2011 Fiscal Year Research-status Report
3次元マトリックスの硬さが幹細胞による軟骨細胞の分化に及ぼす影響
Project/Area Number |
23791678
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute |
Principal Investigator |
大藪 淑美 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, その他部局等, 研究員 (80587410)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 三次元 / 硬さ制御 / 分化制御 / ゼラチン / 幹細胞 |
Research Abstract |
本研究では硬さ制御可能な3次元培養用人工細胞外マトリックスを開発し、幹細胞の軟骨細胞への分化における3次元足場の硬さの影響を明らかにする。近年、細胞分化とその足場の硬さの関係が明らかにされたが、いずれも2次元培養での研究成果である。従来の 3次元では硬さを制御できなかったが、コラーゲンと化学的に等価であるゼラチンの融点を高める新技術を開発して3次元包埋培養を実現し、その濃度により硬さを制御する。3次元環境が分化誘導が必須である軟骨組織の再生において3次元の硬さが幹細胞の分化に与える影響を解明する。以下、具体的内容である。1、培養環境(37℃)で融解しない高融点ゼラチンを合成し、細胞の3次元包埋培養を実現する。ゼラチンの高融点化は次の3つの方法を段階的に実施して達成する。(1)ゼラチンの原料に酸可溶性コラーゲンを用いて24℃から30℃に高める。(2)ゼラチンの3成分(α鎖、β鎖、γ鎖)のうち、らせん回復力の高いγ鎖を単離して30℃から34℃に高める。(3)Gly-X-Yのα鎖アミノ酸配列のYの位置のプロリンをヒドロキシル化して34℃から42℃に高める。 当該年度では高融点化技術の3つの要素技術のうち(1)でゲル化濃度(1%)の融点28℃のゼラチンを作製した。ただし、血清を含む培養液とゲル化する場合にゼラチン濃度は2%以上を必要とした。30℃、72時間、5%炭酸ガス下で細胞を3次元包埋培養すると生存率は79.4±8.3%であった。2、1の培養材料の硬さを制御して3次元包埋培養の実験系を構築する。高融点ゼラチンの硬さ制御を濃度により行う。幹細胞から軟骨細胞に分化する培養条件の実験系を構築する。 当該年度では中性ゼラチン溶液では濃縮が困難であったため、酸性溶液を使用することで10%以上の濃縮が可能となった。それに伴い、酸性ゼラチン溶液を用いた包埋条件を再検討して方法を確立した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度開始時に実験拠点を移設完了している予定であったが、震災の影響で一時的に実験拠点を別に設けて後期に本来の実験拠点に移設を行ったために、2回の移設作業により実験を中断した。したがって、当初の計画よりもやや遅れた状態となった。 達成率は、具体的内容1では60%、2では50%である。
|
Strategy for Future Research Activity |
1、培養環境(37℃)で3次元で硬さが制御できる培養材料を合成する。既に基礎データや準備が整っているため、残り2つの要素技術を段階的に実施して37℃以上の高融点ゼラチンを合成する。 2、1の培養材料を用いて軟骨分化の3次元包埋培養の実験系を構築する。iPS細胞あるいは間葉系幹細胞から軟骨細胞に分化する三次元包埋培養方法を確立する。 3、3次元細胞外マトリックスの硬さが幹細胞から軟骨細胞への分化に及ぼす影響を明らかにして詳細を検討する。幹細胞が軟骨細胞に分化を最も促進するゼラチンの硬さを見出す。また、異なる硬さにより分化培養した細胞を比較して、硬さが分化に影響する遺伝子をDNAアレイ解析により特定し、この因子の特定により軟骨分化と足場の硬さに密接な関係があることを明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・部品費(高融点ゼラチン原料や合成試薬、細胞や培養試薬、解析試薬)700万円・旅費(日本組織培養学会とバイオマテリアル学会) 100千円・その他(DNAアレイ外注費、学会参加費、英文校正) 500千円
|