2011 Fiscal Year Research-status Report
急性・慢性関節炎におけるバゾプレッシンの生理的役割解明:遺伝子改変動物を用いて
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23791671
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
石倉 透 産業医科大学, 医学部, 助教 (70580281)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 遺伝子改変動物 / c-fos遺伝子 / 蛍光タンパク / バゾプレッシン / 疼痛 |
Research Abstract |
遺伝子改変動物(c-fos-mRFPトランスジェニックラット)および野生型ラットを用いて、急性疼痛ストレス負荷をかけ、mRFP蛍光の発現と免疫組織化学的染色法によるFosタンパクの発現を脊髄および視床下部で比較した。さらに、これらを経時的変化で比較検討した。今回得られた結果は以下の通りである。 急性疼痛ストレスとして5%ホルマリン液をc-fos-mRFPトランスジェニックラットならびに野生型ラットの両側後肢に皮下注射すると、下肢からの疼痛刺激を受容する第4腰髄レベルの脊髄後角ならびに視床下部室傍核において、定量性のあるmRFP蛍光およびFosタンパクの発現を認めた。さらに、これらを経時変化で比較すると(1)mRFP蛍光が脊髄後角第I、II層において、注射後90分から6時間まで増強していることを認めた。一方、Fosタンパクは、注射後90分から3時間まで、増加を認めた。さらに、脊髄後角におけるmRFP蛍光はFosタンパクより約3倍多く発現しており、疼痛刺激に鋭敏に反応していることが明らかになった。(2)室傍核ではmRFP蛍光は注射後3時間をピークに90分から6時間にかけて増強していた。一方、免疫組織化学的染色法によるFosタンパクは、注射後90分に発現が最も増加し、6時間後まで発現の増加を認めた。 以上の結果から、急性疼痛ストレスを負荷されたc-fos-mRFPトランスジェニックラットで、ニューロンの活動性の指標として汎用されるc-fos遺伝子産物であるFosタンパクの発現動態が、mRFP蛍光で可視化されていることが明らかになった。Fosタンパク発現の有無を確認するには免疫組織化学的染色法を必要としていたが、c-fos-mRFPトランスジェニックラットを使用することで簡便に、さらに、c-fos遺伝子の発現を鋭敏で長時間持続する赤色蛍光として検出することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画1年次においては、c-fos-mRFPトランスジェニックラットに急性疼痛ストレスを負荷し、mRFP蛍光の発現の経時的変化を免疫組織化学的染色法によるFosタンパクの発現の経時変化と比較検討を行った。今回の実験で、疼痛ストレスに対するc-fos-mRFPの発現は定量性があり、免疫組織化学的染色法によるFosタンパクと比べ、鋭敏であり、さらに長時間持続するという特性があることを見いだした。以上より、c-fos-mRFPトランスジェニックラットに対する急性疼痛ストレス後のFosタンパクの発現動態をmRFP蛍光を指標に評価する手法を確立したことから、計画2年次においては、アジュバント関節炎(AA)などの慢性疼痛・炎症モデルや脛骨骨幹部骨折などの外傷モデルなど、さまざまな動物モデルを作成し、中枢神経系における神経内分泌反応をmRFP蛍光を指標に容易に観察、評価することが可能となった。 また、計画1年次において、本研究の成果を、日本内分泌学会、日本リウマチ学会、世界整形外科学会などの国内学会や国際学会に積極的に発表し、国内外にアピールしてきた。 以上より、「研究の目的」の達成度については、「おおむね順調に進展している」と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
計画2年次においては、上述のc-fos-mRFPトランスジェニックラットに加え、アルギニンバゾプレッシン(AVP)遺伝子にeGFP遺伝子を導入したAVP-eGFPトランスジェニックラットを用い、慢性疼痛・炎症モデルとしてAAや、外傷モデルとして脛骨骨幹部骨折などを作成し、同様に視床下部神経核、脊髄後角およびDRGニューロンにおけるAVP-eGFP蛍光、c-fos-mRFP蛍光の変化を観察し、in situ ハイブリダイゼーション法を用いて定量評価し、疼痛受容と神経内分泌反応に関する分子基盤について考察する予定である。さらに、後根神経節ニューロンの単離・培養を試み、生細胞の状態でリアルタイムにその生理学的性質を検討する。 本研究の成果は、日本整形外科学会、日本リウマチ学会、世界整形外科学会などの国内学会や国際学会に積極的に発表し、最終的には国際専門雑誌に英文論文として発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費については、交配のための実験動物(ラット)の購入と上記2種類のトランスジェニックラットの飼育に必要な経費を使用する。 主に使用する試薬類は、抗体を含む免疫組織化学的染色用試薬、in situ ハイブリダイゼーション用試薬等、であり、これらの購入に研究費を使用予定である。また、in situ ハイブリダイゼーション法に使用するラジオアイソトープ(35S)に必要な経費を研究費から使用する。 本研究の成果は随時、日本整形外科学会、日本リウマチ学会、世界整形外科学会などの国内学会や国際学会に積極的に発表し、国際専門雑誌に英文論文として発表する予定である。これらに必要な経費を使用する。
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Research Products
(6 results)