2011 Fiscal Year Research-status Report
肝微小血管の電気生理学的検討:アナフィラキシーショックにおける血圧調節機構の解明
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23791721
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
高野 博充 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70410313)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 組成学 |
Research Abstract |
今年度はモルモット肝微小血管の標本化と血管径の変化および膜電位測定システムの確立をめざした。モルモットをセボフルランの吸入麻酔にて麻酔し、瀉血後ただちに開腹し、肝臓をクレブス液に摘出した。当初、門脈から血管をたどりそこから分岐する微小血管を取り出して標本化する計画であったが、血管が急激に細くなって肝実質に埋もれてしまって光学顕微鏡下では標本化できない個体が多くあり、成功率がきわめて悪かった。そこで、当研究室で行っている腸間膜動脈から内皮細胞層のみの標本を作製する方法を応用し、酵素により肝実質と血管を分離する方法を検討した。これにより光学顕微鏡下でピンセットで肝実質から血管をより分けることができたこの標本を36℃のクレブス液で灌流し、実験に供することにした。血管径の測定にはリアルタイム画像取得と直径測定が可能なDiamtrakシステムを用いることにした。それにより、この方法で取り出した門脈からすぐに分岐した血管は直径が30 - 50μmであることがわかった。しかし、ノルアドレナリン3μmには反応しなかった。これは上記方法による血管の取り出し時に細胞を傷つけているか、平滑筋層が存在しないか、アルファ受容体を持っていないかの可能性も考えられた。次にガラス微小電極を用いた膜電位測定法を試みた。しかし、タングステンピンを使って標本に適度な張力を与えてガラス微小電極で細胞膜を貫く従来の方法によるガラス微小電極法による膜電位記録は成功できていない。これには上記方法により取り出した血管は細胞間接着が緩いために、適度な張力を標本に与えることが困難であるためと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予備実験では肝臓の門脈からたどることでそこから一回分岐した血管を取り出すことができたのだが、例数を重ねるごとに個体差が存在することが明らかとなり、この方法では実験に供せられる標本の作製の成功率がきわめて低いことが分かった。そこで方法を変更し、コラゲナーゼによって細胞間の結合を弱くして肝実質から血管を取り外す方法を検討した。それにより血管の姿を光学倒立顕微鏡にて観察することには成功した。しかし、薬理学的方法によって血管が収縮を起こす現象は観察できていない。これはコラゲナーゼ処理により、収縮に必要な平滑筋細胞層が傷ついて収縮能を失っているか、使用したアゴニストに対する収縮能を持っていないか、この部位の血管にはすでに平滑筋層が存在しないという可能性が考えられた。一方、膜電位測定の試みにおいては、従来の、標本に適度な張力を与えながら細胞膜をガラス微小電極で貫くガラス微小電極法による安定した電極刺入に成功していない。これにはコラゲナーゼにより取り出した血管は細胞間接着が緩いために、適度な張力を標本に与えることが困難である可能性が考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度にコラゲナーゼ処理によって標本作成が可能であることが分かったが、作成した標本の収縮能や膜電位測定上の問題点も明らかとなった。24年度はまず以上の問題の解決を試み、そのうえで生理機能の解明を行う。収縮能の問題についてはまずコラゲナーゼ処理の工夫を行う。同時に本血管の構造を組織学的方法により検討を試みる。それには平滑筋アクチンの抗体による染色方法による平滑筋アクチンフィラメントの有無の検討や電子顕微鏡による形態学的検討を行う予定である。これらにより本血管部位に血管の収縮能力を与える平滑筋層が存在するのか否かを明らかにする。また、膜電位測定法の問題についてはガラス微小電極法の代わりにパッチクランプ法を検討する。パッチクランプを適用するにあたっては、単離細胞を作製し、内皮細胞、および平滑筋細胞の電位固定法によるチャネル電流の検討も計画している。生理学的機能の検討としては以下の各チャネルの役割について、それぞれの抑制剤を用いた検討を計画している。ATP感受性カリウムチャネル、カルシウム感受性カリウムチャネル(iberiotoxin感受性、charibdotoxin感受性、apamin感受性の3種類)、電位依存性カリウムチャネル、内向き整流性カリウムチャネル。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物としてオスのモルモット(200 - 350g) 、試薬としてコラゲナーゼ、トリプシンインヒビターを100回分購入予定。glibenclamide(ATP感受性カリウムチャネル抑制剤)、iberiotoxin、charibdotoxin、apamin(カルシウム感受性カリウムチャネル抑制剤)、4-aminopyridin(電位依存性カリウムチャネル抑制剤)、塩化バリウム(内向き整流性カリウムチャネル抑制剤)をそれぞれ実験10回分購入予定である。さらに実験装置の消耗部材用として各種ガラス器具およびプラスチック器具を購入予定である。そのほか、研究成果発表のための学会出張用と論文出版用の支出を計画している。
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Research Products
(1 results)