2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23791728
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
坂本 英俊 帝京大学, 医学部, 講師 (90349267)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 敗血症 / HMGB1 / 睡眠・覚醒 |
Research Abstract |
High-mobility group box 1(HMGB1)は脳梗塞や敗血症時の炎症のメディエーターとして知られている。HMGB1の中枢神経に対する作用に、サイトカイン産生、摂食障害、味覚嫌悪が報告されているが、睡眠・覚醒への影響は知られていない。本研究はHMGB1をラット脳室内投与し睡眠・覚醒ステージに及ぼす影響を検討した。 方法としては、雄Wistarラット(7週齢、250-350 g)を用いた。実験5-7日前にペントバルビタール(50 mg/kg:腹腔内)麻酔下で薬剤注入用カニューレを脳室内(Bregma‐0.8 mm, 外側1.5 mm, 深さ-4.0 mm)に固定した。また、脳波電極を頭蓋に、筋電図電極を項部筋肉内に固定した。実験当日、HMGB1群ではHMGB1を5μl(1000ng) ,対照群では生理食塩水を同量投与し、恒温・恒湿チャンバー内(25℃、60%)にて3時間の脳波・筋電図を記録した。睡眠ステージはSleepSign Ver.3.0 にて解析し、覚醒期、REM睡眠期、non-REM睡眠期の睡眠ステージを判定した。 結果として、HMGB1投与群(n=5)では覚醒期は対照群(n=4)の57.2±1.6%(平均±標準偏差)に比べ30.1±3.0%と有意に短かった(1 way ANOVA, Tukey test; p<0.001)。一方、non-REM睡眠期は対照群(36.1±3.7%)に比べ59.1±5.4%と有意に長かった (p<0.001)。REM睡眠期は対照群(6.7±3.1%)に比べやや長くなった(10.8±3.0%)が有意ではなかった(p=0.51)。以上より、脳室内投与HMGB1はnon-REM睡眠誘発作用を有することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究室および中央動物室の移転に伴い、2ヶ月以上実験ができない期間があったため、当初の計画よりもやや遅れてしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
敗血症性脳症を腹腔内LPS投与で再現し、睡眠・覚醒および記憶にどのように関連するのか、また、脳内神経核からの伝達物質の放出に及ぼす影響を検討する。次に、脳室内投与サイトカインが上記パラメータにどのように影響するかを検討する。 体重280~350g前後のWistar雄ラットを使用し、実験開始5~7日前に、イソフルラン麻酔(2%)下でラットを実験用脳定位固定器具にラット頭蓋を固定する。マイクロダイアリシス用ダミーカニューラを大脳皮質または海馬に留置し、脳波および項頸筋電図測定用電極を留置する。側脳室薬物投与実験の場合にはチューブを留置する。実験当日、約2時間の安定化を待って開始する。敗血症性脳症の作成は、腹腔内LPS投与(1~10 mg/kg)モデルを用いる。 脳室内投与実験では、HMGB1には他のサイトカインの働きを助長する作用があるため、脳室内には以下の投与群にしたがって投与する。(1)HMGB1、(2)TNFα、(3)IL1β単独(各1000ng)または(4)HMGB1(10 ng:影響しない量)+TNFα(1000ng)また、HMGB1(10 ng)+IL1β(1000ng)必要に応じて他のサイトカインの使用も実験上考慮する。腹腔内投与LPS後および脳室内投与後サイトカインの血中および髄腔内サイトカインの測定はELISAを用いて測定する。脳波・筋電図は恒温・恒湿チャンバー(既存)内にて連続的に記録する。睡眠・覚醒サイクルの解析はSleepSign® ver.3(既存)にて解析し、サイトカイン投与により覚醒期、REM期、ノンREM期が経時的にどのように変化するかを測定する。また、サイトカイン投与後、記憶がどのように影響されるかを空間認知機能(Morris water maze test)等の記憶装置を用いて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度は、サンプルを採取するラットのモデル作りに手間取り、データを採取できた個体数が少なくなってしまった。また、主任教授の交代や研究室の移転等があり、最後の2ヶ月は実験できない環境だったため、ヒスタミンの測定実験の段階まで至らず、Push-pull サンプリングユニットの購入を見送った。 H24年度は、研究室の引っ越しも終わり、新しい研究室・中央動物室も稼働しており、繰り越された研究費および本年の研究費は、倫理委員会に承認され次第、新しいラット購入費、HMGB1・TNFα・IL1β等の実験試薬の購入費、透析プローブ等に当てる予定である。また、大脳皮質からのオレキシンを測定するために、本年Push-pull サンプリングユニットを購入する予定である。
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