2012 Fiscal Year Research-status Report
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23791668
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
前田 和洋 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (50548849)
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Keywords | Wntシグナル / 転移性骨腫瘍 |
Research Abstract |
骨組織は生涯を通して形成と吸収が行われ、そのバランスを保つことで骨量が維持される。骨吸収を担う破骨細胞(OC)はマクロファージ由来の細胞である。骨形成を担う骨芽細胞(OB)に、骨吸収促進因子が作用するとOC分化因子RANKLが発現する。マクロファージには受容体RANKが発現しており、マクロファージはOB膜上のRANKLを認識し、OCへと分化する。一方、OBはOC分化抑制因子であるオステオプロテゲリン(OPG)も発現し、骨量維持の恒常性を保っている。これまで本申請者は、受容体型チロシンキナーゼRor2によって活性化されるWnt非古典経路が、マクロファージ上のRANKの発現を亢進することによって、破骨細胞分化を促進することを発見した。さらに、それを阻害することで新規骨代謝改善薬の可能性を報告してきた。一方、腫瘍細胞におけるRANKの発現は腫瘍の骨転移を促進するとの報告がある。 以上の背景より、平成24年度は骨に親和性のある株化癌細胞を用い実験を行った。実験には、当教室所蔵の乳癌、肺癌細胞株を用いた。細胞を10cm dishに培養したのち、Trizolで処理し、total RNAを回収した。これらを、鋳型に逆転写反応を行いcDNAを作製した。Primer3 (http://frodo.wi.mit.edu/)にて、RANK、RANKL、OPGおよび各種WntリガンドのリアルタイムPCR用のプライマーを設計し、リアルタイムPCRを行い、これらの分子の定量を行った。しかし、当教室所蔵の細胞株ではRANKの発現は予想より高くなかった。 上記の実験と並行して、ヒトWNT5A、ROR2の過剰発現実験用にウイルスベクターの構築を行った。現在、上記2分子のクローンを購入し、制限酵素処理を行い、ウイルスベクターを作製しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2012年度は、当研究室所蔵の細胞株を用い、骨転移惹起因子の発現を解析し第28回日本整形外科学会基礎学術集会で発表する予定であった。しかしながら、当研究室所蔵の細胞株は骨転移惹起因子の発現が極めて低く、計画した実験に利用するのが困難であることが判明した。2013年度は、新たに細胞株を購入し引き続き当初の仮説を実証していきたい。未使用額は、それらの経費に充てることとしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
①先行論文で使用されていた細胞株を新規に購入し実験を行う: 先行論文では、乳癌細胞はMDA-MB-231、Hs578T、前立腺癌細胞PC3、LNCaPが用いられている。これらの細胞株を、購入または譲渡により取得し、リアルタイムPCR法を用い骨転移惹起関連分子の定量を試みる。 ②カスタムメイドのプライマーを用いる: 平成24年度の実験において、自作のプライマーを用いポジティブコントロールで目的遺伝子の発現は認めている。しかし、上記①の細胞株を用い骨転移惹起因子の発現が低い場合、新たにプライマーを購入して実験を行うことも考慮する。 ③ヒトWNT5A、ROR2過剰発現用ウイルスベクターの作製: 平成24年度に引き続き、平成25年度も引き続きベクターの作製を行い、①の実験で予想された結果が得られ次第、速やかに過剰発現実験に移行できるように準備を進める予定である。腫瘍細胞においてWnt5aにより、Wnt非古典経路が活性化されると骨転移惹起因子であるRANKの発現が亢進するかどうかを検討する。 ④腫瘍細胞に発現するWnt5aの増減により骨芽細胞への遊走能が変化するかを検討する: 腫瘍細胞に発現するWnt5aの増減により、骨芽細胞への遊走能が変化するかを検討するために、以下の実験を行う。ボイデンチャンバーを用い、下層にヒト骨芽細胞様細胞を培養(骨肉腫細胞株を使用)し、上層にはWnt5aを過剰発現させた腫瘍細胞を培養する。過剰発現に用いるベクターは、IRES-eGFPが組み込まれたものを使用の予定である。よって、下層のGFP陽性細胞の数を計測する事により、腫瘍細胞の骨芽細胞への遊走能が変化したかどうかの解析が可能となり、Wnt5aによるWnt非古典経路の活性化が腫瘍細胞の骨転移に関与するかどうかを検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
①先行論文で使用されていた細胞株を新規に購入し実験を行う: 学内他科で前述の細胞株を所有している研究者がいる場合は譲渡により取得する。該当する研究者がいない場合は細胞バンクより購入する。次年度研究費は細胞株購入に充当する。 ②カスタムメイドのプライマーを用いる: 前述①の実験を行い予想した結果が得られない場合は、プライマーを新たに業者より購入(http://www.takara-bio.co.jp/prt/intro.htm)し、実験を継続する。プライマー購入代金に充当予定である。 ③ヒトWNT5A、ROR2過剰発現用ウイルスベクターの作製: 当初、先行実験で用いたウイルスベクターを今回の実験でも使用する予定であった。しかし、先行実験で用いたパッケージング細胞はエコトロピックであり、ヒト細胞株には感染しないことが判明した。そこで、新規にベクターの作製を行っている。ウイルスベクターはレトロウィルスまたはレンチウイルスを用いる予定であり、研究費はパッケージング細胞やシステムの購入に当てる予定である。ヒトWNT5A、ROR2のクローンは、平成24年度にすでに購入済みである。 ④腫瘍細胞に発現するWnt5aの増減により骨芽細胞への遊走能が変化するかを検討する: 遊走能が変化するかどうかの検討を行うため、ボイデンチャンバーを購入し培養実験を行う予定である。ヒト骨芽細胞様細胞(骨肉腫細胞株)は、SaOS2とMG63をすでに取得済みである。 具体的な研究費の利用計画は以下のとおりである(単位千円)。細胞培養用試薬・細胞400 プラスチック製品180 分子生物学的試薬400 合計980
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Research Products
(3 results)