2012 Fiscal Year Research-status Report
アルツハイマー型認知症患者に対する麻酔薬の安全性の確立
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23791722
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
太田 晴子 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 臨床研究医 (90534751)
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Keywords | アルツハイマー / 麻酔薬 / 高次脳機能 |
Research Abstract |
アルツハイマー型認知症患者に対する全身麻酔薬の安全性は確立されていない。アルツハイマー型認知症の発症機序としては、アミロイドβ(Aβ)の蓄積とタウ蛋白質の異常リン酸化が知られている。これまでの研究結果では、プロポフォールとチオペンタールは、Aβ凝集を促進するGM1ガングリオシドの発現を低下させることにより、Aβ凝集を抑制することを明らかにした。 一方で、ケタミンやドロペリドールは、GM1ガングリオシドの発現には大きな影響を与えないことが今年度明らかとなった。Ab蓄積の原因のひとつとして、アストロサイトにおけるAβを分解するneprilysin(NEP)の活性低下が知られているが、ケタミンは、NEP発現を経時的かつ濃度依存的に有意に低下させた。これはp38MAPKを介していた。また、マウスにケタミンを腹腔内投与することにより脳皮質ではNEPを有意に低下させたが、海馬では不変だった。さらに、アストロサイトにおけるAb分解を有意に抑制した。これらの結果から、ケタミンはAβを蓄積する可能性は否定できないと思われる。一方、もうひとつのAβ分解酵素であるinsulin degrading enzyme(IDE)の活性は、ケタミンでは影響を受けなかった。 高齢ラットにプロポフォールとチオペンタールを投与すると、脳におけるGM1ガングリオシドの発現を低下させた。また、脳皮質ではNEPを有意に低下させたが、海馬では不変だった。ただし、これらの結果は実験数がやや少ないと判断しており、さらなる実験数の増加を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
静脈麻酔薬によるAβ蓄積に与える影響をほぼ明らかにすることができ、ケタミンについてはAβ蓄積に与える新たな機序を解明できた。加えて高齢ラットにおける静脈麻酔薬の影響を解明しつつある。以上のように研究計画に従いほぼすべての研究が遂行できており、予測された結果を得られているため、おおむね順調な進展と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
高齢ラットにおけるプロポフォール、チオペンタール、ケタミンの影響を確定するため、実験があと数回必要であり、研究費の繰り越しを必要とした。 高齢ラットにおけるプロポフォール、チオペンタール、ケタミンの影響を確定するとともに、アルツハイマー型認知症モデル動物における麻酔薬の影響を解明するなど、研究計画に従い遂行していく予定である。特に技術的な問題は生じておらず、円滑な実施ができると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
高齢ラットにおけるプロポフォール、チオペンタール、ケタミンの影響についての実験を、繰り越しした研究費で行う。 アルツハイマー型認知症モデル動物における麻酔薬の影響を解明するなど、臨床の問題の解決に近づける研究を行っていく予定であり、研究計画にのっとり研究費を使用していく。
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