2012 Fiscal Year Research-status Report
麻酔プレコンディショニングがミトコンドリアイオンチャネルに与える影響
Project/Area Number |
23791681
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
丹保 亜希仁 旭川医科大学, 医学部, 助教 (80531524)
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Keywords | 周術期管理学 / ミトコンドリア / イオンチャネル / マイトプラスト |
Research Abstract |
ミトコンドリア内膜上のイオンチャネルの活動を研究するためにラットの心筋から得たミトコンドリアからマイトプラストを作製した。十分な麻酔下にラットの心臓を摘出し、マンニトール-スクロース溶液内にて心室筋を細かく刻みホモジェナイズした。その後、低速(2000rpm)および高速(9000rpm)で遠心分離(4℃)を行い、ミトコンドリアを単離し、MS溶液中にて氷上で保存した。この方法で得られた分画がミトコンドリアであることは、蛍光色素(マイトトラッカー)で標識し、蛍光顕微鏡下で確認し、生理学的活性は酸素消費量の測定により正常であることを確認した。 マイトプラストは上記の方法によって得られたミトコンドリアからOsmotic Shockを利用して作製、浮遊液を低浸透圧溶液中に入れ5分間のOsmotic Shockを与えた後遠心分離を行い(4℃)マイトプラストを抽出した。得られたマイトプラストは高浸透圧溶液中にて氷上で保存し、パッチクランプ法による生理学的研究に用いた。パッチクランプに用いたガラス電極は水平牽引型の電極作製器を使用し、抵抗はチャネル電流記録用の溶液中にて15-20MΩとなるように調整した。電極内、記録チャンバー内ともに等浸透圧溶液を用い、記録はcell-attached mode及びinside-out modeにて行った。 心筋の虚血/再灌流障害を引き起こす機序として、カルシウムイオンの細胞内での増加(カルシウムオーバーロード)は非常に重要である。細胞外からのカルシウムの取り込みにより賦活されるリアノジンレセプターの役割はこの現象に関与している。150mMのCsClを電極内、記録チャンバー内に使用し電流を記録したところ数種類のコンダクタンスの電流が記録された。これらの中にミトコンドリアのリアノジンレセプターが含まれている可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ミトコンドリアの分野はよく研究されているが、電気生理学はよくわかっていない。また、脂質二重膜やリポソームを用いて人工的に発現させたチャネルについての研究がほとんどである。マイトプラストを用いることで、より生理的なチャネルの特徴を観察できる可能性がある。しかし、cell-attached mode及びinside-out modeを用いるために、電極がミトコンドリアチャネルが存在する部位に接触できる可能性が低い。また、whole-cell clamp modeを用いた場合にはパッチ膜を破る際にギガシールが損なわれてしまう。ZAPを用いても同様である。これらの点が問題となっている。しかし、近年の研究の主流がミトコンドリアの機能になっていることから、同じくパッチクランプ法を用いて別のチャネルを解析することも考慮されるべきである。
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Strategy for Future Research Activity |
カルシウムオーバーロードの機序として、これに先行するナトリウムオーバーロードの関与が言われている。近年、虚血/再灌流障害を起こす最終段階であるミトコンドリアの研究が多い中で、ナトリウムオーバーロードの関連性についての重要性が高まると考えられる。 虚血/再灌流障害の起こった心筋から分離した心筋細胞では、ナトリウムチャネル電流が抑制されることはよく知られている。しかし、この事実とナトリウムオーバーロードの関連性は不明である。心筋細胞ナトリウムチャネル、ナトリウム/カルシウム交換系などの細胞内ナトリウム調節系と、カルシウムオーバーロード、さらに細胞死までのエピソードについての研究は虚血/再灌流障害、それを抑制する麻酔プレコンディショニングの分野で興味深いと考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
虚血/再灌流障害と麻酔プレコンディショニングの関連を、ミトコンドリアイオンチャネル、心筋細胞ナトリウムチャネルといった、ナトリウム/カルシウムオーバーロードに大きく関与するファクターから観察する。 プレリミナリーデータとして、ナトリウムチャネルは麻酔薬によって通常の製紙膜電位の場合は抑制されるが、静止膜電位を深くすることでその効果がなくなることが分かっている。また、麻酔プレコンディショニングによりナトリウムチャネル電流が大きくなることが確認された。この現象と、虚血/再灌流障害の関連についても観察する必要がある。
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