2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23791728
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
坂本 英俊 帝京大学, 医学部, 講師 (90349267)
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Keywords | 脳・神経 / 敗血症 / HMGB1 / 睡眠・覚醒 / MCH / 記憶 / 集中治療 |
Research Abstract |
High-mobility group box 1(HMGB1)は脳梗塞や敗血症時の炎症のメディエーターとして知られている。HMGB1の中枢神経に対する作用に、サイトカイン産生、摂食障害、味覚嫌悪が報告されているが、記憶への影響は知られていない。また、Melanin concentrating hormone(MCH)は記憶を増強する作用を有しているという報告がある。本研究は24時間前にHMGB1をラット脳室内投与し、MCH群と生食群が記憶に及ぼす影響を検討した。 方法としては、雄Wistarラット(8-10週齢、250-350 g)を用いた。実験5-7日前にペントバルビタール(50 mg/kg:腹腔内)麻酔下で薬剤注入用カニューレを脳室内(Bregma‐0.8 mm, 外側1.5 mm, 深さ-3.8 mm)に固定した。また、脳波電極を頭蓋に、筋電図電極を項部筋肉内に固定した。実験の24時間前に、HMGB15μl(1000ng)を投与した。実験当日は、2時間安定化させた後、MCH5μl(1000ng)または同量の生食を投与した後、5時間の海馬のAcetylcholine(ACh)をmicrodialysis法で抽出し、high-performance liquid chromatography(HPLC)で測定した。さらに、脳波・筋電図を記録した。 結果に関して、MCH投与群(n=6)と生食群(n=6)を投与後5時間のAch放出量をArea under the curveを用いて統計処理を行った。MCH投与群では657.1±443.5(平均±標準偏差)、生食群では-107±214.9(平均±標準偏差)となり、MCH投与群において、Ach放出量は有意に高かった(unpaired t-test p<0.01)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究室の引っ越しや動物室の新大学棟への移転は完了したが、新たなルールやシステムの変更に伴い、軌道に乗るまでに、2-3ヶ月を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
敗血症性脳症を脳室内HMGB1投与で再現し、睡眠・覚醒および記憶にどのように関連するのか、また、脳内神経核からの伝達物質の放出に及ぼす影響を検討する。次に、脳室内投与サイトカインが上記パラメータにどのように影響するかを検討する。 体重280~350g前後のWistar雄ラットを使用し、実験開始5~7日前に、イソフルラン麻酔(2%)下でラットを実験用脳定位固定器具にラット頭蓋を固定する。マイクロダイアリシス用ダミーカニューラを大脳皮質または海馬に留置し、脳波および項頸筋電図測定用電極を留置する。脳室薬物投与実験の場合にはチューブを留置する。実験当日、約2時間の安定化を待って開始する。 脳室内投与実験では、HMGB1を24時間前に脳室内に投与した後に、melanin concentrating hormone(MCH)を投与し、記憶の増強作用が起こるかどうか検討する。 ①HMGB1+MCH、②HMGB1+NS、③NS+MCH または④NS+NSの4群の比較を行う予定である。脳波・筋電図は恒温・恒湿チャンバー(既存)内にて連続的に記録する。睡眠・覚醒サイクルの解析はSleepSign® ver.3(既存)にて解析し、覚醒期、REM期、ノンREM期が経時的にどのように変化するかを測定する。また、MCH投与後、記憶がどのように影響されるかを空間認知機能(Morris water maze test)等の記憶装置を用いて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度は、研究室や動物室も軌道に乗り、データが少しずつ出始めた年であった。 H25年度は、HMGB1脳室内投与による敗血症性脳症モデルを利用して、MCHによる記憶の増強作用があるか検証していく予定である。研究費は、新しいラット購入費、HMGB1やHPLCに必要な実験試薬の購入費、透析プローブ等に当てる予定である。 また、時間的に余裕があれば、オレキシン脳室内投与も検討する予定である。
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