2011 Fiscal Year Research-status Report
伸展刺激に対する膀胱上皮細胞におけるATP放出メカニズムの解明
Project/Area Number |
23791749
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
中込 宙史 山梨大学, 医学部附属病院, 診療助教 (80418714)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 国際情報交流 |
Research Abstract |
マウス膀胱上皮の伸展刺激に対するATPの放出経路として、ATPを細胞内の分泌小胞内に能動輸送するトランスポーター Vesicular Nucleotide Transporter(VNUT)/開口放出の機構が関与するかどうか検討した。マウスを使用し膀胱上皮初代培養細胞を作成した。マウス膀胱上皮において遺伝子レベル・蛋白レベルでそれぞれVNUTが発現していたことを認めた。またVNUTはATP含有小胞ならびに酸性小胞に局在していた。機械刺激に対しラベルされたATP分泌小胞の開口放出様動態の視覚化にも成功した。RNA干渉法にてVNUTノックダウンされた膀胱上皮細胞で伸展刺激時のATPの放出量が有意に低下した。また開口放出阻害する薬剤でもATPの放出量が有意に低下した。ATPは求心路を促進性に働かせる重要な神経伝達物質である。その放出経路は各種イオンチャネルや開口放出など様々な機構が提唱されている。今回の研究により膀胱上皮はVNUTを発現し、伸展刺激時にATPを開口放出により分泌することを実証した。開口放出は自由拡散よりも調節性・積極性に富んだ仕組みであり、それを持ち合わせている膀胱上皮は高等な感覚受容器であると言える。マウスの膀胱上皮において、特に伸展刺激におけるATP放出機構の中でVNUTが重要な役割を果たしていることを証明した。膀胱上皮の伸展におけるATP放出に至る分子機構を、VNUTを介した細胞内小胞へのATP蓄積ならびに開口放出の視点から解明したことはとても深い意義がある。それは今回の神経伝達物質の放出メカニズムに焦点を当てた研究により、これまでの情報を受け取る側の受容体への研究ではが解明できなかった病態をATPなど神経伝達物質の放出機構を通じて解明することができ、新たな生理的機構の確立、画期的な治療法への道を開く可能性が秘めているからである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の実験計画であったin vitro の実験が計画通り終了したからである。すなわち雄マウス(C57BL/6Cr)を使用し膀胱上皮初代培養細胞を作成した。RT-PCR法によるVNUT遺伝子の発現や免疫蛍光染色法による蛋白局在の確認、蛍光標識したVNUT・ATP・分泌小胞の局在の確認、機械刺激時の開口放出現象の視覚化を行った。機械伸展刺激による膀胱上皮培養細胞からのATP放出量の測定を行った。同様の手法でVNUTノックダウン群や各種開口放出放阻害剤を使用してATP放出量への抑制効果を比較検討した。またそれらの研究成果を国内外の学会で発表することが出来・社会・国民に発信することが出来たと考えられるからである。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の予定は個体(VNUT KOマウスの入手が可能となれば)での代謝ケージを用いての行動実験、cystometry実験を行い、排尿間隔時間・排尿閾値圧・排尿時最大収縮圧・蓄尿容量などのパラメーターにつき、WTとVNUT KOマウスとで比較する。まず代謝ケージを用いてのWTマウスとVNUT4KOマウスとの比較・検討実験である。代謝ケージ(マウスの微量な排尿量も最小限の誤差のみで検出出来うる特殊な代謝ケージ)を用いて一回排尿量、排尿間隔、飲水量など評価し、各種パラメーターをWTとVNUT KOマウスとで比較する。incontinence様の蓄尿異常があるのかどうか。さら両者の行動パターン、性格なども観察してみたい。次はUrodymamic study(Cystometry)での除脳モデルWTマウスとVNUT4KOマウスとの比較・検討実験である。除脳モデルマウスの作成:麻酔下に、マウス中脳レベル以上を摘出。腹部より膀胱内および尿道内にカテーテル挿入し、排尿生理学的実験を開始する。膀胱内圧測定:下部尿路機能として、膀胱内圧測定(cystometry)法、尿道内圧測定法(必要に応じ外尿括約筋筋電図も加える)により評価し、各種パラメーターをWTとVNUT KOマウスとで比較する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
個体実験に使用するための代謝ケージ用の排尿用特殊メッシュ・(三菱化学メディエンス社製)の購入。またノックアウトマウスの購入や野生型マウスの購入。またそれぞれの実験を補助する各種製薬・化号物・一般試薬の購入が主要な部分を占めると考える。繰越金があるが上記in vivo実験が多くなるため次年度において繰越金を使用する必要がある。またそれらの研究成果を広く社会・国民に発信するために国内外の学会で発表することを複数回予定している。研究成果発表目的の学会参加旅費/論文掲載費を例年の経常経費より算出した。
|
Research Products
(6 results)