2011 Fiscal Year Research-status Report
インビボパッチクランプ法による大脳皮質体性感覚野への麻酔薬作用機序の解明
Project/Area Number |
23791710
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
塩川 浩輝 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30572490)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | インビボパッチクランプ記録 / 大脳皮質 / 第一次体性感覚野 |
Research Abstract |
科研費を2年間という短期間で効率的かつ有意義に使用するため、他の実験で共同研究を行っている熊本保健科学大学に依頼し既存の実験セットを使用させていただき、大脳皮質第一次体性感覚野からのパッチクランプ記録法手技の可及的速やかな習得を目指しつつ、当大学の研究室における環境整備、実験機器の購入、実験セットの立ち上げに専念した。研究者は大学院時代の研究の経験があり、大脳皮質第一次体性感覚野からのインビボパッチクランプ記録そのものは比較的容易に施行可能である事が確認された。予備実験ではウレタンによる麻酔下で実験データを取得し、さらに無麻酔でのパッチクランプ記録を行う計画であったが、倫理上問題点が多く、また、近年報告された研究によるとラットの鎮静に使用しているウレタンは鎮痛に及ぼす効果はほとんどないことが明らかとなったため、ウレタン麻酔下で実験を継続する事とした。ウレタンの腹腔内投与下においても各種麻酔薬の鎮痛効果の有無は評価可能と考えられる。ラットへの苦痛を最小限にするため、大脳皮質の露出部位は極力狭くし、皮膚切開部位へは十分な局所麻酔を施すよう留意した。予算の関係上吸入麻酔用の気化器の購入は困難であるため、静脈麻酔薬のみ実験に使用することとした。現在着実に追加データが集まりつつあり、静脈麻酔薬であるプロポフォールの実験結果をまとめ、平成24年6月に行われるヨーロッパ麻酔科学会において発表予定である。また、ペントバルビタールにおけるデータも十分に揃いつつあり、米国麻酔科学会に演題を応募しているところでもある。これらの静脈麻酔薬は臨床使用される濃度では鎮痛効果はないとされるが、興味深いことに、鎮痛効果を有している可能性が本研究を通して明らかになろうとしている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究室にて実験セットを立ち上げ、パッチクランプ記録に成功し、安定した実験データを取得している段階である。無麻酔下での実験をしなくても良くなったことから倫理上の問題点もクリアできている。国際学会に発表するに足る実験データーが揃いつつある段階である。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度に取得した静脈麻酔(プロポフォールとペントバルビタール)に関する実験データをまとめ、国際学会で発表する予定である。世界各国から集まる研究者の意見も参考にして学術論文作製に当たりたい。当初の予定では更なる実験として第二次体性感覚野からのインビボパッチクランプ、あるいは神経障害性疼痛モデルを使用した実験を予定していたが、時間的に困難であると考えている。初年度に実験で使用した静脈麻酔薬以外に臨床で頻繁に使用しているオピオイド鎮痛薬、ケタミンなどの鎮痛作用を有しているとされる静脈麻酔薬の大脳皮質における作用を検討し、今年度中に学会発表、論文作製に必要な研究データを取得したいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度には国際学会等の大きな学会での発表は行わず、実験データの取得に専念した。学会の旅費は初年度全く必要なかったため、次年度に繰り越し、2回の国際学会で異なる内容の研究発表を行いたいと考えている。また、静脈麻酔薬に関する実験を行っていく中で、必要となる特殊な実験試薬も明らかとなってきており、それらの購入費用に充てたいと考えている。
|