2011 Fiscal Year Research-status Report
マウス心停止モデルを用いた心肺蘇生後の硫化水素による人工冬眠療法の臓器保護効果
Project/Area Number |
23791683
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中山 慎 筑波大学, 医学医療系, 講師 (60596443)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 心肺蘇生 / 硫化水素 |
Research Abstract |
目的: 心肺停止蘇生後の治療には、低体温療法が唯一有効性を認められている。硫化水素は可逆的な低代謝状態を作り出し虚血/再灌流障害を軽減する可能性が示唆されている。本研究は心肺停止蘇生後の体温を一定に保ち、硫化水素投与による保護作用が低体温自体なのか、そうでないかを検証する。マウス心肺停止モデルの確立: ある程度の脳障害を引き起こし、且つ長期生存率を目指すというモデルの確立に難渋した。心停止中の体温管理、数種類の麻酔薬の組みあわせを試した。麻酔薬の種類によって生存率、脳障害の程度に差があった。常温の8分間心停止では脳障害の割合が低いため、加温コイルを用いて頭部のみを加温した。10分間の心停止では生存率が50%と以下と低かったため、8分間で実験を行った。硫化水素の最適投与量の検討: 過去の報告に倣い心停止誘発1分前に硫化水素ドナーである水硫化ナトリウム(NaHS)を0.5mg/kgを経静脈的に投与した。ペントバルビタール25mg/kg腹腔投与とセボフルラン2%で全身麻酔を行い側頭筋内に温度測定プローベを挿入、心電図、直腸温計を装着した。加温コイルで頭部を38.5℃まで加温した後、中心静脈から塩化カリウムを注入し心停止を誘発した。心停止8分後から、エピネフリン 16μg/ mlの投与、300回/分の心臓マッサージを開始し蘇生を行った。4日後に評価を行った。生存率は66%と対照群と同等であったが、脳障害の程度(有意に脳出血の頻度が高い)や神経学的所見が対照群より悪いため、投与量を0.3mg/kgに減じて実験を継続中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
心肺停止による全脳虚血で、ある程度の脳障害を引き起こし、かつ長期生存率の維持という相反する実験系の確立に手間取った。吸入麻酔薬セボフルレン単独による全身麻酔ではセボフルランによる脳保護作用のためか脳障害が5%程度と軽度であったため、静脈麻酔薬のケタミンを使用したところ4日後の生存率が0%であった。次にセボフルランの濃度を下げるべく麻薬鎮痛薬フェンタニル50μg/kgの腹腔投与を併用した。この麻酔法では1週間生存率が67%と高かったが、脳障害(海馬)の程度は10%以下と低かった。脳障害の程度を高めるために心停止中に頭部のみを加温コイルで38.5℃まで加温し、麻酔方法は前述のセボフルランとフェンタニルの併用で行い、4日後の評価を行った。生存率は62%であり、脳障害の程度(海馬領域3切片における死滅細胞数/全細胞数)は35±37%とばらつきが大きかった。次にペントバルビタールをセボフルランと併用して全身麻酔を行い海馬領域にある程度の障害を認めたので、この麻酔方法で硫化水素の実験を開始した。
|
Strategy for Future Research Activity |
ペントバルビタールとセボフルランを併用して全身麻酔を行う。脳障害モデルでは脳障害を引き起こさせるために、頭部加温コイルにより心停止中の頭部温を38.5℃に維持、一方体温は臓器障害予防、脊髄虚血による対麻痺予防のために32~33℃まで冷却する。全身臓器障害モデルでは心停止中に全身体温を34℃前後の軽度低体温とし、より生理的条件に近づける。水硫化ナトリウムの最適投与量を探す。蘇生後の体温推移を記録し、一定に保つように努める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
蘇生後の体温保持システムの構築。保温マット、ランプや温度コントローラー。実験用マウスの購入と試薬の購入
|