2011 Fiscal Year Research-status Report
アンギオテンシンII受容体拮抗薬による腹腔内癒着予防に関する研究
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23791723
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
吉村 聖子 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (40468286)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 内蔵癒着 / カンデサルタン |
Research Abstract |
本研究では、カンデサルタンによる癒着抑制効果を糖尿病と非糖尿病で比較し、臨床応用に向けて至適投与量、投与法を検討することを目的とした。今年度は主に、非糖尿病(LETO)ラットで実験を行った。それぞれのラットをハロタンで麻酔し、腹部正中切開を加え開腹し、腹腔内より回腸を腹腔外に取り出し、圧縮空気にて乾燥させ、腹腔内に戻した。ラット血液2mlを腹腔内に注入し、カンデサルタン投与群には0.3mgのカンデサルタン溶液を腹腔内に投与し、カンデサルタン非投与群には、同量の生理食塩水を腹腔内投与した。その後閉腹し、以後ラット飲水にカンデサルタン投与群にはカンデサルタン溶液を14日間与えた。手術後14日目にハロタン麻酔下で、再びラットを開腹し、癒着の状況を観察しスコアリングを行った。カンデサルタン投与群は非投与群に比べ、明らかに腸管同士の癒着および多臓器への癒着の程度が強かった。次いで、カンデサルタン投与群、非投与群から、腹腔内脂肪組織を調製し、PAI-1 mRNA発現量をreal time RT-PCR法により定量した。先に述べた方法で癒着を作成し、12時間後に再びハロタン麻酔下で、再びラットを開腹し、腹腔内脂肪組織を調製した。脂肪組織よりPAI-1 mRNAを調製し、real time RT-PCRにより定量を行った。結果、カンデサルタン非投与群では、RT-PCR法により測定したPAI-1 mRNAは非開腹対照ラットに比べ明らかな高値を示した。カンデサルタン投与群ではPAI-1 mRNA値の上昇は有意に抑制された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はLETOラットに加え、自然糖尿病発症(OLETF)ラットを用いて、実験を行う予定であった。しかし、ラットを入手できた時期が遅く、OLETFラットは自然経過で糖尿病を発症するまで約4ヶ月間を待たなくてはならないことから、実験の実施が遅れた。従って、薬品や試薬にかかる実験費用も当初の予定を消化することができず、次年度に繰り越しとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は自然糖尿病発症(OLETF)ラットの発症をOGTTで確認し、カンデサルタン投与群、非投与群について腹腔内癒着のスコアリングとPAI-1 mRNA発現量を行う。しかし、自然発症型ラットのため、糖尿病の病期が一定とならず、結果が不安定になった場合は、ストレプトゾトシンによる薬剤誘導性糖尿病ラットを用いることとする。さらにLETO、OLETF両群について、カンデサルタンの用量依存性に関する実験を会わせて行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は1、今後は自然糖尿病発症(OLETF)ラットの発症をOGTTで確認し、カンデサルタン投与群、非投与群について腹腔内癒着のスコアリングとPAI-1 mRNA発現量を行う。2、カンデサルタン投与量を0.15mg、0.3mg、0.6mgとし、腹腔内投与1回のみのもの、1日毎、2日毎に腹腔内投与したものという群にわけて、それぞれの癒着スコア、およびPAI-1 mRNA発現量を定量する。また飼育中の血圧の変化を尾動脈より測定する。以上の実験の遂行のため、消耗品、動物費用、麻酔薬を含む薬剤費、PCRのためのプライマー等の費用が必要となる。また、学会での研究結果発表のため、若干の旅費も計上している。
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