2011 Fiscal Year Research-status Report
硫化水素による神経細胞保護の可能性-初代神経細胞での検討-
Project/Area Number |
23791718
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
神里 興太 琉球大学, 医学部附属病院, 助教 (10554454)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 神経細胞保護 / 硫化水素 |
Research Abstract |
雌性C57/BL6系マウス胎生18日の胎仔から海馬を同定し、海馬のみを摘出、海馬初代神経細胞培養を行い研究を行った。海馬初代神経細胞に対する低酸素暴露による細胞死について検討を行ったところ、酸素濃度1%という低酸素環境においてはその暴露時間により、細胞死が誘発されることが判明した。それぞれの細胞に対して硫化水素のドナーである硫化ナトリウム(Sodium Sulfide;Na2S)を添加する実験を行った。添加濃度は0, 10, 100, 1000 μmol/Lとした。まず、酸素濃度が21%の環境下で添加する硫化ナトリウムの神経細胞に対する細胞毒性を評価した。硫化ナトリウムは低濃度の場合は神経細胞死はほとんど生じないが、高濃度の場合(具体的には100μmol/L)には薬剤の添加により神経細胞死を来すことが判明した。そのため硫化ナトリウムの添加濃度は10μmol/Lが適切であると考えられた。そのため、硫化ナトリウム添加濃度を10μmol/Lとして硫化水素による低酸素環境下における細胞保護効果についての検討を行った。その結果、硫化ナトリウムを10μmol/L添加すると低酸素環境下による神経細胞死を減少させることが示唆された。一方で、硫化ナトリウムが100μmol/L以上の高濃度では、低酸素と高濃度硫化ナトリウムそれぞれの生存細胞数がより少なくなり、神経細胞毒性という点において相加的に有害作用が存在する可能性も示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の実験結果からは硫化ナトリウムの添加濃度は10μmol/Lが適切であると考えられた。そのため、硫化ナトリウム添加濃度を10μmol/Lとして硫化水素による低酸素環境下における細胞保護効果についての検討を行った。その結果、硫化ナトリウムを10μmol/L添加すると低酸素環境下による神経細胞死を減少させることが示唆され、計画通りの結果を得た。一方で、硫化ナトリウムが100μmol/L以上の高濃度では、低酸素と高濃度硫化ナトリウムそれぞれの生存細胞数がより少なくなり、神経細胞毒性という点において相加的に有害作用が存在する可能性も示唆された。治療濃度と有害濃度について近接しているため、濃度についてより詳細な検討が必要であると考えられた。そのため、現在、硫化ナトリウム濃度10μmol/Lから100μmol/Lの間の濃度の検討を行っている。結果自体は計画通り神経細胞保護効果が示唆されたが、より有効な濃度が存在する可能性があるため、次の段階であるTdT-mediated dUTP-biotin nick end labeling染色を行い、アポトーシスの検出と硫化水素によるアポトーシス抑制に対する効果を確認する検討がまだ開始できていない。次年度直ちに開始する計画である。直ちに開始できる環境にあるため、達成度はやや遅れているとした。
|
Strategy for Future Research Activity |
最適な硫化ナトリウム濃度の検索を行うのと同時にTUNEL染色を行い、アポトーシスの検出と硫化水素によるアポトーシス抑制に対する効果を確認する計画である。さらに硫化水素により誘発される遺伝子の同定をおこなう計画である。具体的には低酸素暴露後の初代海馬神経細胞より、mRNAを抽出しDNAマイクロアレイにより網羅的に遺伝子発現を定量化し、硫化水素によって変化する遺伝子を同定する計画である。また、DNAマイクロアレイにより確認できた遺伝子について、解析結果からRT-PCRを行い遺伝子の発現を確認する。また、westren blottigによってタンパク質の発現も確認する計画である。westren blottigによって確認できた場合、ノックアウトマウスを用いた検討を行い、低酸素における硫化水素の働きに関して明らかにする計画である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マウス購入費、試薬購入費として使用する計画である。また、当施設ではDNAマイクロアレイは行っていないため、委託検査を行い、結果を得る計画である。それ以外の実験に関してはすべて現有の機材にて行うことが可能であり、新たに機器を購入する計画はない。また、実験結果の公開のため、学会発表を国内学会と国際学会をそれぞれ1回計画している。さらに、論文作成時の英文校正も行う計画である。
|