2011 Fiscal Year Research-status Report
尿路性器腫瘍に対するヒトパピローマウイルス感染の関連性についての検討
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23791748
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
重原 一慶 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (20595459)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ヒトパピローマウイルス / 膀胱癌 / 前立腺癌 / 尿路性器腫瘍 / 発癌 |
Research Abstract |
本年度は、膀胱腫瘍におけるヒトパピローマウイルス(HPV)感染の関連性について検討を行い、尿検体を用いたHPV検出法の開発に取り組んだ。 まず、女性は尿道が短いため、男性に比べ膀胱内HPV感染が生じやすいのではないかと考え、女性膀胱腫瘍に対象を限定して調査を行ったところ、84例中5例(6.0%)からHPVが検出された。その5例について、in situ hybridization法を用いて、腫瘍組織内のHPV-DNAの分布を観察したところ、確実に組織内にHPV感染が生じていることがわかった。また、感染したHPVが腫瘍発生に関与しているか否かについて、HPVの発癌蛋白の1つであるHPV-E7のバイオマーカーであるp16-INK4aおよびmcm-7の発現について免疫組織化学を用いて検討を追加した。HPV陽性例では、これらのマーカーの発現を強く認め、HPV陰性検体ではこれらのマーカーはほとんど発現していなかった。これらの結果は、感染したHPVが腫瘍の発生に関与していることを示唆し得るものと考えられた。さらに、HPV陽性5症例のうち、2例(40%)で子宮頸癌の既往があり、子宮頸癌組織と膀胱癌組織から検出されたHPV型が一致(ともにHPV16)していることがわかった。 また、尿路HPV感染を調査する上で最も簡便かつ非浸襲的な方法は、尿検体を使用することである。子宮頸癌検診で汎用されている液状細胞診を、尿検体に応用することにより、HPV-PCRと同時に尿細胞診が可能であり、HPV陽性検体において、HPV感染関連細胞異常が認められる検体が存在することがわかった。さらに一部の症例ではin situ hybridization法で尿路上皮細胞にHPV感染が生じていることを突き止めた。 これらの研究は、HPVは尿路にも感染し、膀胱腫瘍の発生にも関与し得ることを示唆する意義あるものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず女性の膀胱腫瘍に対象を限定して検討を行ったが、84例と比較的多くの症例での検討ができ、また、PCR法、in situ hybridizationや免疫組織化学などの分子細胞学的手法を組み合わせた検討が施行できた。女性膀胱腫瘍におけるHPV検出率は6.0%を多くは無かったが、それらの症例において感染したHPVが腫瘍発生に関与していることを示唆するデータが得られた。また、子宮頸癌の既往がある症例については、膀胱腫瘍と子宮頸癌から検出されたHPV型が一致していたことは、この仮説をさらに支持し得るものと考えている。 さらに、尿検体におけるHPV検出法の開発は、今後の尿路HPV感染に関する研究の発展に寄与できうるもとの考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
膀胱腫瘍の症例を男性も含め、さらに症例数を増やして検討を行う。また、他の尿路性器腫瘍として、前立腺癌および膀胱癌におけるHPV感染の関連性についても同様にPCR法、in situ hybridization、免疫組織化学等の分子細胞学的検討を行うことを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、女性の膀胱腫瘍とHPV感染との関連性についての分子細胞学的手法を用いた実験を行い、おおむね順調に進んだため、費用を節約できたものと考えている。翌年度は、膀胱癌だけでなく、前立腺癌および陰茎癌とHPV感染との関連性について、PCR法、in situ hybridization法、免疫組織化学を用いた実験に残額を当てたいと考えている。
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