2013 Fiscal Year Annual Research Report
マウス心停止モデルを用いた心肺蘇生後の硫化水素による人工冬眠療法の臓器保護効果
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23791683
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中山 慎 筑波大学, 医学医療系, 講師 (60596443)
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Keywords | 心肺蘇生 / 硫化水素 / 低体温 |
Research Abstract |
マウスに8分間の心停止実験を行い、蘇生30分後に水流化ナトリウム(NaHS) 3mg/kgを腹腔内投与し、生理食塩水(NS)投与群と比較した。NaHS投与後の血圧の変化はNS群と差はなかった。心拍数はNaHS投与群でNS群と比較して約2割程度減少した。蘇生後の体温を室温(26℃)に放置すると蘇生1時間後より両群で体温が低下し始め、NaHS群で30℃前後とNS群より有意に体温低下が認められNS群より約2℃低い状態が6時間続いた。NaHS投与後の血圧の変化はNS群と差はなかった。心拍数はNaHS投与群でNS群と比較して約2割程度減少した。蘇生1時間後の血液ガス分析では動脈血酸素分圧がNaHS群で有意に低かった(NaHS: 175mmHg vs NS: 275mmHg)。NaHS投与による低体温作用による保護効果と心拍数低下作用が酸素需給バランスを改善し蘇生後の短期予後を改善させると期待したが、蘇生1日後の生存率や神経行動評価は両群で差はなく、脳の海馬と線条体における組織障害も同等であった。TNF-α値も有意差がなかった。 蘇生後に低体温になる脳保護作用を除外するために蘇生後から6時間強制加温し体温を35℃以上に保つ実験を行った。蘇生4日後の生存率は両群で同等であり、海馬の組織障害も差はなかった。線条体ではNaHS群で有意に少なかった(NaHS: 22±7% vs NS: 35±22%)。 蘇生4日後では海馬における遅発神経細胞死を観察できなかった可能性があり12日後の長期観察を行った。蘇生12日後の生存率はNaHS群75%でNS群52%であった。海馬の傷害は12日後でも両群で20%前後と差はなく、線条体ではNaHS群で有意に障害が少なかった(NaHS: 23±5% vs NS: 39±22%)。神経行動評価では両群に差はなかった。 【結論】マウス心肺停止・蘇生モデルにおいてNaHSの3mg/kgの腹腔内投与は蘇生後の体温を一定に保った場合においても、脳の線条体における組織障害を軽減した。脳内の温度は測定できなかったが、線条体は高温で障害を引き起こしやすい可能性がある。
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Research Products
(2 results)