが良いという事が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回の研究の目的である、移植可能な組織の作製までに期間をより短縮する培養方法の検討において、コンディションメディウム、AA添加検討を行った。コンディションメディウムに関しては、メディウムだけでは有意な結果が得られなかった。そのため、細胞を共培養することによって、何らかの細胞増殖因子が細胞から培地中に放出されるのではないか。と推察された。次に影響が示唆されたAA添加実験においては、初代軟骨細胞の増殖能は濃度が高くなるほど低くなる傾向があり、LIVE/DEAD染色の結果からは、AA 0.56mM添加群では、死細胞率は51%と非添加群の13%に比べ、多くの細胞が播種後細胞死へと向かっていることがわかった。そのため、コンフルエントまでの時間は濃度依存的に長くなる傾向となった。しかしながら、培養4日目からAAを添加する0+0.14mM、0+0.28mM、0+0.56mM群に関しては非添加群と比べ、細胞外基質量の産生量、増殖能ともに有意な結果となった。これらの結果から、軟骨初代培養初期にはAAを添加せずに培養を行ってものちの細胞外基質の産生量を上げることができ、かつ、より短い期間で組織を作製することが可能であった。また、real-time PCRの結果からインテグリンα10の発現が濃度依存的に低くなるという結果が得られた。インテグリンα10は細胞接着、増殖に重要な因子であることから、初代軟骨細胞のインテグリンα10の発現をAAが阻害し、その結果軟骨細胞がディシュへ接着する能力が低下し、細胞死へとつながったのではないかと考察された。
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Strategy for Future Research Activity |
【目的】今年度までの結果より、軟骨細胞の培養環境に関する論文を作成投稿予定である。また、同じ関節内に存在し再生能にも優れ、MSCの存在も明らかになっている滑膜細胞の使用に関しても検討を行い、採取される軟骨組織の量をより減らし、短期間で移植可能な軟骨組織に近い組織の作製することが可能か、比較検討する。 【方法】滑膜細胞、軟骨細胞でそれぞれシートを作製し、積層化する。積層化の方法を軟骨細胞シートのみを積層化するもの、軟骨細胞シートと、滑膜細胞シートを混合して積層化するもの、滑膜細胞シートのみを積層化するもまた、初めから軟骨細胞と滑膜細胞をいくつかの割合で混合したもので軟骨細胞シートを作製し、積層化したものを一定期間培養し、それぞれの積層化細胞シートのプロパティをreal-time PCR、DMMB Assayを用いて比較検討を行う。一定期間培養する際、分化誘導培地を用いるもの、通常培地を用いて培養するものも同時に比較検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究成果の報告を国内外の学会で報告する予定である。そのため、準備費、旅費、参加費が発生する。 また、これまでの成果をもとに論文を作成、投稿予定であり、校正、投稿のための費用が予定される。 実験は培養を中心に行う予定である。培養に関する、培地、抗体、窒素や二酸化炭素等のボンベの購入が予定される。
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Research Products
(1 results)