2011 Fiscal Year Research-status Report
脊髄損傷後のニューロン細胞内PTEN/mTORシグナル制御による軸索再生
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23791677
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Research Institution | National Hospital Organization Murayama Medical Center |
Principal Investigator |
金子 慎二郎 独立行政法人国立病院機構村山医療センター(臨床研究センター), 整形外科, 医長 (10327554)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 |
Research Abstract |
脊髄損傷(SCI)後に運動機能などの回復が乏しい主原因として、中枢神経では損傷後の軸索再生が乏しい事が挙げられる。その一因として、損傷部の軸索再生阻害因子の存在が指摘されて来たが、我々はその一つであるSemaphorin3Aに着目して研究を行って来た。先行研究で我々は、osmotic mini pump(OMP)を用いてSemaphorin3A阻害剤(SI)を完全脊髄切断モデルラットの損傷部に投与する事により運動麻痺の改善促進効果等が得られる事を見出した。実際の臨床では、OMPを用いてSCIの患者に薬剤投与する事には様々な問題を伴う為、新規drug delivery system(DDS)を開発し、本DDSによるSIの薬効に関して検討した。先行研究でSIの投与効果が限られたものであった理由の一つとして、再生軸索が適切にrewiringされていなかった可能性が考えられるが、我々が開発したrobotic armを用いた新規訓練法によるtreadmill訓練(RH)を併用する事で、運動麻痺の改善等の更なる促進効果が得られるか検討した。新規に開発したシリコンシート状製剤を用いてSIの投与を行った。SI単独群、併用(SI+RH)群、対照群の3群に関して評価を行った。本DDSによって、先行研究と同様にSI投与による5HT陽性軸索などの軸索再生促進効果が得られた。併用群ではSI投与によって得られた軸索再生の更なる促進は認められなかったが、c-Fosに対する染色結果などから、併用群では腰膨大部尾側脊髄回路(CPG)の再構築などが促進されていた可能性が示唆された。kinematic studyで併用群では、SI単独群に比して足関節のextensorなどの運動機能の更なる改善促進傾向が認められ、他群で認められなかった(体重を支えた条件下での)plantar step歩行が可能となっていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画しているPTEN/mTORシグナルを制御する薬剤の入手やスクリーニングに関しては、特許等の問題もあって時間を要しており、上記の関連実験を先行して行った。即ち、新規に開発したシリコンシート状製剤を用いてSemaphorin3A阻害剤(SI)の投与を行った。SI単独群、併用(SI+RH)群、対照群の3群に関して軸索再生促進効果等に関する評価として組織学的解析を行い、また運動機能の詳細な解析としてRodent Robot 3000を用いたkinematic studyを行った。実験を行った結果、本DDSによって、先行研究と同様にSI投与による5HT陽性軸索等の軸索再生促進効果が得られた。併用群では、SI投与によって得られた軸索再生の更なる促進は認められなかったが、c-Fosに対する染色結果等から、併用群では腰膨大部尾側脊髄回路(CPG)の再構築等が促進されていた可能性が示唆された。kinematic studyで併用群では、SI単独群に比して足関節のextensor等の運動機能の更なる改善促進傾向が認められ、他群で認められなかった(体重を支えた条件下での)plantar step歩行が可能となっていた。軸索再生の促進はSCI後の治療戦略として重要であるが、それと同等に、再生した軸索のrewiringを狙った治療戦略も重要であり、本研究の結果から、損傷後早期の適切なリハビリテーションの併用が再生軸索のrewiring促進効果を有する可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
脊髄損傷に対する治療としては、脊髄において脳からの信号を伝える伝導路となる軸索を損傷後に再生させること、及び軸索を損傷から保護する事が臨床的に有意義な効果を発揮する可能性は極めて高い。そこで、切断された軸索の再生という点に焦点を当てて、PTEN/mTORのシグナル伝達系をコントロールする薬剤をスクリーニングし、その薬剤を、より臨床に近い脊髄損傷モデルである脊髄contusion modelに投与し、その有効性を検討する実験を行う。また同時に、脊髄軸索の再生の機会をより増幅させる、或いは脊髄損傷後の炎症細胞の浸潤による二次損傷を最小限にする意味も兼ねて、(我々のこれまでの実験結果から軸索を変性から保護する効果と炎症細胞の浸潤を予防する効果を併せ持つ事がわかっている)NicotinamideをPTEN/mTORのシグナル伝達系をコントロールする薬剤と併用する事によって効果の増幅があるかどうかを検討する。動物モデルとしては、マウス及びラットの脊髄contusion損傷モデルを用いる。脊髄contusion損傷モデルを作製する際にはIH impactorを用いる。osmotic mini pump等を用いてこれらのモデル動物に薬剤を投与し、運動機能評価や組織学的評価を経時的に行う。また、これまでの研究結果から、損傷後早期の適切なリハビリテーションの併用が再生軸索のrewiring促進効果を有する可能性が示唆されている為、上記の治療とリハビリテーションの併用についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
手術時に用いる器械/材料一式(osmotic mini pump等)の購入費、動物の購入費(マウス、ラット)、 組織学的解析に関わる費用(スライドグラス等の消耗品の購入費や共焦点顕微鏡の維持・使用費を含む)、 マイクロアレイ等を用いたスクリーニングに関する費用、 電気生理学的解析に関わる費用、 Western blottingやRT-PCR等に関わる費用(reagent等の消耗品の購入費を含む)、動物の飼育・管理費、学会や共同研究者との打ち合わせ等に伴う出張費、論文の出版に関わる費用等を予定している。
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